2023年、生成AIの急速な台頭は、ネットワークを含むITのあらゆる分野に大きな影響を与えた。2024年もネットワーキングに関するさらに多くのAIが登場するのは間違いないが、大きなトレンドになるのはそれだけではない。
いくつかの主要ベンダーが、SDxCentralに、来年にかけて企業ネットワークを様変わりさせる主要なトレンドに関する洞察と予測を提供してくれた。ベンダー各社は、さらなる自動化、クラウドネットワーキングの強化、新しいタイプのSASE導入、無線・有線ネットワーキングの革新などを予測している。

01予測#１：企業はますますアプリケーションを重視するようになる

IBMのソフトウェア・ネットワーキング製品管理担当バイスプレジデント兼NS1最高製品責任者、David Coffey（デビッド・コーフィー）氏 は、SDxCentralに対し、エッジへの移行が加速するにつれてアプリケーションの分散化はさらに進むだろうと予想していると語った。

全体として、アプリケーションのロケーションの重要性は低くなるだろうと氏は予想している。アプリケーションのレジリエンス、パフォーマンス、運用コストがより重要になるとした。その結果、ネットワーキングチームは、アプリケーションの設計と展開において、ますます不可分な役割を担うようになりそうだ。

02予測#２：マルチクラウド環境における自動化と統合によるスピードとセキュリティの強化

サイバーセキュリティ企業の米F5 のプロダクトマーケティング担当シニアディレクター、Derek Yee（デレク・イー）氏 は、F5の2023アプリケーション戦略の現状調査 によると、88％の組織が、複数のポイントソリューションではなく、単一のセキュリティプラットフォームを採用する方向に向かっていると述べた。

同氏は、この傾向は、さまざまなクラウド、サービス、アプリ、APIにわたるネットワーキングとセキュリティを管理するマルチクラウドネットワーキングプラットフォームへの移行を示していると指摘する。このようなプラットフォームは、パフォーマンスを向上させるだけでなく、管理を簡単にすることで、ヒューマンエラーのリスクを減らし、信頼性を高める。

03予測#３：デュアルベンダーSASEが重要になる

米ジュニパーネットワークス のAI主導型SD-WANの製品マーケティング担当シニアディレクターおよびSPaaC（チャネルパートナーとしてのサービスプロバイダー）、Karen Falcone（カレン・ファルコーネ）氏 は、2024年にはネットワーク業界にパラダイムシフトが起こると予測している。

世の中のセキュリティチームとネットワーキングチームがギャップを埋め始めたとはいえ、大半は明確に分離されたままになるだろう。企業が急いで要件を調整する中、デュアルベンダーのSASEが単に台頭するだけでなく、状況を支配するだろうと氏は予測している。氏の見解では、このアプローチは単にセキュリティのためだけでなく、急速に進化する技術市場で舵を取る企業の戦略的知性の証となるという。

04予測#４：ネットワークチームはクラウドベースの管理ソリューションを模索する

Falcone氏はまた、帯域幅のコストが高騰し、ネットワークの可用性とパフォーマンスの向上に対する需要が高まるにつれ、企業は投資に対して最大価値を提供するソリューションを優先するようになるだろうとも予測している。

「2024年には、クラウドベースの管理ソリューションは単なる選択肢ではなく、不可欠なものになるでしょう」と氏は言った。

05予測#５：マネージドサービスは、SD-WANの市場参入への重要なルートであり続ける

Falcone氏によれば、マネージドサービスプロバイダー（MSP）は、2024年のSD-WANの成長において、単なる貢献者としての役割を超えて極めて重要な役割を担うことになる。

MSPの役割が進化するにつれて、MSPが今後も企業の道しるべとなり、帯域幅の拡大、パフォーマンスの強化、コストの最適化といった複雑な問題を巧みに乗り越えるのを助けていくことを同氏は期待している。

06予測#６：800Gネットワーキングは、大量のデータの需要に対処する「ヒーローテクノロジー」として登場

同社のサービスプロバイダーマーケティング担当バイスプレジデント、Sally Bament（サリー・バメント）氏 は、2024年に800Gネットワーキングが増加すると予想している。

「2024年には、超高速で高度なエクスペリエンスを要求する、データ量の多いアプリケーションやサービスが、引き続き爆発的に増加するでしょう」と同氏は言う。

氏は、グローバル産業が帯域幅の需要とデータ量の多いアプリケーションに起因する遅延の増大を管理する必要に迫られている中、800Gネットワーキングは「ヒーローテクノロジー」として台頭するだろうと予測している。また、800Gの用途は、コア、ピアリング、データセンター相互接続（DCI）、データセンターエッジ、エッジアグリゲーション、AIデータセンターといったネットワーキングのユースケースに広がり、通信事業者が容量増強、生態系の持続可能性、コスト管理のバランスを取りながら持続可能な成長を遂げることができるようになると指摘した。

07予測#７：クラウドエンジニアリングとネットワーキングエンジニアリングの戦いは激化する

同社のクラウド／データセンターマーケティング＆ビジネス分析担当シニアディレクター、Ben Baker（ベン・ベイカー）氏 は、クラウドエンジニアリングとネットワークエンジニアリングの戦いが引き続き激化すると予測している。

「クラウドエンジニアは遠慮知らずで、従来のネットワークエンジニアの領域に進出し続けています」とBaker氏は言う。「旧式のネットワークツールはまだ生き残っていますが――レガシーなものはどうにも捨て去ることができないもののようです――クラウドのスキルは、パブリッククラウドだけでなく、オンプレのインフラストラクチャの運用にもますます使用されるようになるでしょう」

08予測#８：持続可能性はもはや異常値ではなくなる

Baker氏によれば、電力とサステイナビリティの問題も、引き続き最重要課題となるだろうという。

同氏は、新しいAIモデルのトレーニングが大きな負担となり、データセンターラックの消費電力が増加する中、インフラベンダーはより効率的な機器の設計と構築を継続すると述べた。彼は、液浸冷却などの消費電力を最小限に抑える実験的な冷却方法が実験段階を終えて登場すると期待している。

09予測#９：LANポートの終焉？無線中心のネットワーク設計

大手ネットワーク機器ベンダーの米Extreme Networks（エクストリームネットワークス）の最高情報セキュリティ責任者 (CISO) 、Phil Swain（フィリップ・スウェイン）氏 は、自動化と、ゼロトラストを含む無限の柔軟性やセグメンテーションの推進が、組織をLANベースのネットワークから100％ワイヤレスへと移行させることになるのではないかと考えている。高速化が進めばなおさらだ。

同氏は、アクセスポイント（AP）の高密度配備によって、企業はネットワークをリモートで制御・管理でき、現場での設定が不要になると指摘した。同社のCTO室に所属するプリンシパルアーキテクト、Kurt Senba（カート・センバ）氏 は、6GHz帯の採用と、Wi-Fi 6EおよびWi-Fi 7の優れたパフォーマンスと信頼性が相まって、さまざまな産業分野でWi-Fiを中心とした戦略を取る動きが加速していると付け加えた。

10予測#10：あらゆる場所のAIがネットワーク(およびその他すべて) をよりインテリジェントにする

同社CTO室のイノベーションリード、Carolina Bessega（カロリーナ・ベッセガ）氏 によると、2024年、ネットワーキング業界はこれまで以上にインテリジェントで直感的なものになるという。AIベースのネットワーキングツールは、ユーザーエクスペリエンス、サービスの可用性、およびサービス品質に影響する問題の予測、予防、是正に役立つと氏は予測している。

Bessega氏はまた、機械学習は現状のネットワーク最適化を超えて、ネットワークの仕事をよりシンプルかつ簡単に、より速くし、その結果としてより良いものにするだろうと予測している。

「大規模言語モデルは、他のタイプの機械学習やネットワーキングのビッグデータと組み合わされて、ベンダー、顧客、パートナーが共同で革新を起こす新たな機会が作られるでしょう。ネットワークを戦略的資産に変えるソリューションを生み出すイノベーションです」と氏は述べた。

10 networking technology predictions for 2024