金融機関のクラウド利用=金の壺が見つからないのはなぜか

金融業界でクラウドを利用したデジタル変革の取り組みが続いている。とはいえ、あわただしくもつまずきながら進むという状況が続いているようだ。技術をどう利用していくかについての理解不足や、方向性が明確になっていないことが原因だという。
コンサルティングファームのキャップジェミニ(Capgemini)が金融サービス事業者の経営幹部を対象とした調査を行っている。昨年11月には複数の調査結果をまとめたレポートを発表した。対象事業者のうち、1つ以上のクラウドプラットフォームを採用している事業者は91%に上り、2020年の37%から大幅に増加していることがわかった。一方で、クラウドプラットフォームを利用して売上高を伸ばしている「革新的な事業者」は12%にとどまるという。
さらに憂慮すべきは、業務効率化を目指してクラウドを活用するデジタル変革に乗り出した事業者が84%を占めている一方で、クラウドへの投資で得られた成果に「非常に満足している」と回答した事業者は40%未満にとどまっていることだ。項目ごとの満足度では、「業務コストの削減」に満足しているという回答がちょうど3分の1、「拡張性の向上」では27%、「イノベーションの加速」で26%、「高度なD&A(データと分析)の活用」で24%、「セキュリティとコンプライアンスの向上」が21%となっている。
こうした期待外れの結果となる原因としては、適切な戦略的計画ができていなかったケースが多いという。キャップジェミニの金融サービス向けクラウド担当グローバル責任者、Ravi Khokhar(ラヴィ・コカール)氏がSDxCentralの取材で説明した。
「クラウドの採用に早い段階で飛びついた後、どこかの時点で『しまった、予想以上に費用をかけてしまったぞ』と気が付くようなケースです」と氏。「リフトアンドシフト、あるいはリホストと呼ばれる手法を取って、後からクラウド費用が思ったより少々大きくなってしまったことに気づく場合もあります」
こうしたこともあり、クラウドイノベーション戦略については、少なくない金融機関が修正や拡張を余儀なくされているという。
「彼らの多くは正しいビジョンを持っています。スケーラブルかつ適切なプラットフォームもあります。パートナー企業やISVとともに、透明性の高い、多様なエコシステムをすでに築いているところが多いですし、クラウドを中心とした事業戦略と、目指す成果目標を発表しているところもあります。少数ながら、実際に技術を成熟させている事例もあります。長期の道のりですが、だいたいどの地点にあるかというと、今のような内容をキロポスト(距離標)にしていただくのであれば、1つとか、あるいはもっとたくさんのキロポストをすでに通過しているわけです。まだゴール地点には着いていないというだけです」と氏。「まだ始まってもいないということではありませんし、レポートでも、いずれの事業者もすでにスタートを切っていることはもちろん強調しています。大きな組織の場合には、ゴールにたどり着くために少し助走期間が必要になるということもあります」
クラウドエコシステムには何ができるか―金融機関を支援するために
キャップジェミニの調査では、新しい技術の選択肢が登場したことで、金融機関の経営幹部はほとんどが当惑を感じていることもわかった。
たとえば、「適切な技術」がないことで「事業目標の達成が妨げられている」と回答した経営幹部は81%に上る。必須の技術としては、AI、予測分析、RPAが挙がった。
ところが、こうした重要技術を活用するスキルが組織内には不足しているという。クラウドの予測分析データを活用するのに必要となる必須スキルを持っているという回答は30%にとどまり、RPAを活用できるという回答が22%、AIの活用が成熟段階にあるという回答はわずか15%だった。
Khokhar氏によると、金融機関の場合、この3つは収益機会に影響するという。
「売上高に違いを生み出すうえで、最大の呼び水になるのは、今も昔もエコシステムです」と氏。「私の考えでは、エコシステムというのは、売上高について考えたり、革新的な組織にしようとしたりすれば、常に関係してくるものです。たとえば、さまざまなデータを入手する事業者があるとします。参照データでもいいでしょう。収益化のためであれ、クロスセルやアップセルのためであれ、多様なAPIと連携するわけです。そういう事業者がこうした技術を活用すれば、大きな違いが生まれます。さまざまなプレイヤーと連携して、まったく異なる統合製品、統合サービスを提供するエコシステムを促進できるでしょう。(中略)当社では、ただ事業を継続するだけでなく、売上高に大きな差を生み出すことができるイネーブラーだと考えています」
Why can’t financial institutions find their cloud pot of gold?

電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime

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