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文:Tommy Clift

米クアルコムと米イリジウムが提携、衛星テキストメッセージサービス提供へ

米クアルコムと米イリジウムが提携、衛星テキストメッセージサービス提供へ

半導体大手の米クアルコム・テクノロジーズ(Qualcomm Technologies)と衛星通信の米イリジウム・コミュニケーションズ(Iridium Communications)が協業を発表した。クアルコムのスマートフォン向けチップセット「Snapdragon」でイリジウムの衛星コンステレーション(イリジウム衛星と呼ばれる)に接続できるようにする計画だ。

今年の秋か冬には「Snapdragon 8 Gen 2」を搭載したスマートフォン端末であればイリジウム衛星を利用したテキストメッセージサービスが利用可能になるという。クアルコムの製品管理担当バイスプレジデント、フランチェスコ・グリリ(Francesco Grilli)氏が記者会見で説明した。

説明によると、イリジウム衛星では66基の衛星を6つの「プレーン」に分けて南北軌道に配置、主衛星のいずれかが故障した場合に備えて「予備」衛星も軌道上に9基用意しているという。これによって実質的に地球全体をカバーしているものの、同サービスで可能になるのは緊急時のメッセージ送受信に限られるとした。一部、提携先の携帯電話事業者やOTT(オーバー・ザ・トップ)事業者が定める規定に基づいた「有料プレミアムメッセージング」が可能な場合もあるという。

グリリ氏によると、同テキストサービスはGSMのSMS規格と似たものになるが、「方式」と「プロトコル」が異なり、送受信両方にTDD(時分割複信)とLバンドを使用するという。「衛星コンステレーション専用の帯域は5Gネットワーク専用の帯域と互換性がありません。そのため、あえてこの周波数帯で5Gを利用したとしても、少なくとも現段階ではあまり意味がないでしょう」

 

提携の2つの側面

イリジウムの営業・マーケティング担当エグゼクティブバイスプレジデント、ブライアン・ハーティン(Bryan Hartin)氏によると、両社は2つの契約を結んだという。1つは「Snapdragonでの衛星接続を可能にする開発に関する協力契約」、もう1つはサービス事業者契約だ。

後者ではクアルコムがサービス提供を引き受け、OEMメーカーや今後契約する通信サービス事業者と協力してさまざまな機種のスマートフォンにイリジウム衛星との接続機能を搭載させていく。「8社とそれぞれ契約してテスト工程を実施しようとすると非常に複雑なことになりますので、合理化しようという試みです」とグリリ氏。認証プロセスはすべてクアルコムを介して行われると続けた。

通信機器メーカーにとっては、このプロセスはクアルコムから新機能を購入するのと大差ないものになるという。「この新機能ではいくらか追加でRF試験(無線試験)が必要になるというだけです。新しい無線周波数帯ですから。…(中略)…他の地上通信事業者がすでに対応している帯域ではありません。そのため、端末が実際にこの周波数帯を念頭に置いて作られたものでない限り、無線によるソフトウェアアップグレードでこの機能を有効にすることはできません。…(中略)…とはいえ、OEMメーカーからすればとても分かりやすいでしょう。既に設計を始めているところも数社あります」

 

空に手を伸ばして

グリリ氏は事前説明会で次のような発言をしている。「ご質問は携帯電話を空に向ける必要があるかということですか? うーん、イエスでもありノーでもあります」。

説明によると、携帯電話はそれぞれが衛星をリアルタイムで追跡し(誤差はわずか数km)、内蔵センサーで自機の向きをモニターできるという。これによって端末が「実際に正しい方向を向いているかどうか」を判断することが可能だ。「正しくない場合には、基本的にはユーザーが向きを変えるように促されます。状況によっては(まれに)頭上に携帯電話を持ち上げるように求められることもあるかもしれません」

アップルが提供する最新機種iPhone 14を使った緊急SOSサービスと似た方向性だ。

グリリ氏によると、クアルコムとイリジウムによるシステムでは3秒から10秒の間にテキストメッセージ全体を送受信することができるという。通信サービス事業者とOTT事業者のどちらを利用しているかは問わない。

発表ではどこでも接続が可能と謳ってはいるものの、まずは世界のあらゆる場所で基本的なメッセージングを可能にすることを目指している、とグリル氏は何度も繰り返した。高度なサービスを提供できるNTN(非地上系ネットワーク)の構築には「かなりの時間がかかる」としており、これについては衛星企業の米リンク(Lynk)COO(最高執行責任者)、ダニエル・ドゥーリー(Daniel Dooley)氏も同じ意見を持っている。

Qualcomm, Iridium Connect for Satellite Text Service

Tommy Clift
Tommy Clift Reporter

Tommy Clift is a Reporter at SDxCentral covering telecom technology and services, rural carriers, broadband access, and diversity and inclusion. He is a graduate from from Colorado University Denver with a degree in music business and a minor in film writing. Tommy’s writing background comes from working in diversity and inclusion, news and arts reporting, grant writing, scriptwriting, as well as artist-collective journalism and event curating. He can be reached via email at tclift@sdxcentral.com.

Tommy Clift
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Tommy Clift is a Reporter at SDxCentral covering telecom technology and services, rural carriers, broadband access, and diversity and inclusion. He is a graduate from from Colorado University Denver with a degree in music business and a minor in film writing. Tommy’s writing background comes from working in diversity and inclusion, news and arts reporting, grant writing, scriptwriting, as well as artist-collective journalism and event curating. He can be reached via email at tclift@sdxcentral.com.

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