米CloudbrinkがSASE契約を獲得=Zscalerに対抗

SASE市場の成熟が急速に進んでいく中で、同市場の変革を狙う米Cloudbrink(クラウドブリンク)が大きな味方を獲得した。NECネッツエスアイが昨年11月、Cloudbrinkとの提携を拡大し、企業向けマネージドサービスの提供で同社とも協業すると発表している。
今回の提携では、NECネッツエスアイが新たに提供するマネージドサービス「Virtual Trusted Overlay Network」の基盤にCloudbrinkのパーソナルSASE(Personal SASE)プラットフォームを採用した。同サービスでは、Cloudbrinkが世界各国に設置している仮想PoP(Point of Presence)を活用したエッジメッシュネットワークを利用する。AIで最寄りのアクセスポイントを探し、待ち時間を短縮するものだ。
Cloudbrinkは以前、同プラットフォームのセキュリティ面をアピールしている。顧客によるトライアルと第三者検証の結果、接続サービスとしてはシスコやZscalerといった競合のサービスよりも優れていることがわかった。SASEの検証については、業界関係者の間でもますますホットな話題になっている。
米国に拠点を置くNECエンタープライズ・コミュニケーション・テクノロジーズのRam Menghani(ラーム・メンガニ)社長が説明したところによると、サービスポートフォリオにCloudbrinkを追加するに当たり、決定打となった要素の1つがこのセキュリティコンポーネントだったという。Cloudbrinkは柔軟な導入ができることもあり、追加はすんなり決まったとした。
Menghani氏によると、NECネッツエスアイはSASE分野で定評のある数社とすでに協業しているという。フォーティネット、パロアルトネットワークス、ジュニパーネットワークス、シスコなどだ。一方で、一部の顧客からはもう少し柔軟な導入ができるようにしてほしいという声が寄せられていた。
「こうした企業の製品は、顧客の多くがインフラに導入しているものです」と氏。「NECネッツエスアイの名前でそれを管理しているのが当社です。ベンダーを次々に増やしていったことで、管理コストは上昇していました。各々が独立した製品であるため、別々に管理しているようなものだったのです。私たちはこれを簡素化し、コストを削減できるようなものを導入できないか検討していました」
導入方式の柔軟性も向上した。Cloudbrinkが提供するソフトウェアベースのプラットフォームを利用すれば、NECのハードウェアを活用することも可能になるという。
「当社としては、ハードウェアにもソフトウェアにもなる製品を見つけることが非常に重要でした。ハードウェアというのは、オンプレミスのローカル環境に設置したいという意味です」と氏。「日本にはクラウドの利用を許可してくれない顧客がいるので、クラウドを使う場合と、オンプレミスにWebサーバーを設置して社内ネットワークへのゲートウェイにする場合、いずれかを選べるようにしたかったのです。これは両方を統合した製品にはない、大きな利点の1つでした。顧客の環境の複雑さに応じて、クラウドベースにも、場合によってはオンプレミスベースにもできるという点です」
その後は、こうしたことが可能かどうかを6か月間かけて検証している。氏によると、NECネッツエスアイが他のベンダーとも協力して検証し、必要な性能を満たしているという結果が出たという。
「この製品はシンプルであるだけでなく――それもとても重要ですが――コスト効率も高いものでした」と氏。「良い契約ができたと思います。良い話し合いができましたし、価格などもコスト効率に優れたものになっています」
CloudbrinkはSASE大手の一角ではない
Cloudbrinkにとって、NECネッツエスアイとの契約を獲得したことは大きな成果だ。SASE分野は全体として、市場がひと握りの大手に集中し、あまり動かない状態が続いている。
米調査会社デローログループが最近発表したレポートによると、2024年第3四半期のSASE市場売上高は24億ドルとなり、このうち72%をベンダー6社が占めている。Zscaler、シスコ、パロアルトネットワークス、ブロードコム(VMware)、フォーティネット、Netskopeの6社となっている。
執筆を担当したエンタープライズネットワーク/セキュリティ担当シニアリサーチディレクターのMauricio Sanchez(マウリシオ・サンチェス)氏の記述によると、SASE市場が頭でっかちな構成になっているのは、セグメントとして成熟が進んでいる最中だからだという。
「SASE市場は新たな成熟段階に入りつつあります」と氏。「経済が先行き不透明な中、企業の投資は信頼できる統合ソリューションに集中しています。大手ベンダーが獲得する売上の割合も増えており、今後も大手ベンダーが市場をリードし、イノベーションを続けていくための素地が着々と作られている状況です」
他の調査会社でも、同じようなベンダーをSASE分野の有力企業とみなしている。
米調査会社ガートナーによるSASE市場の最新ランキングでは、パロアルトネットワークス、Cato Networks、Netskopeが「リーダー」象限に分類された。フォーティネットとVersa Networksが「チャレンジャー」、シスコが「概念先行型」の企業に挙げられている。
Cloudbrinkの名前は挙がっていないが、NECのMenghani氏がCloudbrinkを支持する興味深い観点を述べている。CloudbrinkのSASEを導入する動きはNECグループ内の上位企業にも広がり、Zscalerをベースとしたシステムから置き換える予定で段階的に導入が進んでいるところだという。
「一度突き返されたんですよ」と氏。「NECのグループ企業がグループ内の企業に反対するというわけじゃないんだけど、と言われました。いや、いや、何かを取り除くには複雑すぎる状態なので、大きな費用がかかっているとしても、何も触りたくないんです、何とかやっているし問題はないでしょう。セキュリティは重要な要素だから、ここには触りたくありません――という話でした。それで、当社はこういう風に言いました。いえいえ、ご心配は要りません、全部そのままでいいのです。これは仮想オーバーレイネットワークで、セキュリティをさらに強化するものです。慣れてきたら徐々に移行を始めればいいのです――つまりは、多くの顧客と一緒にやってきたのと同じことですね」

電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime

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