セキュリティ
文:Nancy Liu

VMwareを買収、BroadcomはシングルベンダーSASE市場に強力に参入できるのか

VMwareを買収、BroadcomはシングルベンダーSASE市場に強力に参入できるのか

VMware(ヴイエムウェア)の買収が実現すれば、米Broadcom(ブロードコム)は傘下のSymantec(シマンテック)のセキュリティポートフォリオとVMwareのSD-WAN機能を融合する機会を得ることになる。

Symantec、VMware SD-WANおよびVMware傘下のCarbon Blackが保有するセキュリティ機能の一部を統合することで、Broadcomはシングルベンダーのセキュアアクセスサービスエッジ(SASE)市場に参入し、うまくすればSASE市場での総合シェアと収益を拡大できる可能性がある。

Broadcomが現在提供しているSymantecのSASEおよびセキュリティサービスエッジ (SSE)ポートフォリオには、セキュアWebゲートウェイ(SWG)、DLP(情報漏えい対策)、クラウドアクセスセキュリティブローカー(CASB)、ゼロトラストネットワークアクセス(ZTNA)、SSLインスペクション 、Web分離などのコンポーネントが含まれる。

同社は、「SymantecのWebセキュリティソリューションとの相互運用が確認された、業界をリードする SD-WAN 製品とネットワークサービス」と統合することで、SD-WAN のパートナーエコシステムを構築します」と主張している。

米調査会社Dell’Oro Group(デローログループ)のエンタープライズネットワーキングおよびセキュリティ市場担当シニアリサーチディレクター、Mauricio Sanchez(マウリシオ・サンチェス)氏は、「Broadcom はVMware(SD-WAN)を選択し、Symantec製品と組み合わせてシングルベンダー市場の機会を狙う可能性があります」とSDxCentral に語った。

SSEとセキュリティの面では、買収が成功裡に完了すれば、Broadcomはさらに統合作業を進める必要がある。「Symantec製品と(VMware傘下の)Carbon Black製品の間にはかなりの重複があり、それを調整する必要があります」とSanchez氏は付け加えた。「VMwareの(SD-WAN)チームがSSE機能を慎重に追加した一方で、Symantecはより強力で成熟した技術ポートフォリオをもたらしています」

01BroadcomとVMwareの契約に懸念=単一のSASEへの統合に黄信号か

この取引をめぐっては多くの疑問や憶測があり、SASEの統合はことによると期待通りにいかないかもしれない。

取引は現在保留中で今会計年度末の10月末までに完了する予定だ。Broadcomは、買収が完了すればVMware事業に年間20億ドルを投資する計画だとしている。

フリーキャッシュフローを獲得するために、BroadcomはVMwareの一部事業を売却する可能性があり、複数のアナリストは 同社のCarbon Blackセキュリティ事業が脆弱であると指摘している。

一方、アナリストらはこの690億ドルの買収が発表されて以来、この問題について警告を発してきた。

「被買収企業にとって、ブロードコムによる買収は、価格の引き上げ、サポートの低下、技術革新の阻害に対する恐怖を呼び起こすものです」と米フォレスター・リサーチ(Forrester Research)のシニアアナリスト、Tracy Woo(トレイシー・ウー)氏はレポートに書いている。

Woo氏は、買収が完了した場合の今後の慎重な道筋として、ブロードコムの過去の買収「戦略」を挙げた。彼女は特に、2018年後半にBroadcomが189億ドルでCA Technologiesを買収し、その後 2019年に107億ドルでSymantecを買収したことを指摘した。

以下の疑問にまだ答えは出ていない。BroadcomのSymantec製品は、VMwareのSD-WAN機能と組み合わされ、シングルベンダーのSASEソリューションを生み出すのだろうか?

 

02Broadcom が SASE の収益で第 4 位にランクイン

Dell’Oro Groupが発表した 2023年第2四半期の「SASE & SD-WAN Quarterly Reports」(SASE および SD-WAN 四半期レポート)によると、Broadcom(Symantec)が SASE 全体の売上シェアで第 4位にランクインした。上位5社で市場の60%近くを占め、Cisco(17.3%)とZscaler(17%)が僅差で首位を争っている。Sanchez氏によると、Symantecのシェアは8%に後退し、Fortinetが6%で続いた。

また、同社のレポートによると、第2四半期のSASE市場の売上は前年同期比で38%増加し、四半期売上は20億ドルを超えて四半期新記録を樹立した。

 

03VMwareのシングルベンダーSASEの強力な立ち位置

VMwareは、米調査会社ガートナー(Gartner)が初めて発表したシングルベンダーSASEのMagic Quadrant(マジック・クアドラント)にランクインした8社のベンダーのうちの1社だ。同社は、VMwareを「特定市場指向型 」(Niche Player)と位置付けている。

Gartnerはレポートの中で、VMware SASEはこの市場において強力なSD-WAN機能とコスト効率の良い価格設定を提供しているが、SaaS(Software-as-a-Service)のコントロールや可視性、データセキュリティなどのセキュリティ機能では遅れをとっていると指摘している。

同社はまた、2022 SD-WAN マジック・クアドラントレポートで、Cisco、Fortinet、Palo Alto Networks、Hewlett Packard Enterprise(HPE)、Aruba、Versa Networks(いずれも米)とともにVMware をマーケットの「リーダー」に選んだ。

一方、Forresterも、2023年第3四半期のゼロトラストエッジソリューションの「Wave」レポートで、VMware SASEをストロングパフォーマーのカテゴリーに分類している。

同社は、レポートに登場した他のベンダーが主にネットワークやセキュリティ分野で生まれたのとは異なり、VMware は仮想サーバー市場から参入したため、独自の利点があると指摘した。

「VMware は、Ananda Networks、Nyansa、VeloCloud(いずれも米)を買収したことで、モバイルワーカー、リモートオフィス、クラウドプラットフォーム内の仮想領域にわたる接続問題を解決する戦略的な地位を獲得しました」とレポートには書かれている。

しかし、Forresterのアナリストは、統一されたSASEソリューションになるための障壁として、その複雑なビジョンと単一の管理システムの欠如について警告している。

 

04シングルベンダー SASE 市場の可能性

Dell’Oro Groupの最新レポートでは、BroadcomもVMware もシングルベンダーSASEベンダー(SD-WANとSSEの両方を提供するベンダー)の上位 5 社にはランクインしていない。上位のベンダーは Cisco、Palo Alto Networks、Fortinet、Netskope、Versa Networks(いずれも米)であった。

また、同レポートによると、シングルベンダーのSSEの売上は前年比で70%近く増加し、SASE市場の半分以上を占めている。

「マジック・クアドラントレポート」の中で、Gartnerのアナリストは、2025年までにベンダーの数が2023年半ばと比較して50%以上急増、今後1年半の間に5~10社のベンダーが新たに市場に参入すると予測している。

Will VMware acquisition give Broadcom a strong entry into single-vendor SASE?

 

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Nancy Liu
Nancy Liu Editor

SDxCentralの編集者。
サイバーセキュリティ、量子コンピューティング、ネットワーキング、およびクラウドネイティブ技術を担当している。
バイリンガルのコミュニケーション専門家兼ジャーナリストで、光情報科学技術の工学学士号と応用コミュニケーションの理学修士号を取得している。
10年近くにわたり、紙媒体やオンライン媒体での取材、調査、編成、編集に携わる。
連絡先:nliu@sdxcentral.com

Nancy Liu
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