人工知能(AI)
文:Dan Meyer

米Broadcom、新製品「VeloRAIN」を発表=「VeloCloud SD-WAN」にAIを追加

米Broadcom、新製品「VeloRAIN」を発表=「VeloCloud SD-WAN」にAIを追加

Broadcomが進めている、VMwareのエッジ製品をAIで強化する取り組みが大きく進展した。かつて「VeloCloud SD-WAN」と呼ばれていたSD-WAN基盤にAIネットワーキングを追加する。

新たに登場した「VeloRAIN」は、「堅牢なAIネットワーキング(Robust AI Networking)」を表す名称のアーキテクチャだ。AIと機械学習を活用し、分散AIワークロードのパフォーマンスとセキュリティを向上させている。通常、そうしたワークロードはVMwareのVeloCloud SD-WAN基盤で扱うエッジワークロードに当たる。

今月、「VMware Exploreバルセロナ」の開催に先立ってプレス向けの事前ブリーフィングが開かれ、BroadcomのSDE部門担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー、Sanjay Uppal(サンジェイ・ウパール)氏が説明に立った。VeloRAINは暗号化されたアプリケーショントラフィックを識別し、エッジAIアプリケーションを優先することで、アプリケーションに課された品質要件、サービスレベル要件に広く対応することができる。また、「Dynamic Application-Based Slicing(DABS)」というダイナミックポリシーフレームワークを使用しており、アプリケーショントラフィックの優先順位付けが可能だとした。

Uppal氏によると、VMware は50万台以上のエッジユニットを配備しており、「企業ネットワークやサービス事業者のネットワークでセンサーの役割を果たしている」という。これらのエッジユニットは、アプリケーション層のトラフィックや広くネットワーク全体のパフォーマンスを測定し、AIによるネットワークトラフィックを読み取って、情報を取得すことが可能だ。

そうして得られた内容からわかるのは、従来のエッジネットワークトラフィックと、生成AIやGoogle CloudのGeminiのようなシステムから送られてくるAI駆動のトラフィックとの間には、劇的な違いがあるということだ。

「企業環境で、自社のあらゆるエンドポイントでRAG(検索拡張生成)ができるようにしているとします。その場合、すでに利用しているモデルに対して独自の非公開データを使った事前学習やファインチューニングを行うのですが、それには膨大な量の上りトラフィックが必要になります」と氏。「上り方向には動画や音声のトラフィックもある中で、今度はそこに生成AIワークロードのトラフィックが加わるのです。私たちが慣れ親しんできたワークロードと比べると、たいへん非対称性の高いトラフィックです」

VeloRAINには、セルラー通信や衛星通信のような無線リンクの接続を監視、最適化するチャネル推定インテリジェンスも搭載されている。DABSシステムと連携し、VeloRAIN基盤のサービス品質管理機能を実現しているという。

「ここでは、機械学習を使ってチャネル推定をする仕組みを取り入れました」と氏。「つまり、4Gや5G、衛星通信といった技術はそれぞれ大きく異なるので、帯域幅やジッター、パケットロス、遅延がどのように異なっているのかを把握することがとても重要なのです。「モデルを実行する時にチャネルがどのような動作をするかを予測でき、アプリケーションの識別もできているので、まず必要になる2つの基本的な要素が揃ったことになります」

Uppal氏の説明によると、エンタープライズ顧客向けの5G FWA(固定無線アクセス)を提供するうえで、こうしたチャネル推定の重要性が高まってきているという。通信事業者が活用すれば、サービス品質機能を提供してネットワーク投資の収益性を高めることも可能だ。

「通信業界のサービス事業者は、次のブレークスルーを探し求めています――5Gではありませんでしたが、自社のネットワークを最大限に活用し、収益化や課金ができるような何かです」。VeloRAINの説明の中で、Uppal氏が語った。「VeloRAINの大枠の意図は、AIと機械学習を使い、基盤となっているネットワークのパフォーマンスを向上させて、そうしたネットワークを利用しているユーザーの体験品質を向上させることです」

Broadcomは8月にVMwareのエッジAIに関するアップデートを発表した。VeloRAINはそれを基にした製品となっている。その時のアップデートでは、エッジ接続機器の新製品や統合型SASEの提供、「VMware Edge Compute Stack(ECS)」のアップデートが発表されている。

VeloCloudデバイスの追加

SD-WANエッジデバイスの「VeloCloud」についても、2つのハイエンド製品が発表された。「VeloCloud Edge 4100」は最大30Gbpsのスループットと最大12,000トンネルの接続を、「VeloCloud Edge 5100」は最大100Gbpsのスループットと最大20,000トンネルの接続を実現している。

Uppal氏の説明では、エッジアプリケーションをターゲットにしているという。

「データセンターの外で起こることについて今からお話しします」と氏。「データセンター間の相互通信であるとか、データセンターと他の拠点で通信している様子を思い浮かべてください。(LLMとSLMが)やり取りをしていて、フロントエンドにAIエージェントモデルがあるというのがどういった状況なのか、お分かりいただけると思います。バーストを吸収できるような高スループットが必要です。当社ではこの2製品をAI対応アプライアンスと言っていますが、レイテンシが非常に低く、AIエージェントが使用するトラフィックを支えられるという点で、最大限の性能を達成した製品です」

米調査会社ガートナーが最近発表したレポートでは、VeloCloudをフォーティネットやシスコとともに、SD-WAN市場をリードするプラットフォーム製品に位置づけている。機能に優れ、大きな市場シェアを持ち、正しい市場理解に基づいた製品だとして高く評価した。

一方で、注意点として、Broadcomが提供している顧客体験や製品ロードマップは市場をリードするというよりも追う側だということ、SD-WANに関する今後の計画についてはVMwareとの統合による懸念があることを挙げている。

Broadcom VeloRAIN adds AI on top of VeloCloud SD-WAN

Dan Meyer
Dan Meyer Executive Editor

電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime

Dan Meyer
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