AIバイアスと「テクノショービニズム」が進歩を脅かし、差別を助長
人工知能(AI)はビジネスのあり方を変えつつあるが、この新しい技術は、人々の接し方、信頼関係、相互作用のあり方をも変える可能性を秘めている。
最近の生成AIは、企業がデータに基づいて予測を行い、新しいテキスト・画像・音声を生成することを可能にする。しかし、AIモデルの学習に使用されるデータに反映されている現実世界の偏見が、再生産される可能性もある、とニューヨーク大学のMeredith Broussard(メレディス・ブルサード)教授が、VMware Explore 2023の責任あるAIに関するパネルディスカッションで指摘した。
AIが一般的な倫理に背く可能性の根底にあるのは、「テクノショービニズム」(技術至上主義)、つまり技術やデジタルによるソリューションが、常に最も優れた解決策であるという過信、偏見である。しかし、その道具がどれほど技術的に発達したものであろうと、その仕事に適した道具を使う方が、通常ははるかに理にかなっている、とBroussard氏は主張した。
「人々は、最新の技術革新に関わることで、多くの地位や権力を得られると想像します。しかし、すべての技術でそうなるわけではありません。しばしば、流行の技術が失敗に終わり、自分の顔に泥を塗る結果になることもあります」と氏は言う。
AIの役割は「人間を支援すること」であり、人間にとって代わることではない、と氏は述べる。「AI技術の限界について現実的になることが、適切なスタートになります」
AIモデルからバイアスを取り除く
VMwareのAIラボ担当バイスプレジデント、Chris Wolf(クリス・ウルフ)氏は、AIモデルの訓練に使用するデータからバイアスを特定し、取り除くことが優先事項であると説明する。「AI倫理は本当に重要です」とパネルディスカッションで語った。彼のチームは、AIモデルがどのように訓練され、どのようなデータソースが使用され、どのようなバイアスが存在するかを理解することに取り組んでいる。「我々は、AIの正しさやAIの結果の説明可能性を顧客が理解できるように支援したいと考えています」と語った。
業界もまた、AIを使用する際に倫理を優先することの重要性を認識している。ガートナーのアナリストである Bart Willemsen(バート・ウィレムセン)氏とJo Karajanov(ジョー・カラヤノフ)氏によると、企業は透明性、説明責任、サイバーセキュリティ、プライバシー、リスク管理、偏見、事実基盤の浸食、環境/社会の持続可能性、人間搾取といった観点から AI に取り組むべきだという。彼らは最近、このトピックに関する研究レポートを共同執筆した。「生成AIは大きな可能性を秘めていますが、同時に、誰を、どのように、何を信頼するのかを混乱させ、人々がどのように交流し、どのように扱われるかに影響を与え、地球環境に影響を与える可能性も抱えています」と警告している。
また、企業がAIの偏見とリスク管理に関して「適切な管理」を実施し、AI倫理の取り組みが「事実基盤の侵食を増加させるもの、環境や社会に有害なもの、あるいは人間の搾取に少しでもつながるもの」を避けるようにすることを推奨する、と書いている。
AIに含まれる差別の特定
Broussard氏は、テクノロジーは客観的で中立的で不偏不党であるという信頼が、技術至上主義者の偏見によって犠牲になっていると主張した。「AIシステム、つまり自動化されたシステムは、デフォルトで差別をします」「それが起きているかどうかは問題ではありません。どのように起きているかが問題なのです」
例えば、住宅ローン承認アルゴリズムを例に考えてみよう。2021年の調査では、住宅ローン申請の承認または拒否に使用されるアルゴリズムは、白人の借り手と比較して、有色人種の借り手を拒否する可能性がはるかに高いことが判明した。
このモデルに使用されたデータは、過去に住宅ローンを承認された人のデータに基づくものであり、そのデータには、米国における金融差別、住宅ローン融資にみえる偏向、居住地域の分化現象といった負の遺産が含まれていた。「このモデルが偏った判断を下していても不思議ではありません」とBroussard氏は言う。
最初のステップは、問題があることを認めることである。そうすれば、「その程度を数学的に把握し…(中略)…より公平になるようにモデルの出力を微調整することができます」と氏は言う。
AIを活用するビジネスリーダーは「現実を直視」し、職場での人種、性別、障害についての議論を歓迎する必要がある、と氏は言う。「これらのことはオフィスでは話題にしない傾向がありますが、私たちはこのような議論をする必要があります。差別が起こっていないふりをすることは、誰のためにもなりません」と述べた。
AI biases, ‘technochauvinism’ threaten progress, encourage discrimination
SDxCentral のレポーター。
データセンターのテクノロジーとビジネスケース、環境持続可能性、クラウドネイティブのエコシステムを担当している。
愛犬コビーとデンバーに住んでおり、一緒に世界一の散歩をする。
連絡先: echervek@sdxcentral.com
Twitter: @emmachervek
SDxCentral のレポーター。
データセンターのテクノロジーとビジネスケース、環境持続可能性、クラウドネイティブのエコシステムを担当している。
愛犬コビーとデンバーに住んでおり、一緒に世界一の散歩をする。
連絡先: echervek@sdxcentral.com
Twitter: @emmachervek
JOIN NEWSME ニュースレター購読
KCMEの革新的な技術情報を随時発信
5G・IoT・クラウド・セキュリティ・AIなどの注目領域のコンテンツをお届けします。
KCME注目の技術領域に関するテックブログを配信しています。
KCME注目の技術領域に関するテックブログを配信しています。
RELATED ARTICLE 関連記事
-
人工知能(AI) Jack Vaughan2024.11.29
生成AIが引き起こすデータエンジニアリングの変化
生成AIプロジェクトに取り組むデータエンジニアが直面…
-
人工知能(AI) Dan Meyer2024.11.28
米Broadcom、新製品「VeloRAIN」を発表=「VeloCloud SD-WAN」にAIを追加
Broadcomが進めている、VMwareのエッジ製…
-
IT Dan Meyer2024.10.30
米通信大手はエンタープライズ市場の競争に挑むのか=各社の取り組み
通信事業者から見たエンタープライズ分野のTAM(獲得…
-
セキュリティ Dan Meyer2024.10.23
SIEM市場が激変=CrowdStrikeはAI支援で備え
SIEM(シーム・Security Informat…
HOT TAG 注目タグ
RANKING 閲覧ランキング
-
IT Dan Meyer
BroadcomによるVMware製品の価格/ライセンスの変更がどうなったか
-
IT Dan Meyer
Broadcomは「脅迫者」=米AT&Tが酷評
-
ネットワーク Sean Michael Kerner
2024年における10のネットワーキング技術予測
-
IT Dan Meyer
BroadcomがVMwareパートナープログラムの詳細を発表
-
セキュリティ Nancy Liu
SASE市場が急成長=第1四半期、首位はZscaler
-
IT Dan Meyer
Dell、HPE、LenovoはBroadcomがVMwareの顧客の懸念を和らげるのに役立つか?
-
セキュリティ Tobias Mann
米CitrixはMcAfee社、FireEye社と同じ運命を辿るのか=買収合併の後に
-
セキュリティ Nancy Liu
デル、データ侵害を確認=ハッカーが4900万件の顧客データ販売を主張
-
スイッチング技術 Tobias Mann
コパッケージドオプティクスの実用化は何年も先=専門家談
-
ネットワーク Sean Michael Kerner
2023年 ITネットワークのトレンドTOP10 現時点