6G
文:Dan Meyer

米AT&T、6Gのユースケースを6つ予想(ヒント:VRとは?)

米AT&T、6Gのユースケースを6つ予想(ヒント:VRとは?)

米通信大手AT&Tは、数十億ドル(数千億円)を投じた5Gネットワーク構築のさなかにあるが、通信事業者が皆そうであるように、6Gは何をもたらすのか、用途は何か、どう収益化するのか、といったことにもすでに目を向け始めている。各社が現在進めている5G投資の収益化に苦戦していることを考えれば、最後のところは重要だ。

先週開催された「Brooklyn 6G Summit」で、テクノロジー担当エグゼクティブ・バイスプレジデントのChris Sambar(クリス・サンバー)氏が基調講演を行い、AT&Tの予測する6Gのユースケースを6つ紹介した。そのうち3つが「通信を基盤としたシナリオ」、残りの3つが「通信のその先」だ。

前半3つはすらすらと述べられた。没入型通信、大規模通信、超高信頼・低遅延通信の3つだ。

 

VR(Virtual Reality)のユースケース

「私としては、ユーザー向け分野で最も有力なユースケースはXR(Extended Reality/Cross Reality)とメタバースだと考えています」と氏。「これについては、いずれうまくいくことを期待して数十億ドル(数千億円)をつぎ込んでいる企業が存在します」

Sambar氏は続いて、ある具体的なユースケースについて詳しく説明した。兵士やファーストレスポンダーを訓練し、現実世界のシナリオに対処できるようにするというもので、氏は自らXRヘッドセットを装着し、体験デモも行っている。

「課題となっていたのは、セットアップにエンジニアのチームが必要だったことと、大量の計算資源が必要だったことです。文字通り1ラック分のコンピュータを設置し、(訓練を行うには)かなり狭い空間を使うしかありませんでした」と氏。「6Gのある世の中であれば、これを野外環境で実現できます。兵士にゴーグルを持たせて市街地での訓練シナリオを実施したり、警察官にも同じことができます。素晴らしいユースケースだと思います。やがて6Gが私たちにもたらすのはこうしたものです」

 

6Gによる通信の発展とコネクティビティの拡大・向上

Sambar氏による後半3つのユースケースは、無線通信システムのエリア拡大や、機能拡大に焦点を置いたものだ。

1つ目は、デジタルデバイド(情報格差)の解消を支援することだ。米国政府にとっての最重要課題であり約425億ドル(約6兆3,700億円)を投じた「Broadband Equity, Access and Deployment(BEAD)」プログラムの根幹でもある。

Sambar氏は基調講演の中で、AT&Tが衛星通信事業者と協働で取り組んでいるネットワークのエリア拡大について触れた。先ごろ5Gのマイルストーンに到達、英Vodafoneやノキア、米AST SpaceMobileの協力を得て、AST SpaceMobileの実験用衛星「BlueWalker 3」に接続した手を加えていないスマートフォン2台の間で音声・データ通信サービスの試験に成功している。

 

衛星レースへの賭け

AT&TはAST SpaceMobileと深い協力関係にあり、貴重な周波数帯域のリースもしている。一方で、ASTとElon Musk(イーロン・マスク)氏の衛星通信サービス「Starlink」の間には、ネットワークアーキテクチャに関する立場の違いから競争関係が形成されており、AT&Tはこれを注視しているともSambar氏は発言している。

「ご存じない方のために申し述べますと、eNodeBを時速17,000マイル(約27,000 km)で地球の周りを周回している衛星に搭載するか(Starlink)、地上に設置するか(AST SpaceMobile)というもので、両社はどちらが良いのかについて異なる見解を持っています。一方は100に満たない衛星で地球の大部分をカバーするというもので(AST SpaceMobile)、もう一方は数千基が必要だとしています(Starlink)。当社としては、どちらが勝者となるのかを見ていきます」と氏。わずかに皮肉をにじませた。「どちらにも少しずつ賭けようとしていますが、当社としてはASTに賛同していますし、彼らは素晴らしい成果を上げるだろうと考えています」

「通信のその先」の2つ目のユースケースは、センシング技術の通信への統合だ。Sambar氏は、現在進めている自己最適化ネットワーク(Self-Optimizing Networks/SON)を利用した取り組みに触れた。SONは、今日では「ほぼ、アルゴリズムの1つ」と見なせるものだという。

氏は最近あった事例について説明した。野外の広大なサッカー・コンプレックスに行ったところ、AT&Tのネットワークが「あまりうまく機能していなかった」という。「SONはその状況を改善しようとしていましたが、できていませんでした」

「こうした状況をもっと速やかに解決し、お客様に素晴らしい体験を提供できる、もっとインテリジェントなネットワークが必要です」と語った。

 

AI向け6Gも一角に

この話は最後のユースケースにもつながる。AIと機械学習(ML)によるネットワーク管理支援だ。Sambar氏が挙げた例は、ネットワーク側で特定のハイバリュー顧客の所在を常に把握、AIや機械学習を利用して、そうした顧客が持つデバイスの接続を常に良好に保ちたいというものだ。

「6GネットワークにAIと高度な機械学習が加われば、そうしたことを実現できると考えています」

6 use cases AT&T expects to see with 6G (hint: think virtual reality)

Dan Meyer
Dan Meyer Executive Editor

電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
Twitter:@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime

Dan Meyer
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