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文:Dan Meyer

米BroadcomのCEOによる、VMware買収後100日間のハイライト

米BroadcomのCEOによる、VMware買収後100日間のハイライト

米BroadcomがVMwareを買収してから100日余りが経過し、Hock Tan(ホック・タン)CEOがその間の歩みを紹介するブログ記事が公開された。「VMware Cloud Foundation」(VCF)は今後のイノベーションに向けたプラットフォームだと強調する一方で、ライセンスモデルの変更による問題がないわけではないことも認めている。

Tan氏は記事の中で、VCFの目的はエンタープライズネットワークの変革に纏わる課題を解決することだという考えを改めて示した。(テクノロジーの)複雑性がイノベーションの速度を遅らせてはいないか、必要なだけのレジリエンスとセキュリティを備えているか、開発者を集められる魅力のある環境かといった課題だ。

「VMware Cloud Foundationは、(中略)今後のイノベーションのためのプラットフォームです。私がお客様から直接伺った、最重要の優先事項として挙げられている、各種の事業上の成果を上げていただくためのソリュ―ションです」

エンタープライズ領域に対する意欲

Tan氏の説明によると、VCFは従来よりも統合性が向上し、異種のクラウドが混在する環境を管理する場合にさらに強力かつ使いやすいツールになっているという。

「VCFを利用すれば、スケーラビリティとアジリティに優れたパブリッククラウド、セキュリティやレジリエンスに優れたプライベートクラウドを組み合わせて、非常に効率的なクラウド運用モデルを実現できます。また、エンタープライズ領域の一般的なお客様の場合、増加の一途をたどっているパブリッククラウドのコストと比較して、所有コストを低く抑えて頂くこともできると考えています。さらに多くのお客様にVCFのメリットを享受していただくため、サブスクリプションの定価を従来の半額にするとともに、(選べる)サポートサービスのレベルを増やしました」

価格に触れている部分については、BroadcomがVMwareの買収を完了して早々、VCFを2つの主要製品に再編成したことが関係している(この件は議論を呼んでいる)。1つが従来のVCFからサブスクリプションの定価を半額にして上級レベルのサポートサービスを追加したもの、2つ目が新しくリリースした「VMware vSphere Foundation」(VVF)で、vSphereとインテリジェントな運用管理ツールのAriaを統合したパッケージとなっている。

こうした価格変更に加えて、従来のVMwareの永久ライセンスモデルを廃止、各種サービスの更新時に顧客をサブスクリプションベースの包括的なソフトウェアサービスに移行させる取り組みも行われている。「サポートおよびサブスクリプション」(SnS)の更新、ハイブリッド購入プログラム/サブスクリプション購入プログラム(HPP/SPP)のクレジットも終了している。

すでに永久ライセンスを利用している顧客は現在の条件を維持できるものの、(関連サービスの)期限を迎えた際に更新することはできない。

顧客よりも売上を重視していくのか

Tan氏は直近の決算説明会で投資家に対し、こうした変更が今後の売上増につながると話している。

「VMwareの売上高については、今年度の残りの期間を通じて、前四半期比で2桁の成長が続く見込みです。これは単純に、VMwareに関する当社の戦略の結果です」と氏。「顧客単価の向上、中でも現在すでに仮想化ツールのvSphereを使ってコンピュートワークロードを実行されているお客様に、VCFへのアップグレードをしていただくことに注力しています」

こうした戦略については痛烈な批判もなされており、アナリストらの指摘によれば、VMwareに大きく依存している多くのエンタープライズ企業が腹立たしく思っているという。

米調査会社フォレスターのプリンシパルアナリスト、Tracy Woo(トレイシー・ウー)氏がSDxCentralの取材で語ったところによると、VMware製品群に対して「SKU数が92から2になるほど」簡略化を図れば、たしかに速やかな売上創出という戦略を支えることにはなるが、そもそもVMwareがこれほど多くの選択肢を提供していたのは、幅広い顧客基盤に向けてさまざまな選択肢を利用できるようにしていたからだという。

「現在のところ、VMwareに関わることはお勧めしていません」と氏。「宙に浮いている要素が多すぎますし、私が聞いた話では、契約価格を引き上げて、『スタックから抜けようとおっしゃるならご自由に。でも、値上げ分を支払うより、その方がずっと高くつきますよ』というメッセージを送っているということです」

Tan氏のブログ記事では、こうした問題にそれとなく触れつつも、長期的には全員に利益があると主張している。

「もちろん、これほどの変更を実施したことで、お客様やパートナー各社が当然の不安を抱かれていることは承知しています。ですが、こうした活動はすべて、イノベーションを速め、お客様のニーズにさらに効果的に応え、当社との協業をしやすくすることを目的としたものです。また、パートナーの収益性や市場機会も拡大すると考えています」

Broadcomの売上高は急増も、投資家は感銘せず

論争をよそに、BroadcomはVMware事業が利益を押し上げたと報告している。

第1四半期売上高は前年同期比34%増の120億ドルとなった。大半がVMwareによるものだが、それ以外の事業も11%の成長を達成している。

Tan氏は以前、VMwareの統合には1年という期間と、「移行費用」として約10億ドルがかかるとした上で、翌年には500億ドルの売上高を創出できると述べていた。

業績は好調にもかかわらず、株価は決算発表の後に10%近く下落している。

Broadcom CEO highlights VMware’s first 100 days

Dan Meyer
Dan Meyer Executive Editor

電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime

Dan Meyer
Dan Meyer Executive Editor

電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
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