固定無線アクセス（FWA）は、5Gネットワーク事業者にとって最も価値のあるユースケースの1つになる――そう予測する新しい調査報告が複数出されている。年平均成長率は70%を超えるという予測だ。

米調査会社のABI ResearchとMobile Expertsはそれぞれ、世界の5G FWA接続数が「71％の」「70％を超える」年平均成長率で増加するという予測を出している。ABI Research社は世界の5G FWAの契約世帯数が2026年までに5,800万世帯を超えると予測、Mobile Experts社は同年までに6,650万人の顧客にサービスが提供されると予測している。

FWAは何十年も前からある技術だが、昨年、COVID-19のパンデミックによって世界で何十億人という人々がステイホームを余儀なくされるなか、注目度と成長率が大幅に高まることとなった。

Mobile Experts社では、世界のFWA接続数は2026年までに2倍以上の1億9,000万件に達すると予測している。主席アナリストのKyung Min氏はレポートの中で、「発展途上地域の大手モバイル事業者が選択する主要技術はLTE（4G）となるでしょう。これがFWA接続数の約60％から80％を占めることになります」と書いている。

5G FWAはブロードバンドで「最も急成長している」セグメント

「5G FWA接続が最も急速に成長し、2026年にはFWA接続全体の35％を占めるようになるでしょう」とMun氏は説明。今年中に1億人近い顧客にサービスが提供されるだろうと補足した。

ABI Research社も「5G FWAが家庭用ブロードバンド分野で最も急速に成長するでしょう」と予測しつつ、低い水準からのスタートではあると付け加えた。

「現在進められている5Gネットワークの展開、広範な5Gミリ波ソリューションの開発によって、サービス事業者各社は都市部と低密度地域の両方で高速な5G FWAサービスを提供できるようになるでしょう」と同社は書いている。「5G FWAサービスは2020年には1％未満だったものが、2026年には家庭用ブロードバンドサービスの4％を占めるようになると予想されます」

じっさい、米国の通信事業者各社はFWAサービスの提供プランを強化している。ベライゾンは今年、FWAサービスのカバレッジを年末までに国内の1,500万世帯、2023年末までに約3,000万世帯に広げると発表した。T-Mobile US社は、2026年までに5G FWAの顧客数700万人を突破する意向だとしている。

CPEの出荷台数が増加

Mobile Experts社によると、5G FWAの導入増はエンドユーザーデバイスの増加にもつながるという。「LTE CPEユニットの出荷台数は徐々に減少し、今年の2,000万台から2026年には1,600万台になるでしょう」とMun氏は書いている。また、5G CPEの出荷台数は年平均成長率40％で増加し、LTEの減少を補って余りあるものになるとした。

「5G CPEの年間出荷台数は2026年にはLTEを追い抜き、CPE出荷台数全体の約50％を占めるようになるでしょう」と氏は説明する。また、LTE CPEと5G CPEを合わせた売上高は、今年の40億ドル（4,390億円）から2026年には55億ドル（6,030億円）以上に成長するとMun氏は言う。世界的なパンデミックによって高速ブロードバンド接続への需要が「激化」したことで、今後5年から10年のあいだ、政府の資金援助プログラムがFWAの継続的な成長を支援することになるだろう、とMun氏は補足している。

ABI Research社のKhin Sandi Lynn氏によると、ブロードバンドの普及が加速している背景には、仕事用や遊び用のインターネット接続デバイスの普及が世界的に進んでいることがあるという。「パンデミックの発生後、多くの企業が一部の従業員にリモートワークを許可しています。家庭用ブロードバンドサービスへのニーズはさらに高まるでしょう」と氏はしめくくっている。

https://www.sdxcentral.com/articles/news/5g-fixed-wireless-rides-pandemic-related-shift/2021/08/