スイッチング技術
文:Tobias Mann

コパッケージドオプティクスの実用化は何年も先=専門家談

コパッケージドオプティクスの実用化は何年も先=専門家談

ここ数年、コパッケージドオプティクス(Co-Packaged Optics:CPO)と呼ばれるスイッチング技術への関心が高まっている。従来のスイッチやプラガブルシステムに比べて消費電力とコストの大幅な削減が見込める技術だ。今年後半には最初のCPOスイッチが発売される予定で、半導体メーカー各社はシリコンフォトニクス技術に数十億ドルを投資しているが、一方ですぐに競争力のある製品分野になると期待してはいけないという。米NVIDIAのネットワーキング担当SVP、Kevin Deierling氏が語った。

氏によると、CPOへの取り組みはこれまで驚くほど上手に、ほとんど無期限に先送りされてきたという。「これからはオンボード光モジュールに移行しなければならなくなると最初に耳にしたのは、リンク速度25 Gbpsが達成されたころだったと思います。その後50 Gbpsが実現、やがては112 Gbpsになりました」

Deierling氏のチームは3月下旬、51.2 Tbpsのスイッチプラットフォームを発表した。設置面積は1~2Uに収まり、最大で800 Gbpsポートを64個、あるいは400 Gbpsポートを128個搭載し、112 Gbps SerDesが使われている。

「さまざまな技術分野を組み合わせて、どうにか上手くやれているのです」と氏は言う。

Deierling氏は少なくとも近い未来にはこの状況が変わるとは思っていない。「難解なオンボード光学に頼らずとも、チップ接続で実現できる実に興味深い工学技術がたくさんあります」と付け加えた。

 

CPOの普及は必至

とはいえ、Deierling氏はCPOには未来がないと言っているわけではない。いずれはもはやオンボード光モジュールへの移行を避けることができなくなる時が来るだろうと氏は言う。「問題はそれがいつになるのかということです。率直に言って、(従来のスイッチング技術が今すぐに)終わるとは思えません」

CPOで解決できると見込まれている主な課題はポート性能ではなく、消費電力と放熱、ひいてはポート密度だ。

「私たちがCPOで解決しようとしているのは消費電力と密度です……(中略)……つまり、スイッチの前面パネルにプラガブルポートをいくつ作れるか、そのための消費電力はどのくらいかということです」。米調査会社Dell’Oro Groupのアナリスト、Sameh Boujelbene氏がSDxCentralの取材に対して語った。

氏によると、現在はCPOに適したビジネスケースは存在せず、銅線光モジュールのパワーエンベロープと放熱性能の方がまだ高いという。

「向こう数年の間は大規模展開・量産向けのCPOソリューション製品を持つのは時期尚早と言えるでしょう」とBoujelbene氏。また、51.2 Tbpsのスイッチや次世代の102.4 Tbpsスイッチさえも実現できるとしても、ベンダーがオンボード光モジュールに方向転換するとは考えにくいと付け加えた。

「CPOを利用するのが合理的だという状況を作るためには、消費電力を大幅に削減できなくてはなりません」と氏。

氏によると、業界の多くの企業はCPOに頼らずともポートあたり最大3.2 Tbpsのプラガブルオプティクスを提供できるという確信を持っているという。

CPOに関するDeierlings氏の実用主義は、概ねこの問題に帰着する。「コストパフォーマンスに優れ、電力効率が高く、大量生産が可能なものを構築することが肝要です」。氏は語った。

 

CPOの課題

しかし、CPOの課題は経済性だけにとどまらないとDeierling氏は言う。

非常に複雑な技術であり、どのメリットを実現するにも課題があるという。

「障害の影響範囲という観点では多くのマイナス面があります」と氏。「光学部品はシステムの中で最も信頼性の低い部品の一つです」

従来のスイッチ・プラガブルモジュールの組み合わせと比較して、CPOが持つ障害の恐れについて言及した。

氏の説明によると、現在では光モジュールが故障した場合にはスイッチの1ポートだけがダウンし、復帰させるのはモジュールを交換するのと同じくらい簡単だという。「オンボード光モジュールを使っている場合、故障のメカニズムによっては影響範囲の観点で良くないことが起きる可能性があります」

光トランシーバがチップに直接組み込まれているため、障害が発生すると複数のポートをだめにする可能性があるのだ。スイッチ全体を破壊する可能性もあるという。

 

半導体メーカー各社、CPOに巨額の投資

こうした課題がありつつも、半導体メーカー各社はCPOやシリコンフォトニクス技術に数十億ドルを投資している。

昨年後半、インテルラボは電気の代わりに光を利用した従来よりも高速かつ効率的なコンピュータインターフェースの実現を目指し、新しい研究センターの設立を発表した。米Marvellは米半導体Inphiを100億ドルで買収している。

Inphi社はクラウドデータセンターで一般的に使用されている光−電気(OE)相互接続を専門としており、最大800Gb/秒のスループットを提供することができる。2021年早期にネットワーク大手のシスコと提携、51.2 TbpsのCPOスイッチの開発を進めており、2024年早期に発売する予定だ。

その数週間後、米Broadcomが同社初のCPOスイッチ「Humboldt」を発表。25.6 TbpsのスイッチASIC「Tomahawk 4」と光インターコネクト技術を統合した製品となっている。同スイッチは2022年にリリース、2023年には51.2 Tbpsのスイッチが登場する予定だという。

すぐに競争力を発揮できそうもない技術になぜこれほど多額の投資をするのだろうか? Boujelbene氏によると、CPOは難しい技術だからだという。

「業界がCPOをこれほど話題にするのは、学習曲線が非常に急勾配だからです。解決しなければならないことがたくさんあります……(中略)……そして、いつかはCPOに移行しなければならないと皆分かっているのです」

https://www.sdxcentral.com/articles/interview/co-packaged-optics-years-from-practicality-experts-say/2022/03/

Tobias Mann
Tobias Mann Editor

SDxCentral 編集者。
SD-WAN、SASE、半導体業界を担当している。
連絡先: tmann@sdxcentral.com

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