Nuage社、Nokia社が軌道修正するなか「SASEのイネーブラー」を目指す

SD-WAN市場の参加企業各社がSASEプラットフォームの市場投入を目指してセキュリティ機能の構築に奔走しているなか、Nokia社の子会社、Nuage Networks社は異なる戦略を取っている。
エンドツーエンドのSASEプラットフォーム構築を追求しようとすると、セキュアなWebゲートウェイ、クラウドアクセスセキュリティブローカ、ゼロトラストネットワークアクセスといったクラウドセキュリティ機能を開発するか、開発企業の買収が必要となる。Nuage社はその代わりに、最も得意とするSD-WANに集中している。
Nuage社のマーケティング責任者、Lindsay Newell氏はSDxCentralのインタビューで、「SD-WANは今でもSASE向けのプラットフォームであると考えています」と話した。「私たちは必ずしも自社をSASEソリューションのプロバイダだとは考えていません。SASEソリューションのイネーブラーだと考えているのです」
エンタープライズ市場はあまりにも多様なため、万能型のSASEプラットフォームを構築することはできないと氏は言う。
「SASEが当初、より直感的だと言う風に表現されていたのは、やや達成の難しい理想めいていたと思います」とNewell氏。「SASEではすべてを1社のベンダーから提供し、すべてをクラウド上に置かねばならないという考えを市場の大半で実現するまでには、10年かかるでしょう」
Newell氏によると、多くのベンダーがSD-WANとSASEについて、どちらがよいかという白黒判定をしようとしてきたが、現実はその中間にあるという。
「A対B、選択肢1と選択肢2といったように、すべてを二元論で提示しようとする方が常に簡単です。しかし、市場はそのようなものではありません」と氏。「現実には、エンタープライズ市場にはセキュリティに関するさまざまなニーズや要望があります。1つの都市で5つの自動車部品店を構えるチェーン店もあれば、180カ国に展開するグローバル銀行もあります」
「この2つの企業では、要件がまったく異なります」と氏は言う。
マネージドSASEの基盤としてのSD-WAN
SD-WANに注力しているからといって、Nuage社がSASEや統合セキュリティをあきらめたというわけではない。どのサービスが顧客の要件に最も適しているかの判断をサービスプロバイダに委ねているだけだ。
「ネットワークセキュリティの観点から、意味のあるセキュリティを最大限に組み込もうとしています」とNewell氏は言う。「セキュアなWebゲートウェイ、(データ損失防止、)ゼロトラストユーザーアクセスについては、当社は通例、提携を組んで対応しています」
Nuage社によると、同社のSD-WANは米Zscaler社など40社以上の技術パートナーのサービスと相互運用が可能だという。これにより、サービスプロバイダは顧客との作業をより柔軟に行えるとNewell氏は言う。
また、Newell氏によると、顧客は大きく2つのグループに分けることができるという。ブランドに敏感ではなく、ソリューションを購入している顧客と、ブランドに敏感であったり、特定のセキュリティエコシステムにすでに深く根付いている顧客だ。
SD-WANや次世代ファイアウォールなどのオンプレミスセキュリティ機能に集中することで、既存のインフラやソフトウェアの統合に苦慮することもあるオールインワンのSASEプロバイダよりも広範な市場に対応できるというのが氏の主張だ。
また、SASEに関する最初のレポートを共同執筆した米Gartner社のアナリスト、Neil MacDonald氏によると、SD-WANベンダーがクラウドセキュリティベンダーと提携することや、あるいはその逆についても、シングルパスで行う限りSASEエクスペリエンスを顧客に提供するのに問題はないという。
米調査会社Dell’Oroグループのリサーチディレクター、Mauricio Sanchez氏の主張によると、完全なネットワーキングおよびセキュリティのスタックを提供できることは必須ではないものの、そうしたSASEベンダーは提携を選ぶベンダーに比べて優位にあるという。
とはいえ氏は、SASEはまだ新興市場であり、マルチベンダーによるSASEの提供を好むであろう企業は多いと話している。
Nuage社、新生Nokiaの下で
SD-WANやネットワークセキュリティ、SASEに対するNuage社のアプローチは、親会社のNokia社が最近新たにCEOに就任したPekka Lundmark氏の下で事業再編を行っていることを考えると、それほど驚くようなものではない。
昨年の就任以来、Lundmark氏はほとんど時間を無駄にすることなく同社のコア哲学に抜本的な変更を加えてきた。前CEOのRajeev Suri氏が提唱したエンドツーエンド戦略も放棄されることとなっている。
Newell氏はEメールの中で、Nuage社のSD-WANプラットフォームはNokia社のコア戦略に可能な限り沿ったものだと説明している。「Nuageは、エンタープライズビジネスを成長させるというNokiaの戦略の一環として、サービスプロバイダのマネージドサービスを通じてエンタープライズSD-WANの採用を推進していきます」
昨年秋に発表された3年間の事業再建計画の一環として、Lundmark氏はNokia社のさまざまな資産を4つの事業グループに分けようとしている。このうち、Nuage社は現在、ネットワークインフラ事業グループに属している。Nokia社の光、海底、固定ネットワーク事業も同グループに含まれる。
また、Lundmark氏は幹部スタッフの削減に取り組んでいるものの、Nuage社についてはCEOのSunil Khandekar氏が引き続き指揮を執る。
とはいえ、Nuage社の戦略が期待通りに機能しなかった場合は同社の状況は変わる可能性がある。
Lundmark氏は、どの市場セグメントについてもNokia社が参加を続けるかどうかはその分野における自社の優位性と経済力が関係してくるということを明言している。
「当社が今後適用する非常に重要な信念の1つは、もし経済的価値創造への道筋を確立できない、あるいは示すことができない場合には、そのセグメントへの参加を見直すということです」とLundmark氏は昨年述べている。

Tobias Mann is an editor at SDxCentral covering the SD-WAN, SASE, and semiconductor industries. He can be reached at tmann@sdxcentral.com

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