IoTとビッグデータで解決できる介護の悩み <第2回>
“現在の技術で介護向けにどこまでのことができるのか”をテーマに、介護ITの研究をされている九州工業大学 井上創造教授インタビューを4回連載でお届けします。第2回では、井上先生がどんなことに取り組んでおられるのかをおうかがいします。
(インタビュアーはnewsME編集部 宮澤)
トップ画像:井上先生提供 多様なメンバーが参加する研究室
大学とベンチャーで、DXではなくXDに取り組む井上創造教授
― 先生は九州工業大学 大学院生命体工学研究科の教授、九州工業大学 ケアXDXセンターのセンター長、合同会社オートケアのCTOという3つの立場をお持ちですが、具体的にどのようなことされているのか教えてください。
01三つの立場①:生命体工学研究科
井上:最初の大学院の生命体工学研究科は、大学院ですので、基本的には教育・研究を大学院生と一緒に行っています。生命体工学研究科とは何なのか、ということですが…。私たちの生命体工学研究科の大学院は九州工業大学の若松キャンパスにあります。若松キャンパスには、同じキャンパス内に北九州市立(いちりつ)大学や早稲田大学とかいくつかの大学が一緒になっています。生命体工学研究科には、工学や情報工学をやっている学生さんたちが進学してくるのですが、他の留学生とか先生、他大学生も加わって、融合分野ということで「生命体」と名乗って、工学系の色々なことを「人間」というところで紐付けて研究するところになります。ですので、今の人工知能やロボット、人間の生体とか、その他材料、環境といったところまで、色んな研究者がいる場所になります。
元々私は情報系の出身で、コンピューターが専門なんですが、ビッグデータとかIoTなどの研究をしています。「ビッグデータ」とは、大量のデータを使って色んな新しい事を見つけるということです。「IoT」というのはモノのインターネットのことですが、センサなどの小さなデバイスが色々なところに存在していて、それらを利用して価値あるサービスを作る、というような研究をしています。特に、これからお話しします介護や医療に応用していくという研究をやっているのが、最初の立場です。
02三つの立場②:ケアXDXセンター
井上:次に、ケアXDXセンターですが、これは大学の中の研究センターになります。研究センターでは、十名ほどの先生たちとチームを組んで活動しています。それで、ケアXDXって何かと言いますと…。まず、「ケア」が示すものは、介護や医療、看護とか福祉、そういったものが相当します。それから「XDX」は、DX(デジタルトランスフォーメーション)というのは聞いたことがある方も多いと思います。DXはデジタル変革と言ったりもしますが、要は、デジタル化することでビジネスを変革していきましょう、というのがDXです。私たちはちょっと欲張りなので、「XD」ということをDXに組み合わせて「XDX」と言っています。これはエクスペリエンスデザイン(XD: eXperience Design)を表していて、「体験のデザイン」ということです。介護業界では、成功体験というのが一つの鍵になるのかなと思っていますので、そういう成功体験を設計していきたいということで「XD」と合わせてXDXセンターということにしています。
03三つの立場③:合同会社オートケア
井上:三つ目の立場は、AUTOCAREという合同会社のCTOをしています。会社名の、AUTO=自動、CARE=ケアを意味しているんですが、できるだけケアを効率化したいという気持ちでやっています。これまで大学では、介護記録とか色々な業務記録が自動化されていくようなアプリを作ってきました。結果「FonLog」というアプリになったのですが、作ったのはいいが使ってもらうためには運用まで継続的なサポートをする必要があると考えました。その使ってもらうサポートをする会社として、大学発ベンチャーで作ったのがAUTOCAREになります。
― 井上先生、ありがとうございました。井上先生が取り組まれていることが良くわかりました。次回は、IoTとビッグデータを専門に研究をしている井上先生が介護(業界)の課題に挑戦したきっかけについておうかがいします。
関連リンク:
合同会社 AUTOCARE
しらせあいコール
サウンドマインド
けん脳Check!
国立大学法人 九州工業大学 大学院 生命体工学研究科 教授
国立大学法人 九州工業大学 ケアXDXセンター長
合同会社AUTOCARE CTO
所属学会:情報処理学会 シニア会員、IEEE、ACM、日本データベース学会、電子情報通信学会、日本知能情報ファジィ学会、日本医療情報学会
介護や看護行動に関する行動センサビッグデータを集め解析を進めている。
国立大学法人 九州工業大学 大学院 生命体工学研究科 教授
国立大学法人 九州工業大学 ケアXDXセンター長
合同会社AUTOCARE CTO
所属学会:情報処理学会 シニア会員、IEEE、ACM、日本データベース学会、電子情報通信学会、日本知能情報ファジィ学会、日本医療情報学会
介護や看護行動に関する行動センサビッグデータを集め解析を進めている。
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