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文:Dan Meyer

米Nutanixの2Q決算=米VMwareから700社近くの顧客を奪う

米Nutanixの2Q決算=米VMwareから700社近くの顧客を奪う

HCI(ハイパーコンバージドインフラ)ベンダーのNutanixが第2四半期決算を発表した。VMwareから700社近くの顧客を奪い、予想を上回る業績を達成している。今後も好調を維持する見通しだ。

決算発表後のQ&Aセッションでは、CEORajiv Ramaswami(ラジブ・ラマスワミ)氏が新規顧客の獲得状況について語った。「当四半期はおおよそ700社」を獲得しており、「おそらく大半がVMwareの顧客」だと説明している。「これまでVMwareを利用していて、そこから移行したいというところがほとんどです」

Nutanixは前四半期にも新規顧客を630社獲得している。当時、「VMwareの顧客は不満を募らせており、(Nutanixへの)移行が着実に増えている」と株式調査会社ウィリアム・ブレアのレポートに書かれている。そこからさらに数を増やした形だ。

直近の第2四半期は予想を上回る業績となった。売上高は前年同期比16%増の65,500万ドル、純利益は70%増の5,640万ドルとなっている。

VMwareからの移行状況

Nutanixでは、他のベンダーとも協力して、VMwareに不満を抱える企業の移行促進計画をいくつか実施している。それぞれ、Amazon Web ServicesAWS)、シスコ、デル・テクノロジーズと協力して進めているものだ。

決算説明会でRamaswami氏が説明したところによると、AWSをベースに構築、提供している製品については、「VMware Cloud on AWS」からの移行先として、あるいはオンプレミス環境からAWSに移行する際の選択肢としても、「早くから支持を得ていたという。「(こうした移行は)ものの数か月で実施できます。クラウド製品からクラウド製品に移行するのであれば、たとえば、ハードウェアの更新をどうするのかといったことが問題になりません。気にかけなくていいことがあるのです」と語った。

シスコとの協業については、「新規顧客の獲得に大きく貢献した」と説明している。「過去数四半期にわたってそうした状況が続いていますが、当四半期は特に顕著でした」と語った。「今後もこのパートナーシップを拡大し、GTM戦略で緊密に連携していきたいと考えています」

デルとの協業による販売戦略も一部が始まっており、四半期業績に「わずかに貢献」したとしている。製品統合をさらに進め、春以降に順次投入できる見込みだとした。

Ramaswami氏が以前に説明していたところによると、こうした移行プロジェクトの中でも難易度が「低い」のは、顧客が現在vSphereを利用している場合だという。「顧客にハードウェアを交換する意思がありますから、移行は非常に簡単です。比較的小規模なものであれば、12か月で移行可能です」

そうしたケースについては、移行作業の多くを自動化してあるという。また、パブリッククラウド間の移行についても同じような期間で可能だとした。

一方で、複雑かつ大規模な移行には「何年もかかることもある」という。

「対極にあるのが、大規模な資産を抱え、さまざまなVMware製品を利用している大手企業の場合です」と氏。「一度には移行できないため、3年かかることもあります。複雑なカスタムスクリプトを書いていたり、VMware製品を使ったカスタマイズにも費用をかけていたりすると、プロの手を借りて変換する必要があります。こうした移行は複雑なものになりがちで、プロに依頼することになるため、数年かかる傾向にあります」

こうした顧客のケースについて、SDxCentralが以前に取材した米フォレスターリサーチのプリンシパルアナリスト、Naveen Chhabra(ナヴィーン・チャブラ)氏が見解を述べている。VMware製品は企業システムに深く根付いているため、複雑化していると顧客にとって大きな課題になると語った。

「クライアントと話をする時には、VMwareのハイパーバイザーを単に他社のハイパーバイザーに変更するというだけでも簡単にはいかないかもしれないとお話ししています。依存関係がありますから、エコシステムに影響があるのです」と氏。「私見ですが、VMwareの力は製品そのものではなく、ネットワーク効果にあるのだと思います。VMwareは何年もかけて、上位レベルと下位レベル、両方のパートナーとエコシステムを築いてきました。これがVMwareの提供する選択肢を力のあるものにしているのです」

Nutanixには堅調な流入が見込まれるのか

Ramaswami氏の話では、そうした企業はVMwareと複数年契約を結んでいてまだ契約期間を残しているところが多く、Nutanixにとって潜在顧客ではあるけれど、商機が訪れるのはまだ先のことになるという。また、「移行にはハードウェアの更新が必要になる場合が多く」、その点も商機がすぐにはやって来ない理由の1つになっている可能性も考えられるとした。

ウィリアム・ブレアのレポートには、「多くの顧客は相変わらず、即時に移行するのは運用上難しいという状況にある」と書かれている。頭を悩ませながら、Nutanixやレッドハット、マイクロソフト、Scale Computingといった「有力な代替先」に目を向けてはいるようだ。一方で、移行計画は数年がかりになる可能性もあるという。以前からVMware製品を利用している企業は、VMwareBroadcomに買収される前に延長契約を結んでいるか、買収後に比較的短期間の契約を結んでいるためだ。

ブルームバーグ・インテリジェンスで上級業界アナリストを務めるWoo Jin Ho(ウ・ジンホ)氏も同じ見解を述べている。SDxCentralの取材で語った。VMwareの買収完了に先立って、多くの大口顧客が早めに契約を更新していたという。「(CEOの)Hockの戦術については誰もが知っていましたし、(Broadcomに買収された)シマンテックがどうなったか、シマンテックとセキュリティ契約を結んでいた企業に何が起こったかも、皆が見ていました。そこで、(そうなる前に)3年から5年の契約を結んでおいたというわけです」

調査会社の間には、VMwareの長年のGTM戦略パートナーをBroadcomが締め付けているのではないかという懸念もある。Ramaswami氏はこの点でも自社に有利になるよう動いているようだ。

「その点については実際にあると思います」と氏。「当社の事業は、いずれも大いにパートナーコミュニティを通じて行われています。そのため、当社ではチャネルプログラムやインセンティブの強化を進めてきました。たとえば、新規顧客インセンティブを用意して、パートナーを通じて取引先を得られるようにしています。パートナーにとって新規の顧客でない場合でも、Nutanixにとって新しい顧客であれば対象です。当社はこのように、販売チャネルから見て協力するに値する企業であろうと懸命に取り組んできました。こうした取り組みは間違いなく役に立っています」

Broadcomに懸念はないのか

Broadcomとしては、VMware事業の経営をうまく行っているようだ。直近の四半期決算では、VMwareを擁するインフラソフトウェア事業が堅調な伸びを記録した。CEOHock Tan(ホック・タン)氏が説明したところによると、四半期受注もCPUコア数で2,100万個分を計上したという。前四半期には1,900万個分だったことから、受注も伸びていることがわかる。それ以上に重要なのが、新たに受注したコアのうち、70%が主力製品のVMware Cloud FoundationVCF)で使用されるものということだ。VCFは「データセンター全体を仮想化する」プラットフォームとなっている。

また、顧客の上位10,000社のうち、4,500社が既にVCFを契約しているという。VCFABV(年換算予約額、Annualized Booking Value)は27億ドルとなった。第2四半期決算の時点では、3,000社が契約に同意しており、ABV19億ドルと説明されていた。大幅に数字が伸びていることがわかる。

最近、BroadcomPrashanth Shenoy(プラシャント・シェノイ)氏がSDxCentralの取材を受けている。同社でクラウドプラットフォーム/インフラ/ソリューションのマーケティングを担当しているバイスプレジデントだ。VMware事業については、2025年を「加速・導入」の年と位置付けていると語った。製品と価格モデルを一新した慌ただしい2024年を経て、勢いに乗ろうとしている。

「昨年はきれいに整理をする年でした。市場投入ルートや提供サービス、製品を整理して、シンプルなものにしています。方向性を定めて信頼を構築し、製品構築を行いました」。VCFの進展について、このように話している。「今年はつつがなく導入ができるように、無事に利用できるように、高度なサービスがすべて確実に動くように、パートナー企業や市場投入ルートの態勢も万全にしていただけるように、といったことに取り組んでいく年になります」

Nutanix steals hundreds of VMware customers

Dan Meyer
Dan Meyer Executive Editor

電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime

Dan Meyer
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