米Broadcom、VMware vSphereをアップデート=価値向上をめざして
米Broadcomが「VMware vSphere」を使用したHCI(ハイパーコンバージドインフラ)基盤を拡充した。ストレージ容量を増強するとともに、以前に使用していた製品名を復活させ、新しい選択肢として提供する。同社はVMware製品群に対して「VMware Cloud Foundation(VCF)」を非常に重視した大々的な変更を実施しており、それによって感情を害した顧客との橋渡しを今回追加となる製品が担う可能性もある。
アップデートではまず、「VMware vSphere Foundation」で使用する「vSAN」のストレージ容量をコアあたり2倍以上の250ギガバイトに増やしている。vSANはVMwareが提供するSDS(ソフトウェア定義ストレージ)でvSphere基盤に統合できる製品だ。
プレスブリーフィングでは、クラウドプラットフォーム/インフラ/ソリューションのマーケティング担当バイスプレジデント、Prashanth Shenoy(プラシャント・シェノイ)氏が説明に立ち、「これにより、真にエンタープライズクラスのHCI基盤をお客様に提供できるようになります」と語った。
また、Broadcom は、vSphere Standard 製品の新しいオプションとして「vSphere Enterprise Plus」の名称を復活させた。BroadcomはVMwareの買収を完了した後、vSphere製品群をStandardとFoundationのみに集約し、vSphere Enterprise Plus の名称を廃止していた。
vSphereは主力製品のVCFにも引き続き含まれる。Shenoy氏は以前にvSphereのターゲットについて、「広くミッドティアの小規模データセンターのうち、シンプルにコンピューティングインフラを仮想化し、優れた運用による管理がしたいと望んでいるところ」だと話している。
「当社はさまざまな規模や段階の顧客向けに幅広い製品を提供してきました」。新しくなった階層別アプローチについてShenoy氏が述べている。「完全なプライベートクラウド基盤をご希望であればVCFがあります。エンタープライズクラスのHCI基盤が良ければ、vSphere Foundationを選べます。コンピューティングの仮想化から始めたいのであれば、vSphere Enterprise PlusやvSphere Standardもご用意しています」
VCFについても、幅広いサポートの提供に重点を置いたオンプレミス導入向けの主力製品だとして何回もアピールした。Hock Tan(ホック・タン)CEOも同じ見解を語っている。Tan氏はvSphereの顧客に対し、VCFへのアップデートを促したいと率直に述べている。
BroadcomはVMwareの顧客の要望に耳を傾けているのか
Broadcomによると、vSphereに関する今回の変更は、顧客の要望を受けて実施したものだという。Shenoy氏は以前、VMwareのライセンスや各種プラットフォームに関する変更を速やかに進めるとしていた。今回は同じことを述べつつも、状況に合わせて対応していく意思を示したアップデートだと話している。
「当社は引き続きお客様とパートナー企業の声に耳を傾け、あらゆる規模のお客様に対し、クラウド変革のどの段階においてもVMware Cloud Foundationで価値と柔軟性、選択肢を提供できるようにしていきます」と今回の変更について語った。
Broadcomが顧客からの肯定的な評価を維持するためには、こうした配慮が不可欠になるかもしれない。VMwareのライセンスとプラットフォームの変更を受けて、多くの顧客は価格の高さにショックを受けている。
米調査会社ガートナーによるDHI(分散型ハイブリッドインフラ)プロバイダーの最新ランキングでは、Broadcomを「リーダー」企業の1社に挙げる一方で、VMwareの統合によって市場は混乱していると述べている。ガートナーによると、こうした懸念から、現在VMware製品を使用している企業が代わりにHCIを導入できるかを確認するため、DHI製品の検証を始めるケースが増えていくという。2024年の10%から、向こう数年で約半数に増加するとした。
そうした大変動が起これば、VMwareの顧客数万社がBroadcomから流出する可能性もある。
株式調査を提供しているウィリアム・ブレア&カンパニーが最近発表したレポートでは、VMwareの競合に当たるNutanixについて取り上げている。その中で、VMwareの顧客のうち40万社以上(インストールベース)が「いずれはVMwareから離れる」という市場調査会社予測があることが書かれている。
一方で、Nutanixと話をしたところでは、競合にチャンスがやってくるのはまだ何年も先のことになりそうだとも述べている。VMwareの顧客は複数年の再契約を結んでおり、Broadcomとの契約が終了するのはその後になる。ハードウェアの更新サイクルに合わせる必要もあり、Broadcomが顧客の維持にどのくらい積極的になるかもわからない。顧客が新しいツール一式に乗り換えて習得する気になるかにもよる。
「大口顧客に対しては、Broadcomも柔軟であろうとするでしょう。そうした顧客を失いたくないからです」。Nutanixは直近の決算発表を受けてプレス向けの質疑応答を行っている。席上、Rajiv Ramaswami(ラジブ・ラマスワミ)CEOが語った。「顧客はおおむね、価格設定にも、Broadcomが取ったやり方にも不満のようです。顧客ファーストではなく、Broadcomファーストといったところでしょうか。それによって大いに顧客の不安を招いていますし、そうした企業様が当社の方に来られていて、そのうちの多くの企業様と関わらせていただいています」
Broadcomはこうした騒動をよそに、長期の顧客に対して新しいサブスクリプションライセンスモデルに移行してもらう取り組みを進めている。第2四半期決算説明会では、Hock Tan(ホック・タン)CEOが投資家に進捗具合を伝えた。「既存の最大顧客10,000社のうち、3,000社近く」と契約を交わし、「こうしたお客様には、おおむね複数年契約を結んでいただいています」と述べている。契約額を年率換算すると、今年第2四半期の総額は19億ドルとなり、第1四半期の12億ドルから増加する。
「進捗は順調です」と氏。「まだ決して完了したわけではありませんが、期待通りに移行が進んでいます」
電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime
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