SAPが保有する米クアルトリクス（Qualtrics）株式4億2,300万株を売却する。米シルバーレイク（Silver Lake）、カナダ年金制度投資委員会（Canada Pension Plan Investment Board：CPP Investments）によるクアルトリクス買収を受けたものだ。SAPによると、ポートフォリオを合理化しクラウド事業の成長に集中する「戦略的な取組み」の一環だという。

クアルトリクスはユタ州に拠点を置くスタートアップで、エクスペリエンス マネジメント（XM）のためのクラウド型ソフトウェアをサブスクリプションで提供している。

買収価格は一株当たり18.15ドル（約2,381円）、総額77億ドル（約1兆100億円）で2023年下期の買収完了を予定しており、クアルトリクスの時価総額は125億ドル（約1兆6,400億円）となる。SAPは今年に入って従業員の2.5%削減を決定すると同時にクアルトリクス株式の売却計画を発表していた。

クアルトリクスの株価が急騰

売却計画の発表時点でクアルトリクスの株価は27%も急騰、買収が決まるとさらに6%以上上昇している。

「シルバーレイクには経営手腕に加えてソフトウェア企業関連の実績があり、クアルトリクスが自ら開拓したXM分野でリードを広げる助けとなってくれるでしょう」。SAPのChristian Klein（クリスチャン・クライン）CEOが述べている。「当社が2019年にクアルトリクスを買収して以来、クアルトリクスの売上は3倍になり、収益性を発揮し続けてきました」

SAPは2018年、クアルトリクスが株式公開に向けて動き出す直前に80億ドル（約1兆500億円）で買収している。SAPによる買収の後にクアルトリクスの共同創業者、Ryan Smith（ライアン・スミス）氏はNBAチームのユタ・ジャズ株の過半数を約17億ドル（約2,200億円）で取得、2021年にSAPが同社を上場させた際には個人として1億5,300万ドル（約200億円）の利益を得ている。

Smith氏は現在もクアルトリクス会長を務め2億ドル以上の株式を保有、シルバーレイクによる買収に際しても「非上場企業（となる同社）の大きな持分」を持ち続けると見られている。

Klein氏によると、SAPは「今後もクアルトリクスの親密な市場開拓・技術パートナーとして共同でお客様にサービスを提供し、同社の成功に貢献していく」意向だという。

SAPが目指すクラウドポートフォリオの合理化

SAPは今年3,000人の人員削減計画を発表した際、「社内の特定領域を対象とした構造改革プログラム」を実施すると述べている。

「当社が最も得意とする分野のポートフォリオにいっそう集中し、成長の勢いを維持していく計画です」。Klein氏は2022年第4四半期の決算説明会で述べている。

関連費用として2023年第1四半期に約3億ドル（約390億円）を計上、営業利益に影響する見込みだという。構造改革プログラムによって2023年には中程度の費用便益が、2024年以降は年間3億ドル以上のコスト削減が見込めるとした。

SAPは保有するクアルトリクス株の71%を手放すことで構造改革を進めるとともに、「2021年のIPOの際に定めた戦略を続行」すると述べている。

「当社としては、取引が実現すれば両社とその株主にとって大きな価値になり得ると考えています。SAPは中核となるクラウド事業の成長と収益性にさらに集中し、クアルトリクスは自ら開拓したXM分野でリーダーシップを拡大することになるでしょう」

SAP Follows Through on $7.7B Qualtrics Sale, Focuses on Cloud Growth