5G
文:Dan Meyer

5G時代へ=中小の通信事業者は備えができているのか

5G時代へ=中小の通信事業者は備えができているのか

最新の5G機器や、vRAN/オープンRANのようなアーキテクチャのシステムが導入されていく中で、中小の通信事業者にもその流れが少しずつ波及していきそうだ。サムスングループが予測した。連邦政府からの補助金が徐々に市場に出はじめており、固定無線アクセス(FWA)のような新しいサービスの提供に商機があるという。

AT&TやベライゾンといったTier 1通信事業者がvRANやオープンRANの時流にすでに本格的に乗っている一方で、従来型のTier 2、Tier 3事業者には、全体としてまだそうした熱気は波及していない。

サムスン電子アメリカ(Samsung Electronics America)の技術担当ディレクター、Sanil Ramachandran(サニル・ラマチャンドラン)氏がSDxCentralのインタビューに答えて説明したところによると、こうしたTier 2、Tier 3通信事業者が新技術に追随するのは、往々にしてその技術が市場で認められ、成熟してからになるという。

「当社はベライゾンのvRAN事業、ディッシュ・ネットワーク(Dish Network)のオープンRAN事業に協力し、かなりの成功を収めています」と氏。「Tier 2、Tier 3の中にも意欲のある事業者はありますし、具体的なユースケースもありますが、全体としてはまだそこまで進んでいないという状況です」

大きな不安材料となっているのが、機器や教育が必要になることから来る財務面の懸念だ。

「こうした事業者は、ネットワークを運営する大規模なチームを抱えるTier 1の事業者とは違います」と氏。「実際にネットワークの管理と運用を日常的に行っているのは小規模なチームです。オープンvRANを実行、運用するのに必要な再教育の内容も、これまでとは少し違ったものになります。彼らもそれをわかっていて、移行はゆっくりとしたペースで進めたいと考えるだろうと思いますし、規模を考えればそれが当然でしょう」

サムスンネットワークス(Samsung Networks)のテクニカルセールス&パートナーGTM担当シニアディレクター、TJ Maan(TJ・マーン)氏によると、同社のエコシステムパートナーが支援を提供しようとしているという。「彼らは1歩踏み込んだ5Gモデル、詳しく言うと、ホスト型のコアネットワークを用意して、通信事業者向けの共用サービスとして提供するモデルを検討しています」

「(中小の通信事業者は)単純に、必要となる専門知識、特にサービスベースのアーキテクチャに関する知識を持っていません」と氏。「(仮想マシンや)コンテナなどについて知らないといけないですし、少し難しそうに見えることもあるでしょう。そうした状況を受けて、当社のパートナーはRAN側にホステッドサービスを提供するという考え方に対してオープンになっているのです」

5G事業者によるビジネスケースの構築

財務面の支援も始まっているという。政府による資金援助が徐々に市場に広がりはじめているのだ。最も大きいのがBEAD(Broadband Equity, Access, and Deployment)プログラムによるもので、全米50州、コロンビア特別区、5つの準州のブロードバンドアクセス拡大事業に425億ドルが割り当てられている。

「今後1年半から2年の間に、本格的にこの資金が各州のブロードバンド局に流れれば」、市場は「もっと面白くなる」かもしれない、と氏は期待している。

すでに一部の州では分配が始まっており、中小の通信事業者が新しい技術やサービスに投資しやすくなる可能性がある。有望な分野の1つが5G FWAで、大手通信事業者が金脈を発見した領域だ。

氏によると、大手各社が通常の5Gネットワークの余剰容量を活用する一方で、中小各社では、5G FWAに特化したネットワークを目指して進んでいるという。

「BEADの資金獲得に関心のある通信事業者は、家庭用ブロードバンドを提供するスタンドアロンの無線ネットワークを構築しようとしています。少なくとも、光ファイバーの敷設が不可能であるとか、高価になりすぎる場所に関してはそういう方針です」と氏。「こうしたFWAネットワークは、相互運用性があり、各種の通信事業者サービスを提供できるコアネットワークを備え、3GPPに準拠した標準ネットワークにすることを意図して構築されています。当社が導入に協力し、試験運用をされているお客様に関しては、ほぼすべての事業者様が、AT&TやTモバイルに対してローミングサービス用のネットワークアクセスを販売できるようにして、さらなる収益源とすることを目指されていました」

一般企業などの他業種にも影響は広がりそうだ。ユースケースとしては、精密農業、自律型農業機械、スマートファクトリー、プライベート5Gなどがあるという。

「こうした通信事業者では、早期に5Gを収益化する機会を求めて、一般企業に注目しています。労働力の自動化、IoTの活用、ミッションクリティカルな通信サービスの提供といった観点です」と氏。「通信事業者の方からはそういった話を聞いています。彼らは資金調達を待っているところですが、大手企業の関心を引いてプライベート5Gのようなサービスを試していただいたり、売り込んだりする方法としては面白いですね」

Are smaller operators ready for their 5G moment?

Dan Meyer
Dan Meyer Executive Editor

電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime

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電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
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