2024年、ソフトウェアエンジニアリングの成功に向けた4つのトレンド
調査会社ガートナーの予測によると、2024年、企業のソフトウェアエンジニアリングチームは全社的な視点からの要請に応えていくプレッシャーと相変わらず向き合うことになりそうだ。今後も続くテック業界の進化にIT部門のリーダーが備えていくには、開発者を支援し、ツールセットを拡張し、AIを活用するのがよいという。
「10年以上前、ソフトウェアが世界を飲み込むとMarc Lowell Andreessen(マーク・ローウェル・アンドリーセン )氏は語りました。そして今日、ソフトウェアエンジニアリングはさらに重要性を増し、企業戦略の全体を支えるものになっています。どの業界にいてもそれは変わりません」。あるウェビナーで、ガートナーのバイスプレジデント・アナリストJoachim Herschmann(ヨアヒム・ハーシュマン)氏が語った。
氏によると、ソフトウェアエンジニアリングには業界を超えた共通点がもう1つあり、それは「すこぶる難しい」ことだという。「ソフトウェアエンジニアリングは技術のための技術ではありません。事業目標を達成し、超えていくことが肝要です。結局のところ、その如何によって評価が決まるからです」
以下、2024年の時流を先取りしていくために、ソフトウェアエンジニアリングチームのリーダーが知っておくべきトレンドを4つ紹介する。
開発者支援
Herschmann氏は「パフォーマンスの高いチームを構築し、個々の潜在能力を最大限に発揮してもらう上で妨げとなる要素を取り除く」ために最も重要なトレンドとして、インナーソースの活用と、優れた開発者体験の創出の2つを挙げている。
インナーソースとは、オープンソースの考え方を社内のソフトウェア開発、ソフトウェアエンジニアリングに応用したものだ。「インナーソースのソフトウェアはプロプライエタリでありながら、社内に対してはオープンで、誰でも利用したり、貢献したりすることができるものです」と氏。
インナーソースソフトウェアを使用すれば、アプリケーション開発が加速し、チームが協力的に働きやすくなり、結果としてソフトウェアやドキュメントの品質向上にもつながる。また、コードの再利用ができ、各所で同じようなコードを作成することがなくなり、データサイロの解消も簡単だ――「企業規模を問わずに活用できます」と氏は言う。
もしかすると、最も重要な利点は、オープンな企業風土を醸成しやすくなることかもしれない。「チームのメンバーが抱く、製品の成長に対する誇り、仕事のやりがいといったものが強くなるのです」と語った。
2024年は開発者体験も重要なトレンドになりそうだ。意味合いとしては、開発者が仕事で触れるツールやプロセス、人との関わりに関するあらゆる面が含まれる。
ガートナーによると、最高の開発者体験を構築するには、「摩擦が最小で流れが良く、最高の仕事ができる」環境、開発者が裁量を与えられていると感じ、やりがいを持って高品質のソフトウェアを提供できる環境が必要だという。それだけにITチームの革新を速め、優秀な人材の確保にも役立つのが開発者体験だ。
「たとえばオンボーディングの質や、セルフサービスの社内開発者ポータルの品質について考えてみてください。環境管理ツールやコラボレーションツールと同様、開発者体験を向上させる大切な要素です」と氏。一方で、「大事なのはテクノロジーだけではありません。他にも、奥が深く創造的で有意義な仕事に専念する時間を持てること、個人が失敗を恐れずに新しいことに挑戦する自由を持てることなども重要です」と語った。
AI拡張型ソフトウェアエンジニアリング
2024年に注目すべきもう1つのトレンドがAIだ。AIの活用によって、ITチームの生産性やアクセシビリティ、管理や品質の一貫性が向上するとともに、従来よりもスマートなアプリケーションが作られるという。
「AIの利用に関して言えば、今年は転機となった年でした」とHerschmann氏。「アプリケーションの構築方法はすでに、AIを活用した各種のツールによって根本的に変わってしまっています。(デザインをコードに変換する)Design-to-codeツールから、機械学習を活用してコードを自動生成するコーディングアシスタント、AI駆動型のテストツールまで、さまざまなツールが使われています」
たとえば、Design-to-codeとは、UXデザイナーからデザイン資産と仕様がソフトウェアエンジニアリングチームに引き渡される工程を指す。こうしたさまざまな工程でAIが利用されている。
一方で、AIを活用したアプリケーションの作成も行われている。「AIは事業運営の在り方を大きく変えようとしています」と氏。「企業が持っているそれほど使用されていないデータ、高度なモデルの構築技術、生成AIサービスがあれば、データ強化型アプリケーションを作成し、優れた意思決定を促進することが可能になります」
データ強化型アプリケーションとは、機械学習モデルを利用したAIを組み込んだものだ。「当たり前のものになっていくでしょう」と氏は言う。アプリケーション開発戦略としては、エンタープライズアプリケーション内にすでに存在する情報をエンリッチ、ワークフローの自動化によって生産性や応答性の向上を図り、リスク評価および次に取るべき手段のリコメンドを提供するものとなっている。
SDxCentral のレポーター。
データセンターのテクノロジーとビジネス ケース、環境の持続可能性、クラウドネイティブ エコシステムを担当。
エマは愛犬コビーとデンバーに住み、世界一の散歩を一緒に楽しんでいる。
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