クラウド市場の成長=Azure、GCPの伸びがAWSを上回る
来年は企業等によるクラウドへの支出が大盤振る舞いとなりそうだ。AI関連のニーズによって記録的な増加率となることが予測されており、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)などの大手ハイパースケーラーがこの波に乗ろうとしている。
調査会社Canalysによる最新レポートで、第3四半期、クラウドインフラへの世界の投資総額は前年同期比21%増の820億ドルに達したことがわかった。AWS、Microsoft、Googleの3社がそのうち64%を獲得している。Canalysによると、これは前年と同程度の水準だという。
成長率ではMicrosoftとGoogleがマーケットリーダーのAWSを上回る結果となった。Microsoftのクラウド事業の四半期売上高は前年同期比で3分の1の増加、Googleは36% 増となっている。AWSが報告したクラウド関連売上高の成長率は19%となっており、両社が大きく上回った。
とはいえ、AWSを気の毒に思うことでもない。これは同社の市場シェアが圧倒的に大きいためで、実際の増加額では負けていない。
Canalysのほか、他社のレポートでも同様の数字が発表されており、第3四半期のクラウド支出が堅調であったこと、収益の大半を大手が獲得したことが示されている。Canalysと他社が同じように指摘したのは、AI需要の影響が大きく、大手ハイパースケーラー各社がインフラ投資を増やしていること、その一方でそうしたインフラ投資の管理には慎重になっていることだ。
「多額の支出が続けば新たな課題が生じます。クラウドベンダーはAIに投資しつつも慎重にコストを管理しなくてはなりません。こうした取り組みに資金を投じる際には必要な事です」。Canalysのシニアディレクター、Rachel Brindley(レイチェル・ブリンドリー)氏が述べている。「AIにはぜひとも十分に投資して技術の発展に乗じた方がよいのですが、一方で、支出が過剰になったりリソース配分が非効率になったりしないように注意を払わなくてはなりません。長期的に持続可能な投資にしておくことは、長期的な財務の健全性や競争優位を保つために不可欠です」
米シナジーリサーチグループが最近発表したレポートによると、AWS、Microsoft、GCPの3社はデータセンターの拡張をどんどん進めている最中だという。容量ベースで2020年代の終わりまでに世界のデータセンターの3分の2近くを占めることになりそうだ。2017年の容量の8倍に達する見込みだという。
米ABIリサーチのレポートでは、AI需要による今回の設備投資ラッシュは「大規模/超大規模コロケーションデータセンター」の建設にも向かうと予測している。現在、これらの規模に該当する施設は世界のデータセンターの28%となっているが、この割合が「2030年には43%に拡大する」という。「AI/生成AIのワークロード処理など、大量のデータを消費する用途に対応できる、大規模データセンターの建設が進むため」だとした。
投資のバランスについてはハイパースケーラー各社も議論している。
Microsoftの直近の決算説明会では、Amy Hood(エイミー・フッド)CFO(最高財務責任者)が次のように話している。「当社では――このことについては数四半期にわたってお伝えしてきましたが――AI関連の容量に制約があります。(中略)リースした容量が追い付いていないため、サードパーティと契約を結びました。当社がAzure AIの需要に応えられるよう、Azureプラットフォームの拡張を喜んで支援していただけるパートナーです。また、先ほどお話ししたように、もっとバランスの取れた状態に戻せるように、かなりの投資をして構築を進めています」
AWSの第3四半期決算説明会では、Andy Jassy(アンディ・ジャシー)CEOが説明に立った。データセンターへの投資計画を進めるうえで、物流面でも乗り越えなくてはならない課題があると話している。
「考えてもみてください。当社は世界中に約35のリージョンを抱えています。各地域にあるリージョンにはそれぞれ多くのデータセンターがあり、それによって、おそらく130くらいの数のアベイラビリティーゾーン(AZ)を形成しています。こうした施設すべてに数千ものSKUを届ける必要があるわけです」と氏。「もし届いた数が少なすぎた場合、不足によって顧客へのサービスが停止してしまいます。ですので、多くの場合、足りないよりはと多すぎる状態にしがちです。そうすると今度は経済的に恐ろしく非効率になってしまいます」
クラウド市場は2025年に急成長の見込み
こうした微妙なかじ取りは来年にも続いていきそうだ。アナリスト予測では、クラウド需要およびクラウド支出は急拡大すると見込まれている。
米ガートナーによると、2024年のパブリッククラウドへの年間支出総額は19.2%増の5,950億ドル超となり、2025年はさらに21.5%増の7,230億ドル超に達するという。成長率としては同市場セグメントの新記録となる数字だ。
「ITや事業活動にAIを利用する動きが進む中、事業の成果を上げるうえでクラウドコンピューティングが担う役割は拡大の一途をたどっています」。バイスプレジデント・アナリストのSid Nag(シド・ナグ)氏が述べている。「クラウドのユースケースは引き続き広がりを見せています。分散環境やハイブリッド環境、クラウドネイティブ環境、マルチクラウド環境をクロスクラウドで実現する考え方が注目を集めており、これによって2025年のパブリッククラウドサービス市場は21.5%の成長を遂げることになるでしょう」
ガートナーは2027年までに企業等の90%がハイブリッドクラウドを採用するという予測もしている。そうなれば、ハイブリッド環境全体で生成AIのデータソースを連携できるかが課題になるとした。
電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime
電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime
JOIN NEWSME ニュースレター購読
KCMEの革新的な技術情報を随時発信
5G・IoT・クラウド・セキュリティ・AIなどの注目領域のコンテンツをお届けします。
KCME注目の技術領域に関するテックブログを配信しています。
KCME注目の技術領域に関するテックブログを配信しています。
RELATED ARTICLE 関連記事
-
人工知能(AI) StringerAI2025.01.24
DigitalOcean、先進的な生成AIプラットフォームを発表
クラウドサービスを提供する多国籍企業であるDigit…
-
人工知能(AI) StringerAI2025.01.22
Mimecast、AIマネジメントシステムのISO 42001認証を取得
電子メールおよびサイバーセキュリティサービスを提供す…
-
人工知能(AI) StringerAI2025.01.17
Persistent Systems、バイオメディカル研究を強化する「Pi-OmniKG」を発表
ソフトウェア開発やITサービスを提供するグローバル企…
-
人工知能(AI) StringerAI2025.01.16
SpacemiT、次世代AIアプリケーション向けのサーバーCPUチップ「V100」を開発
中国に本社を置くRISC-V AI CPU(新世代の…
HOT TAG 注目タグ
RANKING 閲覧ランキング
-
IT Dan Meyer
BroadcomによるVMware製品の価格/ライセンスの変更がどうなったか
-
ネットワーク Sean Michael Kerner
2024年における10のネットワーキング技術予測
-
IT Dan Meyer
ネットワーキング業界の混迷、顧客の懸念=HPEとジュニパー、シスコをめぐって
-
IT Dan Meyer
シスコが「堅調な」滑り出し=1Q決算、AIとSplunkが後押し
-
IT Dan Meyer
BroadcomがVMwareパートナープログラムの詳細を発表
-
セキュリティ Nancy Liu
SASE市場が急成長=第1四半期、首位はZscaler
-
スイッチング技術 Tobias Mann
コパッケージドオプティクスの実用化は何年も先=専門家談
-
IT Dan Meyer
米キーサイトがVIAVIのスパイレント買収に「待った」=15億ドルを提示
-
IT Dan Meyer
米BroadcomとAT&Tの対立が一旦緩和=VMwareをめぐって
-
セキュリティ Tobias Mann
米CitrixはMcAfee社、FireEye社と同じ運命を辿るのか=買収合併の後に