フォーティネットのLacework買収がクラウドセキュリティを強化、CiscoやPalo Alto Networksと競合
フォーティネットは最近、クラウドセキュリティのスタートアップである Laceworkを買収する計画を発表した。この買収はフォーティネットにとって重要な一歩で、急成長中のクラウドセキュリティ市場のリーダーの座を狙うことになる。また、サイバーセキュリティにおける再編や集約のトレンドの中で、CiscoやPalo Alto Networksといった競合他社に対抗する力を強化するものだ。
「フォーティネットは歴史的に見て、あまり買収をおこなってきませんでした。これまでの買収はごく小規模なものでした。今回の買収は、人数や金額のどちらにおいても同社がこれまで行った中で最大規模のものだと思います」と、米調査会社650 Groupの技術アナリストで共同創設者、Chris DePuy(クリス・デピュイ)氏がSDxCentralに語った。
「彼らはお買い得だと思ったのでしょう。大した買収額でもないのに多くの収益を得ており、これまであまりサービスを提供したことのない市場に参入しているのです」と同氏は付け加えた。
フォーティネットとLaceworkは取引の財務条件を公開していないが、この取引は必要な規制当局の承認と他の通常の締結条件を満たしたうえで、2024年後半に完了する予定だという。
しかし、4月にはクラウドセキュリティのユニコーン企業であるWizがLaceworkを1億5000万~2億ドルで買収するためお最終交渉に入ったと報じられた。この金額は2021年11月のシリーズD資金調達ラウンドでの83億ドルの評価額のごく一部にすぎなかったが、この取引は後に破談となった。
なぜLaceworkは技術的に重要な買収なのか
Laceworkは、クラウドセキュリティプラットフォームを開発し次のような複数の機能を提供している。CSPM(クラウドセキュリティポスチャー管理)、脆弱性スキャン、クラウドワークロード保護、脅威の検出と報告、ランタイムやビルドタイムの脅威防御。これらの機能は、Amazon Web Services (AWS)、Microsoft Azure、Google CloudおよびKubernetesやコンテナベースの環境にわたって提供されている。
このクラウドセキュリティスタートアップであるLaceworkのソフトウェアとサービスは、フォーティネットが現在提供していないセキュリティ市場の領域に対応しており、製品の重複はほとんどないとDePuy氏は指摘する。
この買収により、フォーティネットは、競争が激しく大幅な成長が見込まれるクラウドネイティブアプリケーション保護プラットフォーム(CNAPP)市場に参入することになる。650 Groupは、CNAPP市場が2028年までに100億ドル近くに達すると予想している。
「今回の買収完了後には、フォーティネットの市場シェアは、ほとんどない状態から非常に大きな市場シェアとなるでしょう」と氏。
さらに、多額の研究開発投資によって開発されたLaceworkのクラウドセキュリティテクノロジーが、フォーティネットに提供されることで、内部開発コストを大幅に削減できる可能性がある。
氏は、フォーティネットがCloudセキュリティポートフォリオにさらに多くの機能を追加し、オンプレミスのセキュリティよりも成長が著しい分野で、その能力と市場シェアをさらに拡大すると期待している。
「サイバーセキュリティ業界におけるクラウドセキュリティは非常に重要です。大手ベンダーが顧客のニーズに応えるためには、この分野での存在感を持つことが極めて重要です」と氏は語った。
フォーティネット、Laceworkの強力な顧客基盤をすぐさま活用可能に
Laceworkを買収するもう一つの大きなメリットは、その強力な顧客基盤だ。フォーティネットによると、Laceworkは約1,000社の顧客にサービスを提供しているという。
このセキュリティ大手は、これらの中規模及び大企業とすぐに連携することができ、Laceworkの顧客に対して、ファイアウォールやSASEなどの製品をアップセルできるようになった。この契約は、「双方にクロスセルの機会をもたらします」とDePuy氏は述べた。
この買収により、フォーティネットはCISO(最高情報セキュリティ責任者)との関係を構築し、ネットワーキング分野以外での販売機会を拡大することができる。「フォーティネットは、これまでCISOとの接点が少なかったが、今後はより多くの接点を持つことができ、ポートフォリオにあるセキュリティ運用関連製品を販売することができるようになります」と氏。
取引が両社の顧客に与える影響
氏はフォーティネットがネイティブのフォーティネット及びLaceworkの顧客を相当期間サポートし続けた後に、統合プラットフォームへ移行する可能性が高いと指摘している。
フォーティネットは現在、クラウドワークロード保護、クラウド・アクセス・セキュリティ・ブローカー(CASB)、クラウドネイティブ保護など、数多くのクラウドセキュリティソリューションを提供している。
「フォーティネットが(Laceworkとの)統合をしようとするだろうが、すぐには大繩内と思います。顧客に混乱をもたらし、彼らが離れてしまう可能性があるため、それを避けたいのです」と氏は述べた。
フォーティネットは、Laceworkの顧客がそのグローバルな展開力、広範な規模、豊富なリソース、業界をリードする脅威のインテリジェンスにアクセスできるメリットを享受できると主張している。
「Laceworkの顧客にとっての第一のメリットは、彼らが技術を購入した会社が存続することだと思います」と氏。「私が理解では、Lacework単体では赤字経営が続き、単独では生き残れなかったかもしれません」
このスタートアップは、13億ドルのシリーズD資金調達ラウンドを完了してからわずか6ヶ月後に、従業員の20%を削減すると発表した。
「買収完了後、Laceworkの顧客は、より規模が大きく、財務が安定し、高成長で収益性の高い企業の一部となります」と氏は付け加えた。
一方、今回の買収により、フォーティネットの顧客は単一のベンダーからより幅広いセキュリティサービスを利用できるようになり、複数のサイバーセキュリティツールを使い分ける必要がなくなる。
「フォーティネットの顧客がこれまで抱えていた課題の一つは、組織のセキュリティ確保に必要なすべてのセキュリティサービスをフォーティネットから購入できなかったことです」と氏。「フォーティネットがCNAPPに進出したことで、よりフォーティネットに依存できるようになります」
フォーティネットは、セキュリティファブリックを通じて、より統合的で包括的なソリューションを提供できるようになり、大規模組織のセキュリティ管理を簡素化できるようになる。
他のセキュリティ大手に対する競争力の強化
この買収により、フォーティネットは、ネットワークセキュリティの分野で確固たる地位を築き、クラウドセキュリティ市場にも進出しているCiscoやPalo Alto Networksなどの業界大手との競争力を強化できる。
フォーティネットのLacework買収は、包括的なセキュリティソリューションの統合と提供を目指す同社のセキュリティファブリック戦略に沿ったものだ。「フォーティネットにとっては非常に良い組み合わせです。同社は、このセキュリティファブリック戦略を追求すると同時に、機会を狙っていたのだと思います」と氏。
Palo Alto Networksのプラットフォーム化、Ciscoの統合および買収戦略と同様に、フォーティネットの動きも、より広範なセキュリティソリューションを提供するためにポートフォリオを統合・拡大するという業界のトレンドに沿ったものだ。
「この業界では多くの統合が行われてきました。過去において最も重要な取引の一つは、パPalo Alto NetworksによるIBMの SIEM製品買収、CiscoのSplunk買収でした。そして今、フォーティネットがLaceworkを買収しました。これにより、これらの大手ベンダーは、顧客に対して、より幅広いポートフォリオを提供できるようになります」と氏。「そして、この流れは、今や一般的になりつつあります」
How Fortinet’s Lacework buy boosts cloud security, rivals Cisco, Palo Alto Networks
SDxCentralの編集者。
サイバーセキュリティ、量子コンピューティング、ネットワーキング、およびクラウドネイティブ技術を担当している。
バイリンガルのコミュニケーション専門家兼ジャーナリストで、光情報科学技術の工学学士号と応用コミュニケーションの理学修士号を取得している。
10年近くにわたり、紙媒体やオンライン媒体での取材、調査、編成、編集に携わる。
連絡先:nliu@sdxcentral.com
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