災害時の通信を確保する、スマートフォン通信基盤

私たちの生活に欠かせないスマートフォンは、非常に便利なツールです。しかし、大規模災害が発生するたびに通信困難になる状況が繰り返されてきました。災害時でも、いつも通りにスマートフォンを利用し、安否確認や災害情報の収集を確実に実施する方法はないのでしょうか。
大規模災害発生時にスマートフォンがつながらない理由とは
家族や友人との連絡、情報検索、動画視聴やゲームなど、スマートフォンは私たちの生活に欠かせない存在です。しかし、ひとたび大規模な災害が発生すると、通信が困難になり、スマートフォンを思うように使えない状況が生じてきました。災害から身を守るためには、正しい情報を得て適切に行動することが重要です。しかし、日頃から頼りにしているこの便利なツールが、災害時には思うように機能しないこともあるのです。
では、なぜ災害時にスマートフォンが利用しづらく、時には利用できなくなってしまうのでしょうか。それには主に3つの理由があります。
一つ目は、インターネット回線の混雑です。大規模災害が発生すると、多くの人が一斉に安否確認や災害情報の収集を行うため、通信が集中し回線がひっ迫します。その結果、通信速度が低下し、スマートフォンが思うように使えなくなるのです。
二つ目は停電です。スマートフォンの電波は基地局を経由して送受信され、会話やメッセージ、インターネットの利用が可能になります。しかし、台風による倒木や障害物の飛来、地震や豪雨による土砂崩れなどによって電線が断線したり電柱が倒壊したりすると、基地局への電力供給が途絶えます。基地局には非常用電源が備えられていますが、多くは24時間程度の稼働に限られ、それまでに基地局が復旧しなければスマートフォンは利用できなくなるのです。
三つ目は、基地局やケーブルなどの伝送路の物理的な損壊です。地震や津波、豪雨による土砂崩れで基地局や伝送路が損壊すると、基地局が機能せず、信号が交換局に届かなくなることで、スマートフォンが利用できなくなります。実際、総務省は「令和6年版情報通信白書」にて、2024年1月1日に発生した能登半島地震について『携帯電話等についても、発災直後から発生した停電の長期化や土砂崩れなどによる伝送路等の断絶等の影響により、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル各社を合計して最大839の携帯電話基地局(うち石川県799)において停波が報告された(1月3日時点)』と公表しています。
携帯電話基地局の停波局数の推移(被害報ベース)
出典:「令和6年版情報通信白書」(総務省)
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r06/pdf/n1120000.pdf
大規模災害時も通信を確保する「NerveNet」
大規模災害時こそ欠かせない存在であるスマートフォンが、現実には、回線の混雑、停電、物理的な損壊などによって、思うように使えなくなることが少なくありません。こうした中、災害時でもいつも通り使えるインターネット回線があります。それが、地域分散ネットワーク 「NerveNet(ナーブネット)」です。
NerveNetはナシュア・ソリューションズ株式会社と国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT(エヌアイシーティー))が共同開発した製品です。基地局同士が自動的に相互接続する機能を持ち、災害時に一部のルートで障害が発生しても直ちに別のルートに切り替えて通信を確保する、無線マルチホップ技術を用いた分散ネットワークとアプリケーションです。災害による回線の混雑、停電、物理的な損壊があっても、別ルートで電波の送受信を行うことで、スマートフォンが使えなくなる事態を防ぎます。大規模災害発生時に、住民が自ら災害情報を取得し、身を守る行動が取れるよう、各自治体でNerveNetの導入が進んでいます。
NerveNetのネットワーク切り替えイメージ
BS= NerveNet基地局
京セラみらいエンビジョンは、公衆無線設備や各種センサー、カメラ、街灯、サイネージ等を設置できるようにした多機能ポール「みらいポール」をパートナー各社と開発しました。このみらいポールにNerveNetを搭載し、各自治体でのNerveNetの導入を支援しています。
大規模災害はいつどこで発生するかわかりません。身を守るためには、正しい情報を得て適切に行動することが不可欠です。京セラみらいエンビジョンは、NerveNetの導入支援を通じ、災害時の確実な情報取得と住民の安全確保に貢献していきます。
京セラみらいエンビジョンは「Data PlatformとNetwork Solutionを核に格差なく住み続けられるまちづくりに貢献するグローバルカンパニーを⽬指す」をビジョンに掲げ、住み続けられるまちづくりの課題である「通信」「安全」「医療・介護」「教育」「交通・物流」「人口減少」「地域経済」の7分野の解決を目指しています。
■ナシュア・ソリューションズ株式会社
NerveNetによる情報通信技術をコアにしたサービス・プラットフォーム事業を自治体や諸外国に展開してきました。今後は各拠点に配備されたNerveNet基地局上で稼働するNerveNet専用アプリケーションをパートナー企業と共にお客様に提供していくことにより、持続性のある高度な地域デジタル社会の実現に向けて努力していきます。
■国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)
情報通信分野を専門とする我が国唯一の公的研究機関です。情報通信技術の研究開発を基礎から応用まで統合的な視点で推進し、同時に、大学、産業界、自治体、国内外の研究機関などと連携して、研究開発成果を広く社会に還元し、イノベーションを創出することを目指しています。
【関連リンク】
■京セラみらいエンビジョン株式会社
・「みらいポール」について
■ナシュア・ソリューションズ株式会社
■国立研究開発法人情報通信研究機構
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