ブロードコムのAI事業に商機=売上高でVMware基盤を大きく上回る

米ブロードコムが好調な業績を上げている。VMware事業がけん引役となっているほか、AI向けカスタム半導体設計の需要が伸び、並列処理を活用するAIネットワーキングの取り組みにも成功する勢いだ。
2024年第4四半期のAI関連売上高は、前年同期比220%増の122億ドルに達した。CEOのHock Tan(ホック・タン)氏によれば、伸びたのはカスタムAIアクセラレータとAIネットワーキング事業だという。四半期半導体売上高の41%をAI関連が占め、通期半導体売上高は過去最高の301億ドルに達した。
向こう数年間はAI関連が半導体事業の主力になる見込みだという。顧客のハイパースケーラー各社がAI向けのインフラに多額の投資を進め、ブロードコムのXPUアーキテクチャに大きく依存するためだとした。
「顧客のハイパースケーラーのうち、AI向けのXPUを独自に、複数世代にわたって展開するロードマップを定めているところが現在3社あります。ペースはさまざまですが、向こう3年で展開されることになります。各社とも、2027年にはファブリック全体に無数のXPUクラスタを展開する予定でいると考えています」
こうした影響もあり、ブロードコムのTAM(獲得可能な最大市場規模)は2027年までに最大で900億ドルに拡大するという。
「今後の状況としては、AI向けの半導体事業が急速に成長し、その他の半導体事業を追い抜いていくことになります」と語った。
株式調査会社ウィリアム・ブレアの調査レポートによると、ブロードコムは現在、Google、Meta、Bytedanceにカスタムチップを提供しているという。また、ハイパースケーラーの新規顧客を2社獲得し、検証を進めているところだとほのめかしたとした。ウィリアム・ブレアはこの2社をOpenAIとAppleではないかと考えている。
「ブロードコムがAIに関する顧客との協力について述べている内容は、総じて当社の主張を裏付けるものになっています。中でも、一部の投資家がスケーリング則や事前・事後学習に必要な計算リソースについて懸念されている一方で、最大手のハイパースケーラー各社が計画を変更する様子はないことが挙げられます。向こう数年間はAIクラスタのスケールアウトを継続するとみられます」と述べている。
他のアナリスト企業が提供するデータでも同じように活況が予想されている。多額のAI投資が今後も続くというものだ。
米シナジーリサーチグループが昨年発表したレポートには、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)が次々にデータセンターの拡張を進めていると書かれていた。3社が提供する容量は2020年代末までに2017年の8倍に拡大し、容量ベースで世界のデータセンターの3分の2近くを占める見込みだという。
米ABIリサーチのレポートでは、こうした設備投資ラッシュはAI需要に押されたもので、「大規模/超大規模コロケーションデータセンター」の建設にも資金が向かうと予想している。現在は世界のデータセンターの28%が大規模/超大規模施設に当たり、この数字が「2030年には43%に拡大する」とした。「AI/生成AIのワークロード処理など、大量のデータを消費する用途に対応できる大規模データセンターの建設が進むため」だとしている。
ブロードコムがAIネットワーキングを推進
AIが広く推進されるなか、ブロードコムのネットワークチップにも好機が訪れている。
第4四半期はAIネットワーキング事業の売上高が前年同期比158%増の成長を遂げ、ネットワーキング事業全体の76%を占めた。Tan氏によると、ハイパースケーラー向けの売上と「Tomahawk」「Jericho」が伸びたことによるもので、この2製品については次のバージョンの販売が始まればさらなる成長が見込まれるという。
新製品は3nmアーキテクチャで構築される。AIの波に乗り、AIチップ分野におけるネットワーキングチップの地位を倍ほども向上させるものになるとした。
VMware事業も好調―AIが続く
AIによって拡大の好機が訪れる以前から、ブロードコムではVMware事業にけん引されて急成長が続いている。
現在VMwareが含まれているソフトウェアインフラ事業の四半期売上高は、前年同期比196%の成長を示し、58億ドルとなった。前年同期はVMwareの買収が完了する前の最後の四半期に当たる。
Tan氏によると、直近の四半期にはCPUコア数で2,100万個分の受注を計上したという。前四半期には1,900万個だったことから、VMware事業が拡大していることがわかる。さらに重要なのが、新たに受注したコアの70%は主力製品のVCF(VMware Cloud Foundation)に使用するものだということだ。VCFは「データセンター全体を仮想化」するプラットフォームとなっている。
また、同四半期には顧客の上位10,000社のうち4,500社がVCFを契約し、VCFのABV(年換算予約額、Annualized Booking Value)は27億ドルとなった。第2四半期決算の際には覚悟を決めた顧客が3,000社、ABVが19億ドルと説明されていたことから、数字は大幅に改善している。

電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime

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