5Gは「最大の不確実性」を伴う局面=ムーディーズの調査報告
米格付け会社Moody’s(ムーディーズ)の最新の調査報告によると、5Gに関する煽るような宣伝は誇大であったと受け入れなくてはならさそうだ。キラーアプリケーションがなかなか登場せず、通信事業者の売上増が困難になっているという。
無線通信事業者は5Gネットワークインフラのアップグレードに多額の投資を行っており、進み具合は各社それぞれだが、Moody’sでは世界の通信事業者のCAPEX(設備投資額)は2025年まで増加し続けると結論付けている。
Moody’sによると、無線キャリアの売上高に占めるCAPEXの割合は2019年と2020年は世界全体で16%と横ばい、2021年は17%に微増、今後4年間は18%に達する見込みだという。
CAPEXの負担だけでも十分に重荷だが、売上の伸びが芳しくないことがさらに輪をかけている。コストが嵩む一方で売上は変わらず、通信事業者にとって厳しい4年間となりそうだ。2026年には状況が変わりそうだと考えられる要素もほとんどないという。
Moody’sのリサーチノートには、「当社は5G技術をベースにしたアプリケーションが収益を生み出せるかについてはまだ懐疑的です」とある。「そのわけは、5Gが主にeMBB(拡張モバイルブロードバンド)を中心に発展していくと思われるためです。4Gと大差ないものになるでしょう」
真の5Gキラーアプリケーションはまだ登場していない
さらに、真の5Gキラーアプリケーションがまだ登場していないことで、収益拡大の可能性は乏しいままだ。
このため、現在でも5Gで向上する主なポイントは低遅延だということになる。この部分の変化は注目に値するものの、「ネットワークの応答時間がほぼ即時」であることが意味を持つのは特殊なユースケースにおいてのみだという。「実際、5Gの最も有力なユースケースは一般消費者よりも法人向けが中心になっていることが明らかになっています」
5Gへの期待がほとんど実現されていないという失望は、キャリアにとっては3Gや4Gの時代にも経験したことだ。
「この段階では企業の設備投資に非常に大きな不確実性が伴います。そのため、5 Gによる収益成長について予測するに当たっては、4Gと3Gの収益化が限定的だったという教訓も踏まえ、ビジネスケースが明確になるまでは引き続き慎重な姿勢を保ちたいと考えています」。Moody’sのアナリストらは述べている。
5Gの非常に有力なユースケースとしては法人向けの特化型サービスがあり、IoTアプリケーションが増えていけば2025年以降は売上増につながる可能性があるものの、キャリア各社による多額の5G投資に見合うものにはなりそうにない、と同社は結論している。
「自律走行車、ロボット工学、スマートホームといった幅広い潜在的アプリケーションがあることで、ネットワークには速度や遅延の点でさまざまな要求が課されています。4Gではブロードバンドモバイルビデオ、3GではWebブラウジングなど、前世代技術では1つの大きな進歩に焦点が当てられていたのとは対照的です」
収益の見通しは不透明であるにもかかわらず、キャリア各社は5Gへの投資拡大を避けられない時期に直面している。Moody’sによると、世界の通信事業者はこれまでに5Gの周波数帯に累計2,000億ドル(約25兆6,360億円)を投じており、GSMAは2022年から2025年にかけて5G関連のインフラとサービスに約5,100億ドル(約65兆3,820億円)が投資されると予測している。
Matt Kapko, senior editor at SDxCentral, covers 5G network operators, radio access network suppliers, telco software vendors, and the cloud. He has been writing about technology since before the dawn of the iPhone, and covering media well before it was social. Matt can be reached at mkapko@sdxcentral.com or @mattkapko.
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