Broadcom VMware、2025年は事業の加速と導入を重視

新たにVMwareを買収したBroadcomだが、昨年の間は改変、統合といった作業で手一杯だったことは否めない。今年はこれまでの成果を受けて、新しくなったVMwareの導入および事業の加速に重点を移せるようにしたいと考えているようだ。一方で、昨年の改変の頃から暗雲が漂い始め、今後に影を落としている面もある。
BroadcomのPrashanth Shenoy(プラシャント・シェノイ)氏がSDxCentralの取材に答えた。同社のクラウドプラットフォーム/インフラ/ソリューションのマーケティング担当バイスプレジデントだ。VMware事業では昨年、製品・サービスやライセンスモデル、価格モデルの変更を行ったと説明し、まさに変革の年になったと語った。
「改変に当たっては、顧客にもお付き合いいただきました。なぜこういったことをやるのか、ご理解いただくのは簡単ではなかったと言っていいでしょう」と氏。「今では顧客にも、パートナー企業にも、十分なご理解をいただいています。当社の製品戦略やビジョン、ロードマップ、なぜやるのか、これはどういうものなのかといったことをご説明しました」
氏の主張には数字による裏付けもある。2024年を終えて迎えた決算では、VMware事業によって業績に弾みがついたことが明らかになった。
2024年第4四半期、VMwareを擁するインフラソフトウェア事業の売上高は58億ドルで、前年同期比196%増の成長を示した。前年同期はVMwareの買収を完了する前の最後の四半期に当たる。
VMware事業の四半期受注もCPUコア数で2,100万個分を計上している。Hock Tan(ホック・タン)CEOが説明した。前四半期には1,900万個分だったことから、Broadcomの下で事業が拡大していることがわかる。それ以上に重要なのが、新たに受注したコアのうち、70%が主力製品のVMware Cloud Foundation(VCF)で使用するものということだ。VCFは「データセンター全体を仮想化する」プラットフォームとなっている。
Tan氏によると、これまでに顧客の上位10,000社のうち4,500社がVCFを契約しているという。VCFのABV(年換算予約額、Annualized Booking Value)は27億ドルとなった。中間決算の時点では、3,000社が契約に同意、ABVは19億ドルと説明されていた。大幅に数字が伸びていることがわかる。
「加速・導入」の年へ
Broadcomは勢いに乗ってさらに成長すべく、2025年を「加速・導入」の年と位置付けている。Shenoy氏の説明では、引き続きVCFに力を入れるほか、AI関連の事業についても期待が増しているという。
「昨年はきれいに整理をする年でした。市場投入ルートや提供サービス、製品を整理して、シンプルなものにしています。方向性を定めて信頼を構築し、製品構築を行いました」と氏。VCFの進展について語った。「今年はつつがなく導入ができるように、無事に利用できるように、高度なサービスがすべて確実に動くように、パートナー企業や市場投入ルートの態勢も万全にしていただけるように、といったことに取り組む年になります」
VCFはオンプレミスへの対応に重点を置いた製品で、今後もBroadcomが提供するVMware基盤の主力製品としての役割を担う。vSphereはVCFの下位製品で、氏が以前に説明していたところによると、「ミッドティアの小規模データセンターを運営する事業者のうち、コンピューティングインフラを仮想化し、ある程度の運用機能を利用して管理がしたいと考えている層」を広くターゲットにしているという。
「当社では、さまざまな規模の、さまざまなフェーズに取り組んでいる顧客に向けて、幅広い製品を提供してきました」。新しくなった階層別アプローチについて、氏はこのように述べている。「フル機能のプライベートクラウドプラットフォームならVCFが、エンタープライズクラスのHCIプラットフォームならvSphere Foundationがあります。コンピューティングの仮想化から手を付けたいという顧客には、vSphere Enterprise PlusやvSphere Standardをご利用いただけます」
Broadcomではこのほか、AIにも力を入れており、しだいに重要な収益源になってきている。
2024年第4四半期、AI関連の売上高は前年同期比220%増の122億ドルに達した。Tan氏によると、伸びたのはカスタムAIアクセラレータとAIネットワーキング事業だという。また、四半期半導体売上高の41%をAI関連が占め、通期半導体売上高は過去最高の301億ドルに達した。
Shenoy氏はAI分野について、「昨年は実験の年でした」と話している。「今年は実際に導入を進め、バリューを獲得する年です。(中略)生産性を向上するでも、新たな収益源を獲得するでも、新しい種類のサービスに活用するでも、どのような取り組みについてもそれは同じです」と語った。
こうした機会は、プライベートクラウドにVCFを導入、活用することでも獲得できる。氏の話では、上記の環境で生成AIアプリケーションを開発している顧客は、VCFを利用することで「IT部門が必要としているデータプライバシーやデータアクセス、データ主権、データ管理を確保しつつ、自社の独自データを活用している」のだという。
VCFでAIアプリケーション開発を支援する取り組みは初期の段階にあり、まずは特定のユースケースを対象としている。自社独自の情報やコードを扱うコンタクトセンター用のアプリケーション開発などだ。Broadcomでは、こうしたサービスを可能にするパートナーエコシステムの拡大を目指しているという。
「NVIDIAとは非常に強固な協力関係を築いています。実際、共同で構築したターンキー製品を当社から販売していますし、(中略)他のIHVや多くのISVとも積極的に連携しています。先ほどもお話ししたように、当社が提供しているインフラでは、種類を問わずにあらゆる(LLMを)実行できます。土台を支えるハードウェアについてもベンダーを選びません」と氏。「ごく具体的なユースケースに関するものではありますが、当社ではこうした柔軟性や選択の自由を重視して勢いをつけようとしています」
通信向けのVMware製品は今後も提供されるのか
Shenoy氏によると、Broadcomは今後、通信向け領域でも重点を絞っていくという。VCFを基盤とする通信向けクラウドプラットフォーム「VMware Telecom Cloud Platform」に「傾注」し、それ以外の通信向け領域には力を入れなくなる可能性もあるとした。
「私たちは別々の活動をいくつか並行して進めていましたが、VCFをベースに通信向けクラウドプラットフォームを構築する方向で一本化しました。クラウド技術による自動化を適切な水準で提供するもので、既存の通信コアネットワークに統合すれば、通信事業者様のニーズに応じて実績のあるリファレンスアーキテクチャの使用が可能になります」と氏。通信事業者や通信向けクラウドの事業者と共同で進めている取り組みについて語った。
Broadcomの通信向け事業は昨年、スピードハンプ(減速帯)に乗り上げるような出来事に見舞われている。米通信事業者のBoost Mobileは――最近になって市場向けブランドを「Dish Wireless」から正式に変更した事業者だ――長期にわたって協力関係にあった顧客だが、VMwareのCaaS(Containers as a Service)基盤の利用を止め、米Wind Riverが提供する類似のプラットフォームに乗り換えている。設立時からVMware基盤を中核とする独自のオープンネットワークを運用していたが、Wind Riverのプラットフォーム「Studio Operator」の利用を開始し、VMware基盤を撤去した。現在、コンテナ化とEdge-to-cloudに関するニーズについてはすべてStudio Operatorで対応している。
Boost MobileのCTO(最高技術責任者)を務めるEben Albertyn(エベン・アルバーティン)氏がSDxCentralの取材に答えている。移行を決めたのは、「費用対効果」に基づいてのことだと語った。ここでの費用対効果とは、「運用パフォーマンス、戦略的ロードマップ、全体的なコスト」を総合的に評価した結果という意味だ。
「オープンRANの場合、パフォーマンスや価格、今後の戦略的ロードマップを総合的に評価するということができます。現在の当社の備え、現在のベンダー体制が今後にわたって最適な進み方をしていけるものになっているかを評価して、もし違うのなら――今回のケースがそうでした――つまり、この3つを総合的に検討し、市場で手に入る製品と比較して、この3点についてはもっと良い選択が可能であることがわかったのです」と語った。
Broadcomの通信向け事業はこのほか、AT&Tとの法廷闘争にも巻き込まれている。VMwareサービスのライセンスと請求額の変更をめぐって争い、昨秋にようやく和解した。
通信基盤の仮想化については、広く取り組みが進められている。その中でも、Broadcomは中心的な役割を担う事業者だ。Shenoy氏によると、「今後数か月以内に」同社から通信向け事業について新たな発表があるという。

電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime

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