シスコが「堅調な」滑り出し=1Q決算、AIとSplunkが後押し
企業再編を進めていたシスコが堅調なスタートを切った。AI、セキュリティ、クラウド分野を重視する姿勢を強め、2025年度へと順調に推移しそうな流れができている。
2025年度の第1四半期決算は「堅調」だった(訳注:シスコの第1四半期末は10月26日)。調査会社のウィリアム・ブレアが評している。四半期売上高は予測をわずかに上回り、通期を通して勢いが続くという予測が発表された。初速がついたのはAI関連の事業によるところが大きい。
決算説明会では「ウェブスケール事業者」から受注したAI関連の四半期受注高が3億ドルを超えたことが話題に上っている。Chuck Robbins(チャック・ロビンス)CEOが説明した。「今期はウェブスケール事業者からAI関連で10億ドルを受注するという目標を立てていますが、過達になりそうです」と自信を深めた。
ウィリアム・ブレアの指摘によると、シスコの目算ではデータセンター関連の市場機会が過小に評価されている可能性もあるという。一方で、「エヌビディアやアリスタといったベンダーもウェブスケール顧客による大規模な導入を目指しており、シスコは厳しい競争に直面している」とも指摘した。
Robbins氏は後段、ウェブスケール事業者向けの売上高について説明している。AI関連が占める割合は半分に満たないとした。
「AI以外では、伝統的なエンタープライズ製品に関する売上も少しありましたが、割合としてはごくわずかです」と氏。「ほとんどはインターネットインフラ関連で、光ルーティングやスイッチングなどの製品です」
エンタープライズ向けについては、顧客がAIの利用目的を明確に決めかねているとした。とはいえ、「AIを利用するには最新のインフラが必要だということは認識されています。準備段階として先行投資をされているようです」と語った。
Splunk事業でセキュリティの売上高が急伸
AIのほかに業績に大きく貢献したのがSplunk事業だ。同事業によってセキュリティ関連の売上高は前年同期比で倍増した。Splunkの貢献分を除くと、セキュリティ事業の売上高は前年同期比わずか2%増にとどまる。
当然ながら、Splunkの買収に280億ドルを投じたシスコがその貢献分を計算に入れていないということはない。Robbins氏は予め用意していた内容を説明した中で、Splunkの統合を進めている件について次のように強調している。
「シスコとSplunkは、広くセキュリティとネットワーキングの製品/サービスポートフォリオ全体で、さらに12のデータ統合を進めました。Secure FirewallやCatalyst Center、SD-WAN、ICEなどです。共同販売も続けています。SOCの強化を提案する際は、SplunkのSIEMと一緒にシスコのSecure Network AnalyticsやXDRをお勧めするといった具合です。また、市場をリードするオブザーバビリティソリューションの構築も進めています。エンタープライズ領域でフルスタックのオブザーバビリティを推進するものです」
また、サイバーセキュリティプラットフォームの「Cisco Hypershield」が支持を増していることにも言及した。「非常に大きな影響をもたらすソリューションです。たとえば、世界で最も先進的なデータセンターのいくつかで実際に使用されており、高い効果を発揮しています」
Hypershieldは今年4月に発表された。当時、経営幹部のJeetu Patel(ジートゥ・パテル)氏がSDxCentralの取材に応え、「シスコが40年間やってきた中でも、セキュリティ関連ではおそらく最大のイノベーション」だと話している。
ネットワーキング事業は好転しているのか
第1四半期はネットワーキング事業の業績も引き続き回復した。Robbins氏の説明によると、同事業の受注高は2桁増を達成したという。「スイッチング機器や無線機器、インターネット機器がけん引しました」
「特に、データセンタースイッチングの受注高を見てみますと、3四半期連続で2桁成長し、第4四半期から第1四半期にかけてさらに(伸びが)加速しています」と氏。「こうした数字から、当社がこの重要分野で競争力を持っており、当社の顧客によるプライベートクラウドインフラの構築でCisco Nexusブランドが力を発揮していることが分かります。顧客はSilicon Oneを搭載した400G/800Gスイッチに大きな関心を示しており、この勢いは続くと予想しています」
シスコは以前にネットワーキング事業の優先順位を下げている。AI、セキュリティ、クラウド分野の成長機会が大きいことを踏まえての選択だ。その一方で、AIトラフィックの急増が見込まれる中、クラウドやデータセンターのネットワーク容量はさらに重視されるようになっている。
また、シスコはネットワーキング市場のシェアを一部奪うことにもなりそうだ。エコシステムの間で懸念されている材料があることが関係している。
エンタープライズWLAN市場では現在、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)が140億ドルを投じたジュニパーネットワークスの買収手続きを進めている。シスコのScott Herren(スコット・ヘレン)CFO(最高財務責任者)は以前、この件で市場に「不透明感」が生まれ、シスコの利益につながっている可能性があると話している。
「いくらか不透明感が生じたのは確かだと思います。こんな声も聞かれます――これまではHPEのベンダーだった、ジュニパーのベンダーだった、あるいは顧客だったけれども、この際、他の機会についても検討してみるべきだろうか――というものです」と氏。「当社のワイヤレス事業では、第4四半期に100万ドルを超える受注の件数が20%以上も増えました」
ネットワーキング事業のこうした急成長はさらに勢いづく可能性もある。組織再編で製品ラインをスリム化することが決まったためだ。
「顧客の選択肢がたいへん複雑になっており、あれほどのバリエーション、あれほどの数の機能を用意するというのは、おそらく維持すべき方向性ではないだろうというのがシスコの認識のようです。Chuckが気づいたのだと思います」。米フォレスターリサーチのプリンシパルアナリスト、Andre Kindness(アンドレ・カインドネス)氏がSDxCentralの取材で語った。「ACIとNexus Dashboardの統合が始まれば、その後はCatalyst、Aironet、Merakiといった製品ラインも統合されていくでしょう。正しい動きです。市場は10年も前からシスコに対してそのようなメッセージを送っていたのですが、気づくのにしばらくかかったようです」
電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime
電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
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