セキュリティ
文:Nancy Liu

マイクロソフトが参入、激変するSSE市場=中小ベンダーが退避へ

マイクロソフトが参入、激変するSSE市場=中小ベンダーが退避へ

マイクロソフトが「Microsoft Entraスイート」の一般提供(GA)を開始した。急速に発展しているSSE(セキュリティ・サービス・エッジ)市場に正式に参入する。「中小のSSEベンダーは、撤退するか、避難するか、事業の刷新を迫られることになりそうです」と、米フォレスター・リサーチのアナリストが述べている。

マイクロソフトは昨年7月、Entra製品ファミリーにZTNA(ゼロトラストネットワークアクセス)、SWG(セキュアウェブゲートウェイ)のサービスを追加した。一般的なSSEには、ZTNA、SWG、CASB(キャスビー/Cloud Access Security Broker)、FaaS(ファイアウォール・アズ・ア・サービス)などのコンポーネントが含まれている。

Entraスイートで提供されるのは、ZTNAプラットフォームの「Entra Private Access」と、「Entra Internet Access」「Entra ID Governance」「Entra Verified ID」「Entra ID保護」だ。

「たぶん、ZTNAの今の市場リーダーはZscalerだと考えてのことかと思いますが、マイクロソフトのローカルソフトウェアエージェントは、ZscalerのZTA(ゼロトラストアクセス)と共存できるようにつくられています。また、おそらくどの企業のZTNAとも共存できるでしょう」。フォレスターのDavid Holmes(デイヴィッド・ホームズ)氏がブログ記事に書いている。

他にスイートに含まれている「Entra Internet Access」はクラウド型のSWG、「Entra ID Governance」(IDガバナンス・管理サービス)と「Entra Verified ID」(顔認証)、「Entra ID保護」の3つはID関連サービスだと説明した。

Entraスイートは、IDとネットワークアクセスのセキュリティを統合し、IDやエンドポイントからのアクセスに対して、プライベートネットワーク経由かパブックネットワーク経由かを問わず、1つのアクセスポリシーエンジンを使用して全てのケースに同じポリシーを適用する方針でつくられている。マイクロソフトは、ID、エンドポイント、ネットワーク、アプリケーション、データ、インフラ全体をカバーするゼロトラストセキュリティ戦略を掲げており、SSEソリューションもこれに沿ったものだと発表している。

マイクロソフト参入でSSE市場が激変

米調査会社ガートナーによるレポート「セキュリティ・サービス・エッジのマジック・クアドラント」の最新版では、Netskope、パロアルトネットワークス、Zscalerを同市場の「リーダー」企業に、フォーティネットを「チャレンジャー」、Skyhigh Security、Lookoutを「概念先行型」、Versa Networks、クラウドフレア、Broadcom、ibossを「特定市場指向型」に挙げている。同レポートは4月に公開されたもので、Entraスイートはまだ一般提供されていなかったが、マイクロソフトにとっては名誉なことに、レポートでもすでに触れられていた。

マイクロソフトがSSE市場に参入したことで、既存のベンダーにはかなりのプレッシャーになりそうだ。

「マイクロソフトがエンタープライズソフトウェア市場を支配している以上、多くの企業や団体で、仮にCIOやCISOが実際には望んでいなかったとしても、マイクロソフトのソリューションを使うという「結論に至る」ことが考えられます」とHolmes氏が書いている。

また、Entraスイートの価格と機能セットは競争力のあるもので、中小のSSEベンダーが市場戦略の再考を余儀なくされる可能性もある。

「Entraスイートが一般提供を開始したことで、あらゆるSSEベンダーに大きなプレッシャーがかかることになるでしょう」と氏。「規模の小さいベンダーは退避せざるを得なくなりそうです。大規模なインフラベンダーに安価に買収されたり、倒産したり、OTや医療・介護などの特定分野に徹底して特化するといった動きが予想されます」

「SSEソリューションを検討している顧客企業は、こうしたプレッシャーがあることを利用して、既存の大手SSEベンダーとは良い取引をするのがよいでしょう。中小のSSEベンダーを検討している場合には、いったん立ち止まって、来るべき嵐を乗り越えられないようであれば、そのソリューションから手を引けるようにしておいた方がよいと思います」

SASEユーザーは「進路はそのまま」が吉

SASEアーキテクチャの導入を進めている企業等については、当面の間、現在のベンダーを継続することを選ぶのもよいとHolmes氏は書いている。

「マイクロソフトの製品は(今のところ)気にせず、そのまま進めるのがよいでしょう。(ZTEや)SASEには膨大なネットワーク機能と要件が伴いますが、マイクロソフトはこの分野については今のところ何も提供していません。技術提携を結ぶ以上のことをする可能性も低いでしょう」

Microsoft disrupts SSE market: ‘Smaller vendors will have to run for cover’

Nancy Liu
Nancy Liu Editor

SDxCentralの編集者。
サイバーセキュリティ、量子コンピューティング、ネットワーキング、およびクラウドネイティブ技術を担当している。
バイリンガルのコミュニケーション専門家兼ジャーナリストで、光情報科学技術の工学学士号と応用コミュニケーションの理学修士号を取得している。
10年近くにわたり、紙媒体やオンライン媒体での取材、調査、編成、編集に携わる。
連絡先:nliu@sdxcentral.com

Nancy Liu
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サイバーセキュリティ、量子コンピューティング、ネットワーキング、およびクラウドネイティブ技術を担当している。
バイリンガルのコミュニケーション専門家兼ジャーナリストで、光情報科学技術の工学学士号と応用コミュニケーションの理学修士号を取得している。
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