COVID-19のパンデミックで企業や消費者の行動に変化が起きたことで、クラウドサービス市場には大きな影響があった。米調査会社Dell'Oroグループが最近発表したレポートによると、Amazon Web Services（AWS）、Google、アリババといったハイパースケーラー各社は独自の機器の構築・設計を始め、追いやられた従来のデータセンターベンダーは市場シェアを取り戻すためにエッジ分野に注力せざるを得なくなっているという。

同レポートの予測によれば、今後5年間、データセンター用サーバに対する支出は年平均成長率11%で成長し、2025年までに市場のCAPEXの半分近くを占めるようになるという。高速化サーバの設置率も同時期、年平均成長率13%で成長するとしている。

Dell’Oroグループのリサーチディレクター、Baron Fung氏の説明によると、ハイパースケーラーはIT市場の大きな割合を占め、AWS、Google、アリババなどクラウドサービス事業者上位10社で世界のデータセンター支出の最大40％を占めているという。また、「こうした企業の中にはエコシステムに非常に大きな影響を与える可能性があるものもあります」としている。

同レポートによると、クラウド事業者やエンタープライズ企業が主にGPUやFPGAをベースにしたソリューションを展開する一方で、自社開発した人工知能（AI）チップを使った高速化サーバを配備しているプロバイダもあるという。

Fung氏の説明によると、このモデルはクラウド事業者にも波及しており、自社のニーズに合わせて独自のサーバやネットワーク機器を構築、「デルや (HPE) のような企業から機器を購入するという従来のモデルからの脱却」にもなっているという。「この動きがベンダー各社の状況を非常に揺るがしつつあります」

Fung氏によると、Fung氏によると、AWS社がデータセンター向けチップの開発で他の企業よりも進んでおり、報道ではネットワーク用チップの開発を検討中であるとされ、規模を拡大し続けているという。また、同社は数百万台のサーバを保有しており、「独自のチップや機器を作り始めることは理にかなっている」とした。

一方で、HPEやデルのようなOEMメーカーは昨年、クラウド市場のシェアを失っている。Fung氏は「多くの企業データセンターが徐々にクラウドに移行するなか、彼らの市場は縮小しています」と説明している。

こうしたベンダーは損失を埋め合わせようと、ハイブリッドクラウドやマルチクラウドサービスのサポート、独自のコンピュートプラットフォームやストレージプラットフォームなど、より機能豊富なソリューションを提供して売上を伸ばそうとしている、と氏は言う。また、「Apex」（デル）や「GreenLake」（HPE）といった従量制モデルを利用して顧客の拠点にサーバーラックの展開を行っている。

エッジコンピューティングがもたらすデータセンター市場の新たなチャンス

「従来のプロバイダは、エッジコンピューティングのような新しい市場にも目を向けています」 とFung氏は言う。主要OEMメーカーはほぼいずれも、将来の拡大に向けた上位3つの取り組みの中にエッジコンピューティングを含めている。

現在、この市場には立場を確立したベンダーや目立ったソリューションがなく、OEMメーカーにもチャンスがある。とはいえ、この分野にはハイパースケーラーも参入してきている。Fung氏は特に、Amazonがエッジ展開の規模を拡大し、ネットワークの拡張として小売店舗を建設し続けていることに触れた。

エッジコンピューティングは今後5年間で大幅な成長を遂げ、一部の分野では現在の小さな数字から3桁の成長を遂げるだろうというのが氏の予測だ。とはいえ、その成長を維持するためには、「コミュニティが協力していくつかの標準を確立することが重要」であるとした。

さらに重要なのは、需要を喚起するようなサービスを市場が開発する必要があることだ。Fung氏は、マルチクラウドゲーム、産業オートメーション、自動運転など、「新しいアプリケーションに価値を見出すためには、企業であれ消費者であれ、エンドユーザーからの需要が必要です」と話す。レポートによると、これらのアプリケーションは遅延の影響を受けやすく、MEC（マルチアクセスエッジコンピューティング）ノードをセンサーと一緒にネットワークエッジに配置する必要があるという。

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