BroadcomによるVMware製品の価格/ライセンスの変更がどうなったか

米Broadcomは先日、仮想プライベートクラウド(VCP)「VMware Cloud Foundation」のメジャーアップデートをリリースした。買収による恩恵を全面的に享受することが可能になった一方で、傘下に収めたVMwareのライセンスモデルと価格を変更したことをめぐり、今も論争が続いていることにも改めて光が当たっている。
VCFのアップデートに関する直近の記者会見では、VMwareのクラウドプラットフォーム/インフラ/ソリューションのマーケティング担当バイスプレジデント、Prashanth Shenoy(プラシャント・シェノイ)氏が、かなりの時間を割いて「市場のFUD(不安や疑念を煽る言説)やノイズ」に対する反論を試みた。「Broadcomの子会社になったら値上がりした、製品数が大きく減った」という批判のことだ。
1つ目の批判については、「これほど事実とかけ離れたものはない」とした。
「VMware Cloud Foundationのサブスクリプション価格は半額になりました」。物理コア1個当たりの価格は年間700ドルだったのを、新しいサブスクリプションでは350ドルに引き下げたと説明している。
「私たちが行ったのは、以前に提供していたCPU単位の永久ライセンスモデルから、物理コア数を単位とするサブスクリプションモデルへの完全な移行です」と反駁した。
次に、VMwareはこうしたサブスクリプションモデルへの移行が遅れていたと語った。以前にも述べていた見解だ。「率直に言いまして、クラウドインフラ業界の動きを詳細に追っている皆様であれば、こうした価格モデルはここ数年であらゆるインフラベンダーやエンタープライズソフトウェアベンダーが採用してきた業界標準だと認識されているのではないでしょうか」
このように豪語する一方、VMwareの永久ライセンスを長年利用し、サポートやサービスを更新してきた顧客にとっては「価格面が課題に」なっていることも認めている。
「永久ライセンスとそれに伴うサポート&サブスクリプション(SnS)の更新が終了したことで、こうしたお客様に関しても、サブスクリプションモデルに移行する以外に選択肢がなくなりました。値上げになったといわれるのはこの場合のことで、SnSの更新価格とフルスタックのサブスクリプション価格を比較されているのです。(中略)当社としては実施するより仕方のないことでした」。サブスクリプションモデルが業界標準になっているという主張について、氏はこのように述べている。
価格の比較しにくさ
新旧の価格比較をさらにしづらくしているのが、Broadcomが各種のVMwareサービスの数を大幅に削減し、ほんのひと握りにしたうえで、そのほとんどをvSphereやvSAN といった主なコア製品と一緒にパッケージ化したことだ。Shenoy氏の説明では、こうしたコア製品を複数購入する場合のコストが有利なものになっているという。
「コスト比較ということについては、2つ以上のコンポーネントをご利用いただいているお客様、たとえばvSphereとvSAN、vSphereとNSX、vSphereとAriaを利用されているなどの場合ですが、(中略)こうしたお客様のコスト面に関しましては、各コンポーネントを個別に購入する場合よりもずっと有利であることがわかります」と氏。「vSphereだけ利用されていて、VCFを購入する場合には、確かに値上がりしたことになるでしょう」
調査会社Forrester Researchの主任アナリスト、Naveen Chhabra(ナヴィーン・チャブラ)氏は、この変更によって、顧客が支払うコストに並々ならぬ影響が生じたと指摘する。以前のモデルであれば、顧客がシャツを1枚だけほしい場合には単品で購入することが可能だったが、今はBroadcomがスーツを一式購入するよう強要してくるのだという。
「確かに、このモデルでお金の節約になると主張することは可能です。ですが、探していたものはこれでしょうか。あなたはシャツがほしかっただけです」と氏。顧客はVCFのような大きなパッケージを買わされるが、その中のアイテムにはいらないものがあるかもしれないと語った。Broadcomはパッケージの価格を引き下げて、お得であるように見せかけることができるが、顧客は製品を1つほしかっただけの場合でも、余分な支払いをするはめになるということだ。
新しいサブスクリプションモデルでは、その後も毎年支払いが必要になるため、こうした余分な請求は長期的に影響を及ぼすことになる。
「(TCOは)5年分というわけにはいきません」と氏。「毎年支払いが積み重なっていきます」
Chhabra氏は以前にも、こうした状況が顧客にとって大きな課題になると述べていた。VMware製品は顧客の社内に深く根付いているためだ。
「私がクライアントと話をする時には、依存関係がありますから、シンプルにVMwareのハイパーバイザーを他社のハイパーバイザーに変更するというのは簡単なことではないかもしれないと話しています。エコシステムへの影響があるのです」と氏。「私見では、VMwareの現在の地位は、製品そのものではなくネットワークの力によるものと考えています。VMwareは何年もかけて、上位レベルと下位レベル、両方のパートナーとエコシステムを築いてきました。これがVMwareという選択肢を有力なものにしているのです」
Forrester Researchが最近発表したレポートには、次のように書かれている。「あるVMwareの顧客は、現在のVMware製品の使用状況が新しいライセンスモデルと製品パッケージのどこに対応するかを踏まえると、価格が500%上昇することになりそうだと話している」。
Broadcomは値引き交渉に応じるのか
Shenoy氏によると、Broadcomは価格変更への対応に関して顧客に支援を提供しているという。その際、顧客の実際のニーズに合わせて段階的に対応する可能性も重視しているとした。
「当社はお客様とともに、ユースケースとその成果がどういう状況になっているかを正確に把握するため、成熟度モデルを作成し、評価を実施しています。そのうえで、お客様の目的を達成することを目指し、製品の導入や採用だけでなく、価格の観点からも段階的なアプローチを取っています」と氏。「当社はフルスタックへの移行に関してお客様が抱いている懸念を十分に理解しています。そのため、お客様が段階的なアプローチを取れるように支援します。その際は、各段階でお客様がITチームだけでなくCFOにもバリューを提示し、製品の利点や事業への恩恵を確保していただけるように取り組んでいます」
以前に競合他社がほのめかしたところによると、Broadcomは価格交渉、とりわけ大口顧客との交渉はいとわない姿勢だという。
ハイパーコンバージドインフラ(HCI)を提供する米NutanixのRajiv Ramaswami(ラジブ・ラマスワミ)CEOは、直近の決算説明会で次のように話している。「Broadcomはこれまでにも、価格やパッケージの変更について非常に柔軟な姿勢を見せています。特に、大口顧客を失いそうな場合や、市場や顧客基盤からの反発に対応する場合です」
Ramaswami氏はさらに、そうした反発があったことで、Broadcomはこの数か月間、自社が市場にもたらした変化にあくせく対応せざるを得なかったとも説明している。
「彼らは色々なことを試しました。その中には取り下げたものもあります。そうした領域については、競争環境がかなり動的に変化しています」
Chhabra氏も意見を述べている。Broadcomは実際、価格条件について、とりわけ他社に目を向けるかもしれない大口顧客に対しては、柔軟に対応する必要に迫られる一方で、パッケージ構成は変えないだろうというものだ。
「VMwareが柔軟に対応するとは思われない部分もあります。『お望みなら新しいバンドルを作りますよ』というような対応です。それはしないでしょう」と氏。「顧客の価格目標に合わせるのなら、割引をすればいいのです。それだけですから、パッケージ構成や、パッケージに含まれる製品構成をこれ以上変えることはないと思います」

電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime

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