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文:Dan Meyer

世界のデータセンター事情=ハイパースケーラーに容量が集中していくのはなぜか

世界のデータセンター事情=ハイパースケーラーに容量が集中していくのはなぜか

Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)などのハイパースケーラーが、データセンターの拡張ラッシュのただなかにある。2020年代末までに、世界のデータセンター容量の3分の2近くをハイパースケーラーが占めることになりそうだ。2017年の8倍の容量に達する見込みだという。

米調査会社Synergy Research Group(SRG)が発表した最新レポートで、ハイパースケーラーが現在世界中で運用している大規模データセンターの数は合計で1,000を超え、容量にして世界のデータセンターの41%を占めていることがわかった。確保している容量のうち、半分強がみずから構築したデータセンターによるもので、残りは賃借した施設によるものとなっている。

ハイパースケーラーの容量は拡大し、世界のオンプレミスデータセンターの容量合計(全体の37%)を上回るようになった。6年前にはオンプレミスデータセンターが全体の60%近くを占めており、現在の状況は、当時と「まったく対照的」なものになっているという。

今後の数年間で、この割合はさらに増えそうだ。SRGの予測では、2029年までに、ハイパースケーラーが世界のデータセンター容量に占める割合は60%に達し、オンプレミスの施設が占める割合はわずか20%に減少するとしている。

「企業が自社のデータセンターのハードウェアやソフトウェアにかける金額は、2012年にはクラウドインフラサービスに費やす金額の12倍もありました。現在では、クラウドインフラサービスの方に3倍多く 支払いをしています」。チーフアナリストのJohn Dinsdale(ジョン・ディンズデール)氏が述べている。「そのほかにも、SNSやEコマース、オンラインゲームなどの個人ユーザー向けデジタルサービスや、SaaSが大きく伸びています。こうした傾向によって、ハイパースケールデータセンターが急成長する結果となりました」

データセンター需要を押し上げるAI

Dinsdale氏によると、企業によるコロケーション施設への機器設置も増えており、オンプレミスデータセンターの容量は全体として縮小しているという。AIサービスの活用が進むなか、このパターンは今後も増えていくことが予想される。

「こうした傾向は、生成AIと関連サービスの台頭を受けて、今後の数年間でさらに悪化していくでしょう。AIを運用するにあたり、ハイパースケーラーよりも自社で運用する方が適しているという企業はほとんどないためです」

調査会社ISGが最近発表したレポートによれば、一般的な大手企業が使用するAI対応アプリケーションの数は、今年末までに2倍近くに増える見込みだという。2023年末に平均250個だったところから、2024年末には488個になるという予測だ。

結果として、データセンターの総排出量に影響する可能性もある。

米Deloitte Consultingのマネージングディレクター、John Mennel(ジョン・メネル)氏は、最近SDxCentralに寄稿した記事の中で、ハイパースケーラーのクラウドインフラによる排出量は、企業が所有するデータセンターよりも60%少ないと説明している。「これはなぜでしょうか。ハイパースケーラー各社は、独自にサステナビリティへの大規模な投資をしてきました。消費するエネルギーのうち、データ処理に直接使われている割合が大きいのです」

米Dell’Oro Groupのレポートによると、データセンターへの投資の一部は、エネルギー管理の高度化に充てられているという。AI関連の処理やストレージ需要の急増に対応するために必要となる要素だ。

「私としては、AIというのは大きな変革ではなく、ひとつの発展だと考えています。これまでのところ、最新のアクセラレーテッドコンピューティングが導入されているのは、そのために特別に設計した施設というわけではありませんでした」。リサーチディレクターのLucas Beran(ルーカス・ベラン)氏が説明している。「AIの発展における次の一歩は、AIに適した電気設備、冷却設備を構築し、それらを備えた施設を用意して、アクセラレーテッドコンピューティングを導入することです。そうしたDCPI(データセンターの物理インフラ)がすでにベンダーに発注されているケースも多く、ベンダー各社も生産能力を増やす投資をしています。今後18か月を通じて、DCPI市場の大きな成長となって現れるでしょう。アクセラレーテッドコンピューティングと目的特化型の物理インフラがそろえば、アクセラレーテッドコンピューティングと目的特化型の物理インフラがそろえば、AIワークロードのパフォーマンス向上が見込まれます」

データセンターへの投資が続く

ハイパースケーラーではこのところ、AI関連の投資を増やす必要があることを示唆する発言が増えている。

Microsoftの直近の決算説明会では、Amy Hood(エイミー・フッド)CFO(最高財務責任者)が次のように語った。「当社では――このことについては、数四半期にわたってお伝えしてきましたが――AI需要に対して容量が十分には足りていません。(中略)AI向けに提供できる容量が追い付いていないため、サードパーティと契約して支援を頂いています。Azureプラットフォームを拡張して需要に応えるのを喜んで支援していただけるパートナーです。また、もっとバランスの取れた状態に戻せるように、先ほどお話ししたように、かなりの投資をして構築を進めています」

一方で、各社とも、どのように資金を活用するかについては意識的だ。

Amazonの第2四半期決算説明会では、Andy Jassy(アンディ・ジャシー)CEOが説明に立った。AIによってデータセンターのトラフィックが増加するなか、十分な容量を確保することが重要だと認めつつも、「容量を増やしすぎてしまうと、経済性が悲惨なことになります。望ましい営業利益は出ないでしょう」と語った。

「今の状況としては、AIやインフラにすでに多額の投資をしていますが、今以上に容量を増やしたい、と考えています」と氏。「大きな需要が寄せられています。当社としても、非常に大きなビジネスになると考えています」

米ABI Researchのレポートによると、AI需要で火が付いた設備投資ラッシュは、「大規模/超大規模コロケーションデータセンター」の建設にも向かうという。現在、いずれかの規模に該当する施設が世界のデータセンターの28%を占めているが、この割合が「2030年には43%に拡大する」としている。「AI/生成AIのワークロード処理など、大量のデータを消費する用途に対応できる、大規模データセンターの建設が進むため」だとした。

Why are hyperscalers hogging worldwide data center capacity?

Dan Meyer
Dan Meyer Executive Editor

電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime

Dan Meyer
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