SASE市場が急拡大へ=マクロ経済の短期的な懸念を打破

SASE市場が向こう数年間で2倍近くに拡大しそうだ。ネットワークとセキュリティを統合した管理のしやすいサービスを求める企業が急速に増えていることから、マクロ経済の短期的な不透明感をよそに市場が急成長するとみられている。米調査会社デローログループが予測した。
予測によると、SASE市場全体の売上高は2029年までに170億ドルに達するという。年平均成長率(CAGR)で12%という急速な伸び方だ。シングルベンダーSASEプラットフォームの構成要素に当たるSD-WANとSSEの両方を提供するベンダーも増え、SASE市場全体の90%を占めることになるとした。
同社でエンタープライズネットワーク/セキュリティ担当シニアリサーチディレクターを務めるMauricio Sanchez(マウリシオ・サンチェス)氏が取材に答えている。SASEには「ネットワーキングが伴うものの」、原動力となっているのはセキュリティ面(SSE)であることに変わりはないと説明した。
「最終目標がWANブランチネットワークのセキュリティを大きく向上させることだとすると、昔のようにネットワークとセキュリティを別々に扱ったとしても達成には至らないこと、非常に難しいこと、あるいは不可能であることが認識されているのだと思います」と氏。「(ネットワーキングを)軽視しようというわけではありません。今でもそれが目的で(単なる)アクセスルーティングから移行するわけですから、(中略)軽視してよい要素ではないでしょう。ですが、戦略目標としては、こういうものを採用して全面的な変革をやりましょう、そうすればセキュリティが向上します、ということが上位にあって、それと一緒にネットワーキングも向上させましょう、という順番だと思っています」
こうした状況を受けて勢いづくのがシングルベンダーSASEだ。市場が活性化し、ベンダーの収益も向上するという。
「明らかなこととして、ベンダー各社は――特に驚くことではないのですが――両方の製品を販売して、獲得できる収益をすべて獲得しようとする姿勢をますます強めています」
他の調査会社からも、シングルベンダーSASEが盛り上がるという予測は出されている。
米調査会社ガートナーが昨年発表した予測では、2027年までに、新規購入されるSD-WANの65%をシングルベンダーSASEの構成製品が占めるようになるという。2024年の見込み数字は20%で、そこから大幅に増加するという予測だ。同社のクライアントの間では、シングルベンダーのSASEに対する関心が前年との比較で倍以上に高まっており、提供ベンダーによるシングルベンダーSASEの主力製品を利用している企業は推定で1万社を超えるという。
「適切に設計されたシングルベンダーSASEの市場は、変化の激しい市場ですが成熟しつつあります。当社のクライアントの間でも、SASEに対する関心が急速に高まっています」。ガートナーが発表した『SASEのマジック・クアドラントレポート』には、上記のように書かれている。
また、シングルベンダーSASEを提供するベンダーは今の時点でいくつもあるが、「全コンポーネントの統合と単一の管理プレーン、統合データモデルとデータレイクを見ると、求められる幅と深さで提供しているものはほとんどない」としている。
シングルベンダーSASE市場の今後については、新規参入者が出現するほか、生成AIアシスタントが必須の機能となり、PoP(Point of Presence)戦略の違いによる顕著な価格差がみられるようになると予測している。また、SASEベンダーが非管理対象デバイスへの対応を拡大し、隣接市場に進出するとしている。例として、エンドポイントセキュリティやデータセキュリティポスチャ管理(DSPM)、マイクロセグメンテーション、ネットワークアクセス制御といった市場を挙げている。
SASE市場の支配
新規参入が予想されるSASE市場だが、一方で、2024年第3四半期には市場売上高(24億ドル)の72%を上位ベンダー6社が占めている。デローログループが以前に発表した。具体的には、Zscaler、シスコ、パロアルトネットワークス、ブロードコム(VMware)、フォーティネット、Netskopeの6社となっている。
発表当時、SASE市場の構成が上位プレイヤーに偏った状態になっている理由について、市場セグメントとして成熟が進んでいる最中だからだとSanchez氏が説明している。
「SASE市場は新たに成熟段階に入りつつあります」と氏。「経済が先行き不透明な中、企業の投資は信頼できる統合ソリューションに集中しています。大手ベンダーが獲得する売上シェアも増えており、今後もそうした大手が市場をリードし、イノベーションを続けていく素地ができていっています」
ガートナーも同じような企業をSASE分野の有力企業に挙げている。2024年中期のSASE市場ランキングでは、パロアルトネットワークス、Cato Networks、Netskopeを「リーダー」企業に分類したほか、フォーティネットとVersa Networksを「チャレンジャー」、シスコを「概念先行型」の企業に挙げた。
とはいえ、Sanchez氏によると、革新的な企業が参入するチャンスはこの分野にもまだ残されているという。
「もう決着は付いてしまったと言いたいのではありません」と氏。SASE市場について次のように補足している。「小規模なプレイヤーが参入して事業を開花させ、何か面白いことをするチャンスはまだあると思います。この分野では、もうZscalerやパロアルトがそうした機会を確保してしまい、状況が動くことはないと言うにはまだ早すぎるでしょう」
氏によると、大企業向けの領域が今後も収益を牽引していく一方で、小規模な顧客向けの領域にも、適切な製品であれば高収益を上げられる可能性があるという。
「この分野の比較的小規模なベンダーにとっては――実は大手ベンダーでも同じなのですが――小規模市場に下りていくと商機があります。そうした市場では、ブランチ拠点やリモートアクセスのためにシャーシを中心としない方式へ移行する動きがまだ遅れているからです。とはいえ、小規模市場の顧客には、大企業が使っているようなテクノロジーを利用するだけの財力も、必要なモノや手段もありません。つまり、市場ニーズとしては、適切な価格、適度にシンプルな製品で、どのように価値や利点を提供できるか、ということになるでしょう」

電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime

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