RANや5Gの運用を妨げている、5つの要因
通信業界では、RANからエッジ、コアに至るまで、エンドツーエンドでネットワークとサービスの運用を統合する取り組みへの関心が高くなっている。5G以降の無線通信システムに適した最新のクラウド基盤を提供しやすくするためだ。期待できるメリットとしては、ネットワークのアジリティや運用効率の向上、コスト(設備投資および運用コスト)の削減、新しい収益源の創出がある。通信サービスプロバイダー(CSP)の意欲は高いが、目標の達成までには壁もいくつか立ちはだかっている。以下のような要素だ。
01ツールのサイロ
今日のネットワークは何世代もかけて進化してきたものだ。そのため、分散した領域の間で運用を統合しようとする取り組みを進めると、技術のサイロという試練に遭うことが多い。例えば、RANの一部のエリアに最適化したツールが、他のエリアにある重要な情報へのアクセスを拒否されることがある。CSPがネットワーク全体で5GやAIによる新たな機能を取り入れる際には、さまざまなツールが混在しているところにさらに多くのツールが導入され、全く異なるサイロやツール、プロセスがさらに入り交じることになる。
02マルチベンダー環境の運用
多くのCSPが現在、ネットワーク運用の自動化に取り組んでいる。しかし、昨今のネットワークには複数のベンダーによるソリューションとツールが使われ、環境が複雑化していることが妨げになっている。1つか2つのサイロを自動化したところで、異なるツールを使った異なるアプローチが混在したままなので、問題の解決にはならない。少しばかりのネットワーク機能についてライフサイクル管理を自動化したところで、明らかな恩恵は得られない。必要なのは、ベンダーやネットワークの領域を問わない、大規模かつ統一的な自動化を行うことだ。
03大量のアラームと、可視性の欠如(=解決に時間がかかる)
多くのサイロに分かれ、使用しているツールやベンダー、クラウド、デバイス、データも多岐にわたるとなれば、アラームが手に負えない数になっているのも無理はない。以前は5つのアラームへの対応に追われていた管理者も、今では1件のイベントで500個ものアラームが発生するのを目にしているのではないだろうか。あるNOCでは、最近、1つの基地局への電力供給が停止したことで、一挙に2,000個のアラームが発生したという。こうした状況が解決までの時間を長引かせている。ネットワーク運用チームは、何が起こっているかを突き止めるため、さまざまなシステムのログを何時間もかけて調査する。そうする代わりに、自動で速やかに収集と関連づけを行い、根本原因を検出して迅速に解決できる方法が求められている。
RANはもちろん、広くはエンドツーエンドのネットワーク全体の中でも最大の課題は、ことによると、全ての分析を1か所にまとめることかもしれない。通信事業者が抱える優秀な頭脳は、(ネットワークという)干し草の山から(根本原因という)針を探し出すという芸当をこなし、統合ツールや自動化が不足している中でもどうにかすべてを機能させている。とはいえ、それには果敢な奮闘と長時間の作業が必要になることも多い。こうした大規模で多角的なネットワークは非常に多くのコンポーネントとシステムから成り、無数のユーザーやデバイスと接続しているためだ。
04セキュリティ要件、プライバシー要件の複雑化
コンサルティング大手のErnst & Young(アーンスト・アンド・ヤング)は、CSPの技術的進歩を阻害している主な要因として、セキュリティ要件とプライバシー要件が複雑になっていることを挙げている。
「2024年に通信会社が直面する最大のリスクとして浮上しているのが、プライバシー、セキュリティ、信頼に関する必須要件の変化です」。同社でグローバルインダストリーマーケット・メディアリレーションズ部門を率いるMichael Curtis(マイケル・カーティス)氏が述べている。「当社の年次レポートでは、通信分野のリスク上位10個に入っています。生成AIが既存のデータガバナンス戦略に疑問を投げかけるなか、サイバーレジリエンス向上へのプレッシャーが高まっている状況です」
たとえば、調査に回答した通信事業者のうち、「悪質な行為者」がサイバー攻撃などの悪意のある活動にAIを利用する可能性に備えて、緩和策を強化する必要がある、と答えた事業者は74%に上る。また、世界中でプライバシー規制の制定が進められており、AIに対する懸念もあって、CSPが遵守しなければならないルールはさらに増えている。
05技術革新の不足―速やかな市場投入の妨げに
大手コンサルティングファームPwCの調査では、CSP各社が自社の設備投資プロセスに大きな欠陥があると考え、フラストレーションを感じていることがわかった。また、回答者の64%は、自社の設備投資が商業的な目標によるものではなく、技術主導で行われていると回答している。そういうわけで、各社は既存の技術スタックの保守か、あるいは現在運用しているプラットフォームやシステムと必ずしもよく統合されているわけではない、ベストオブブリードのツールを実装することに費用をかけている。
PwCの推定では、CSPによる設備投資のうち、年間で最大20%、金額にして650億ドルが無駄になっている可能性があるという。こうした資金のうち、かなりの割合をRANのモダナイゼーションに注ぐこともできる。そうすれば、5Gサービスの実装がはるかに簡単になり、技術革新を促進することも可能になる。同調査では、市場の競争が激化しているなか、機をとらえた革新ができていないことが、通信業界の解約率がこれほど高くなっている大きな要因の1つになっていることもわかった。とはいえ、昨今の技術革新では、クラウドベースのプラットフォームやオープンなアーキテクチャ、コンテナ化などに投資する必要があり、RANを運用する事業者にとって、こうした領域がコンフォートゾーンの外側に当たることもある。
CSPの中には、特定の技術分野に単独で取り組む方が望ましいと考えているところもある。とはいえ、今日の展開はあまりにも速く、どの企業にとっても遅れずについていくのは簡単ではない。CSPは、必要としているソフトウェアやクラウドの専門技術を持つ企業に働きかける必要がある。文明と同じく、発明やイノベーションもすでにあるものに頼るものだ。そのため、市場で差別化を図れる独自の5Gサービスを立ち上げるためには、求める水準にまでイノベーションを育てることを可能にする、適切なパートナーエコシステムを作っておくことがますます必須になっている。
アクセンチュアが最近発表した調査レポートには、次のように書かれている。「新たな市場開拓エコシステムができれば、協業を通じて接続を提供する以上の成長ができるでしょう。垂直統合からオープンエコシステムへの移行です」
では、どうするか?
こうした課題を克服するには、ネットワークの運用・管理に対し、エコシステムによって可能となる、統一的なアプローチを取る必要がある。「VMware Telco Cloud Platform」は、RANからコアまでエンドツーエンドでネットワークワークロードに最適化した、柔軟な水平プラットフォームだ。サイロを取り除き、プライバシーを維持しながらセキュリティを強化し、可視性を高め、市場投入までの時間を短縮することができる。ネットワークコンポーネントのディスアグリゲーションによって、マルチベンダー環境全体でVNFやCNFの管理を自動化し、運用を簡素化している。また、エンドツーエンドで自動オーケストレーションの実装や根本原因分析、ライフサイクル管理が可能だ。
同プラットフォームのサービス保証機能を使用すれば、異なるシステムのログを何日もかけて調べる必要はない。自動でアラームを統合し、チケットを発行し、修復を行うため、運用チームはネットワーク全体で何が起こっているかを数分のうちに把握することができる。運用コストと設備投資費の削減になるほか、ネットワークプログラマビリティによってアジリティも向上する。イノベーションを促進し、新しいネットワークサービスの収益化にもつながるのだ。
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