2023年 ITネットワークのトレンドTOP10 現時点
国際的な調査会社である米Forrester Researchによると、2023年のITネットワーク分野は、多くの重要な傾向が広く見られるという。
同社の最近のレポートでは、ネットワーク技術のトップトレンドについて概説している。大まかにいうと、従来のネットワークのインフラとスキルセットを根底から覆す3つの主要なトレンドがある。仮想化、クラウドコンピューティング、IoT(モノのインターネット)は、Forresterが「大規模な変化」と表現しているように、ネットワークの設計、構築、保守に影響を及ぼしている。
従来型のネットワーク主要企業は、ビジネス上のニーズが新たな形で市場を牽引する中、もはや方向性を決める役柄ではなくなっている、と報告書は述べている。差別化が難しくなり、起業家たちが専門的な接続ソリューションを次々と生み出す中、大手ネットワークベンダーはリーダー的な役割を持たなくなっているのだ。この状況により、ネットワークの専門家たちは、新たな選択肢を自ら模索する必要に迫られている。
レポートの共同執筆者であるForresterのアナリスト、Andre Kindness氏にとって、レポートから得た最大の驚きは、SaaS(Software-as-a-Service)ベースのネットワークソリューションがどれほど普及しているかということだ。
「SaaSベースのネットワークソリューションは、5年前に業界でホワイトボックススイッチのブームが起きた時とは正反対の結果になっています」とKindness氏はSDxCentralに語った。
氏は、ホワイトボックスのスイッチングについて、ロックインされないこと、ハードウェアとソフトウェアを分離することについて多くの議論があったとコメントした。しかし、SaaSベースのソリューションでは顧客がネットワーク・ハードウェア、ファームウェア、管理システム、モニタリング機能まですべてを購入しなければならない。企業等の組織が、最善の製品を選んだり組み合わせたりすることはできない。ホワイトボックススイッチの背景にある考え方はそういうものだった。
「お客様は1つのベンダーのフルスタック・ソリューションを購入するのだから、オープンスタンダードよりもシンプルで使いやすいものを求めていたのです」と氏は述べた。
2023年現在までのITネットワーク・トレンドTOP10
Forresterの調査によると、2023年のトレンドTOP10は以下の通りだ。
1. ゼロトラストエッジ(ZTE)の成長
ZTEアーキテクチャは、WAN 接続とセキュリティ機能を、クラウド管理コントロールと監視を使用した、クラウドで提供・管理されるシステムに統合するものだ。Forresterによると、多くのベンダーがセキュアな WANファブリックのサポートを提供しているにもかかわらず、同技術がほとんどの企業でその潜在能力をフルに発揮するのは5年以上先になる可能性があるという。一方で、早期に導入した企業は、多数の小規模な拠点に分散し、簡単に複製可能なネットワークの恩恵をすでに得ている。
2. 個々の業界における5GとBON活用
様々な分野でスマート・テクノロジーが台頭し、ネットワーク構築においてあらゆるデバイスに同一の技術を使用するという、従来の「ホワイトボックス」的なアプローチは困難になりつつある。現在、デバイスの要件はユースケース、業界、企業によって大きく異なり、例えばIoTセンサーやコントローラーでは、特殊なハードウェアやプロトコルが必要となる。こうした分野ごとの専門特化によって、5GとBON(Business Optimized Networking、ビジネス最適化ネットワーク)の両方が推進され、主要な事業構想の実現と事業の真の差別化を目指した特化型のネットワーキングソリューションが提供されている。
3. 新たなネットワーク要件を推進するエッジコンピューティング
エッジコンピューティングは、エンタープライズ領域、運用、エンゲージメント、通信事業者という4つのエッジでネットワーク要件に革命をもたらし、アプリケーションデータとサービスの最適な配置によって成果を上げている。すべてのエッジにわたるサービスを提供できる単一のベンダーは存在しないため、ネットワーク戦略は、この複雑で細分化された環境を反映して進化を続けている。
4. 従来のネットワーク市場リーダーの影響力の低下
Kindness 氏は、市場はもはや総括的なネットワーキングソリューションが使える一般的な客層の集まりではないと指摘した。 「他の産業でもそうであるように、どんな企業もあらゆる市場に対応する製品を作ることはできません」と氏は言う。 「最終的にベンダーはどの分野を追求するか、どの収益源をあきらめるかを決めなければならないでしょう。そうすれば、BONを支えるイノベーションの創出に集中できるようになります」
5. コードとしてのインフラストラクチャーの利用が増加
「好むと好まざるとにかかわらず、ネットワーキングの世界はハードウェア中心からソフトウェアとハードウェアの組み合わせへとシフトしています」とKindness氏は言う。ネットワーキングの専門家は、あらゆるレベルで標準的なソフトウェア・インターフェースを備えたソリューションを指定、取得、構築できるよう、コーディング言語を知っておく必要がある。
6. NaaS(Networking-as-a-Service) モデルをめぐる混乱
この1年半の間、ForresterはOE(Original Equipment、相手先商標製品)ベンダーやNetwork-as-a-Serviceを推進する通信プロバイダーの説明会に数多く参加してきたとKindness氏は言う。ベンダーは、顧客が契約するインフラの容量や実際の使用量に基づいて料金を請求する。ベンダー各社はこの概念を推進しているが、Forresterは民間企業や公共部門の顧客から問い合わせを受けていないと指摘した。この関心の低さは、おそらくNaaS全体に対する混乱から来るものだろう。「サービスやハードウェアが実際に消費ベースのモデルに移行し、業界が定義について合意するまでは、Forresterとしてはこの分野に大きな動きはないと見ています」と氏は述べた。
7. SaaSベースのソリューションによるネットワーク自動化の加速
SaaS(Software as a Service)ベースのネットワーキング・ソフトウェアへの移行は、複雑さとリソース需要という以前の課題にもかかわらず、ネットワークの自動化を加速している。導入期間を短縮した従量課金モデルへの移行は、すべてのネットワークベンダーが採用しており、近い将来、SaaSベースのソリューションがオンプレミスツールを上回ることになるだろう。
8. WANの課題を解決するためのゼロトラストとマルチクラウドネットワーキングの利用
ビジネスエッジのデジタル化とマルチクラウド環境の台頭により、ゼロトラストのマルチクラウドネットワーキング(MCN)ソリューションを組み込んだ、可用性の高い自動化されたネットワークへのニーズが高まっている。企業が複数種類のクラウドを導入する傾向が強まる中、戦略はプライベート・クラウド、パブリック・クラウド、リモート・オフィスに至るまで、1つのネットワーク基盤でビジネス全体をカバーする方向へと収束しつつある。
9. 地球低軌道(LEO)接続の可能性
150万以上の加入者を抱える「Starlink」(スターリンク)のような低軌道(LEO)衛星コンステレーションは、遠隔地に高速ブロードバンド接続を提供し、IoT、海上・航空輸送、衛星画像などのユースケースを拡大する準備が整っている。より広範囲をカバーし、より低遅延で、より競争力のある価格が約束されているにもかかわらず、LEO市場は商業的実現可能性、規制リスク、技術的複雑性などの課題に依然として直面している。
10. 次世代ネットワークにおける人工知能(AI)、自動化、マネージド・サービスの活用
AI と自動化により、ネットワークはよりインテリジェントでプロアクティブなものとなり、マネージドサービスプロバイダーはAIをIT運用に活かし(AIOps)、自動設定、予測モニタリング、プロアクティブな対応を特徴とする自律的なネットワークを実現している。
Top 10 trends in IT networking for 2023 (so far)
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