クラウド
文:Dan Meyer

米ガートナーによるDHI市場ランキング=BroadcomのVMware変更が影響

米ガートナーによるDHI市場ランキング=BroadcomのVMware変更が影響

米BroadcomによるVMwareの買収を受けて、クラウドベースの分散型ハイブリッドインフラストラクチャー(DHI)管理市場に新たな競争機会が生まれている。Microsoft、Amazon Web Services(AWS)、Nutanix、Oracleといった市場をリードする競合が速やかに獲得に動く可能性もある。

米調査会社ガートナーによるDHIプロバイダーの最新ランキングでは、上記4社とBroadcomが「リーダー」象限に分類されている。DHIプロバイダーとは、異なるクラウドアーキテクチャ間のデータ管理を可能にするクラウドネイティブプラットフォームを提供している企業のことだ。

同ランキングではDHI分野について、「こうしたニーズに応えるため、パブリッククラウド、オンプレミス、エッジに標準化したフルスタックのインフラを展開するもの」とうまく説明している。

Microsoft、AWSがリード

ランキングではMicrosoftが首位を獲得した。提供しているのは「Azure Stack HCI」「Azure Arc」「Azure Kubernetes Service(AKS)」のサービススタックで、ブランド認知度の高さや単一のプラットフォームであること、Azure Arcコントロールプレーンを介した統合管理機能が評価された。

一方、管理面について一部のユーザーが課題を感じているという解説も付いている。管理ツールが複数あること、プライベートクラウドのサポートが十分ではなくエッジロケーションへの導入に制限があること、継続的なセキュリティアップデートが必要であることが理由だとした。

同じく大手ハイパースケーラーのAWSが僅差で続いた。「Local Zones」「Regions」「Outposts」「Wavelengths」といったサービス群でエンドユーザーとの近接性を高めている。AWSが数多く抱えている固定の顧客にとって魅力的なサービスであり、アズ・ア・サービス形式のため管理が簡単で、AWSによる強力なサポートが得られると評されている。

一方、AWSの顧客以外にはそれほど魅力的ではないという評価となっている。AWS Snowを使用していないと非接続時の操作ができず、導入時の計画が複雑なものになるという。

Oracle、Nutanixは別の方針

Oracleの「Cloud Infrastructure Dedicated Region」「Compute Cloud Customer」、各種マルチクラウドサービスもよい評価を受けた。オンプレミス環境、クラウド環境への導入で価格設定に一貫性があり、多様なアーキテクチャをサポートし、さまざまなハイパースケーラーのクラウド環境と相互運用性があると称賛されている。

マイナス面としては、すでに確立している販売チャネル以外での認知度が低いこと、生成AIに関する戦略がそれほど進んでいないこと、これまでの顧客との関わり方から企業の間ではOracleの評判に関する懸念があることが挙げられている。

Nutanixは遥かに規模で上回る競合を相手に、かなり良い順位に付けた。HCIプラットフォームで成功していること、移行が簡単でライセンスポータビリティを提供していることが評価されている。注意点としては、比較的規模が小さいこと、「パブリッククラウドネイティブなサービス」ではないため長期的な選択肢としては選ばれにくい可能性があること、ライセンスに関する柔軟な選択肢がないことが挙げられている。

Broadcomの顧客は流出するのか

Broadcomは「リーダー」企業の5位に入った。市場を最も混乱させている1社でもある。同社の輝かしいVMware Cloud Foundation(VCF)プラットフォームには大きな市場があり、Broadcomが力を入れていること、幅広く提携を結びエコシステムと統合されていることが紹介された。

一方で、VMwareが長年提供してきた永久ライセンスモデルをBroadcomが変更したことはよく知られている。他の業界からも聞こえてくるBroadcomの評判や、同社のサービスやサポートについて企業が懸念していることも「注意点」であると評された。

ガートナーの予測では、こうした懸念から、現在使用しているVMware製品に代えてハイブリッドクラウドインフラを導入できるかを確認するため、DHI製品の検証を始める企業が向こう数年で半数に増加するとしている。2024年時点では10%だとした。

そうした大変動が起これば、VMwareの顧客数万社がBroadcomから流出する可能性もある。

株式調査を提供しているウィリアム・ブレア&カンパニーが最近発表したレポートでは、VMwareの競合に当たるNutanixについて取り上げている。その中で、VMwareの顧客のうち40万社以上(インストールベース)が「いずれはVMwareから離脱する」という市場調査会社予測があることが書かれている。

BroadcomがVMwareサービスの価格設定とライセンスモデルを変更した結果、長期顧客の支払いは大幅に上昇した。そうした顧客の多くが代替製品を探しているという実情が何度もアナリストに取り沙汰されている。

米フォレスターリサーチのプリンシパルアナリスト、Chhabra(ナヴィーン・チャブラ)氏が率いるチームが最近、あるレポートを作成している。現状を受けて、企業が今後、VMwareの変化に対応していく際に使用できる雛形を提供しようと試みた。レポートによると、Broadcomが実施した変更による影響は、製品マーケティングで定番の「5P」――製品・サービス(product)、価格(price)、デザイン・包装(packaging)、流通(place)、プロモーション(promotion)、協力者(partners)――すべてに及ぶという。

「あるVMwareの顧客にうかがったのは、現在のVMware製品の使用状況を踏まえて新しいライセンスモデルと製品パッケージのどこに対応するかを確認したところ、価格が500%上昇することになりそうだということでした」。影響の大きさについてこのように書いている。

また、価格の変更があるのは想定内だったことで、以前から氏のチームでは次のように予測していたという。「(世界の大企業の20%が)離脱を――この言葉はとても慎重に解釈していただきたいのですが――VMwareスタックから離脱を始めるでしょう」

「一夜にしてすべてを入れ替えるわけではなく、徐々にですが、始まると思います」と氏。「いま現在、実際にそうなっているのをはっきりと目の当たりにしています。この予測が正しかったと言えるようになるまでに、さらに5か月もかかるということはないでしょう」

しかし、時期を読むのは今でもまだ大きな課題となっている。

ウィリアム・ブレアのレポートによると、Nutanixと話をしたところでは、競合にチャンスがやってくるのはまだ何年も先のことになりそうだという。VMwareの顧客は複数年の再契約を結んでおり、Broadcomとの契約が終了するのはその後になる。ハードウェアの更新サイクルに合わせる必要もあり、Broadcomが顧客の維持にどのくらい積極的になるかもわからない(AT&Tが好例だ)。顧客が新しいツール一式に乗り換えて習得する気になるかにもよる。

Broadcom側の姿勢はまったく揺らいでいない。

同社は長期の顧客に対して新しいサブスクリプションライセンスモデルに移行してもらう取り組みを進めている。直近の決算説明会では、Hock Tan(ホック・タン)CEOが投資家に進捗具合を伝えた。「既存の最大顧客10,000社のうち、3,000社近く」と契約を交わし、「こうしたお客様には、おおむね複数年契約を結んでいただいています」と語った。契約額を年率換算すると、今年第2四半期の総額は19億ドルとなり、第1四半期の12億ドルから増加している。

「進捗は順調です」と氏。「まだ決して完了したわけではありませんが、期待通りに移行が進んでいます」

Broadcom’s VMware chaos catalyzes Gartner’s DHI ranking

Dan Meyer
Dan Meyer Executive Editor

電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime

Dan Meyer
Dan Meyer Executive Editor

電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime

記事一覧へ