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文:Emma Chervek

BroadcomのVMware買収による意外な影響=どう備えるか

BroadcomのVMware買収による意外な影響=どう備えるか

米Broadcomによる米VMwareの買収が11月に完了し、ユーザーやエコシステムのパートナーには意外な影響がありそうだ――ある程度予想されていたものと、そうでないものがある。

買収が完了する以前から、VMwareの顧客は価格設定や製品計画、販売リソースやサポートがどうなるのかを懸念していた。その後、Broadcomは第1四半期のうちにVMwareの従業員のレイオフ、製品バンドルの構成変更、販売チャネル契約の解除に着手している。

VMwareの競合でハイパーコンバージドインフラ(HCI)を提供する米Nutanixは、この機に乗じる考えを以前から表明していた。現在は、VMwareの顧客から「Broadcomによる変更から受ける影響を最小限に抑える」ためのアドバイスを求める問い合わせが来ているという。製品・ソリューションマーケティング担当SVPのLee Caswell(リー・キャズウェル)氏が同社のブログで述べている。

Broadcomの計画は今後3年間でVMwareの利益率をほぼ2倍にするというもので、これに沿って速やかに変更を進めている。顧客は請求額の増加、ストレージへの投資の回収期間の長期化、チャネルパートナーやハードウェアベンダーへの投資の削減に驚かされることになるかもしれない。

VMwareサービスの価格上昇

Caswell氏の予想では、買収が完了した以上、VMwareの顧客の大半がこれまでと同じサービスにこれまでより多くの金額を支払わなければならなくなるという。

「Broadcomは値上げには力を入れないと言っていますが、新たなバンドル戦略ではほとんどの顧客に対して実質的な値上げをするだろうと考えています」と氏。

例えば「vSphere Enterprise Plus」だ。この製品は現在、(米国では)vSANおよびvRealizeライセンスとのバンドルでしか入手できず、vSphereの顧客、特にHCIを運用していない顧客の支払うコストは2~3倍に膨らむ可能性がある。

さらに、SANやNASといったレガシー技術への投資回収期間も買収によって長くなるという。従来型のストレージ技術への投資判断は一般に、物理サーバーから仮想サーバーへの移行による統合メリットと、ハイパーバイザーのコストを根拠に行われている。

ところがvSphereのコストの上昇が予想されるため、後で驚きたくなければ、vSphereの変更を反映した最新のTCO(総所有コスト)・ROI(費用対効果)を自社のストレージハードウェアベンダーに問い合わせた方が良い、と氏は述べている。

バンドル構成の変更によってデータ処理ユニット(DPU)の採用も遅れる可能性がある。「vSphere Enterprise Plusのようなバンドル変更および実質的な値上げが、もっと複雑なDPU環境にも広がるようであれば、NvidiaやHPE、Intelが提供するSmartNICやDPUの顧客側の採用計画も減速するかもしれません」

VMwareへの投資は減少へ

Broadcomが公開しているVMwareに関する計画の主な内容の1つに、売上高上位2,000社の顧客については直接販売に移行、サードパーティのVMwareサービスのリセラーとその取り分をなくすというものがある。

VMwareが最近達成した数字では、アクティブなリセラーパートナーが65,000社、クラウド/マネージドサービスプロバイダーが4,500社となっている。これを基に計算すると、推定6億5,000万ドルのチャネルマージンが廃止されることになる。これをきっかけに、各チャネルで提供されるVMwareのインストール/サポートサービスのリソースが減少していくことになりそうだ。

こうしたことから、Caswell氏はチャネルパートナー各社がVMwareへの投資額を減らすと予想している。

後味の悪さ

氏によると、VMwareと長年提携してきた大手ハードウェアベンダーのDell Technologies、HPE、Lenovoも同様にVMwareへの投資額を減らし、同社との関係を縮小する可能性があるという。

チャネルパートナー契約はパートナー側がまず履行、販売したソリューションの総額に基づいて利益を得るのが一般的だ。このため、「(ハードウェアシステムベンダーが)VMware製品の販売を促進すれば、チャネルパートナーを遠ざけるリスクを負う」ことになる、と氏は言う。DellやHPE、Lenovoは「(Broadcom VMwareの代わりとなる)もっとチャネルパートナーに優しい選択肢を探すかもしれません」と述べている。

具体的には、DellがHCIプラットフォーム「VxRail」のストレージをVMware vSANから自社製仮想ストレージ「ScaleIO」に変更すると予測している――HCIにはvSANの方が適しているにもかかわらずだ。「Broadcomが直接販売の方針を取るなら、VxRailを販売するにはDellとBroadcomの共同販売、共有アカウントの管理が必要になりそうです。このため、DellはvSANの代わりにScaleIOで代用しようとするかもしれないと考えています」

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Emma Chervek
Emma Chervek Reporter

SDxCentral のレポーター。
データセンターのテクノロジーとビジネス ケース、環境の持続可能性、クラウドネイティブ エコシステムを担当。
エマは愛犬コビーとデンバーに住み、世界一の散歩を一緒に楽しんでいる。
連絡先:echervek@sdxcentral.com
X:@emmachervek

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