AWS、Azure、Google Cloudのマーケットプレイスが急成長へ
Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)といった世界有数のハイパースケーラーが展開しているマーケットプレイス事業は、今後数年にわたって爆発的に成長することが予測されている。クラウド市場は全体として順調に成長しており、今年はデータセンターの拡張が進んでいるが、そうした流れがさらに強まることにもなりそうだ。
シンガポールの調査会社Canalysの予測によると、クラウド大手による法人向けの売上高のうち、マーケットプレイスによるものは、昨年の160億ドルから大幅に拡大し、850億ドルに達することが見込まれているという。「デジタルファーストを実践している買い手」が成長要因となり、「法人顧客の調達方法やベンダーの販売戦略、チャネルモデルのあり方が様変わりしていく」とした。
クラウド大手は今後、法人向けの販売チャネルを現在の直販からマーケットプレイスを通じた販売にシフトしていく。利益率に関する懸念があることはたしかで、ハイパースケーラーとマーケットプレイスに参加するベンダーは、いずれも期待利益を修正していく必要がありそうだ。
「チャネルパートナーはマーケットプレイスの台頭に懸念を抱いていますが、ハイパースケーラーもベンダーも、導入や売上を促進するうえで、チャネルパートナーが重要な役割を果たしていることは理解しています」。チーフアナリストのAlastair Edwards(アラステア・エドワーズ)氏が述べている。「顧客が信頼できるパートナーを通じて購入する方がよいと考えるケースもよくあります。複雑な技術製品を複数のマーケットプレイスで調達する場合などは、クラウド契約の管理に関する支援やプロによるサービス、専門技術を利用できるようにしたいのです」
Canalysによると、ハイパースケーラー各社のマーケットプレイスに参加しているベンダーのなかでも、いち早く販売高が10億ドルを上回り、喜びの声を上げたのがCrowdStrikeやSnowflakeだという。これを受けて、Cisco、IBM、Broadcom、Salesforceなどもマーケットプレイスへの取り組みをさらに進めている。
AIでクラウド需要が急増
ハイパースケーラーには、もともと高いクラウド需要が寄せられている。
Canalysの調査では、第2四半期、世界のクラウドインフラサービス市場売上高が前年同期比で19%急増し、780億ドルを超えた。このうち63%をAWS、マイクロソフト、GCPの3社が占め、引き続き優位を保っている。
3社の増収率は、AWSが前四半期比19%増、マイクロソフトはさらに堅調で29%増、Googleがトップで30%増となっている。Canalysによると、市場の残り3分の1をその他のハイパースケーラーが占めている一方で、「市場が上位のハイパースケーラーに移行しており、3社がシェアを拡大しつつある」とした。
AI利用の急増で、シェアの拡大に拍車がかかる可能性もある。3社はいずれも「AIを利用する顧客の大幅な急増」に触れているという。
調査会社ISGが最近発表したレポートによれば、一般的な大手企業が使用するAI対応アプリケーションの数は、今年末までに2倍近くに増える見込みだという。2023年末に平均250個だったところから、2024年末には488個になるという予測だ。
「新技術の商業化は一夜にして成るものではありません」。バイスプレジデントのAlex Smith(アレックス・スミス)氏が述べている。「クラウドコンピューティングの前途が有望なことには変わりありません。AIのような革新的なツールを前にすれば、主要なプロバイダーは乗り遅れるのを恐れて投資をするものです。AIは大規模な計算能力やストレージに依存することから、ハイパースケーラー各社は、今度はAIを搭載したサービスが顧客のクラウド移行を促す有力な材料になることを願っています」
クラウド大手は現在、AIが生み出した需要に対応すべく、データセンターの容量拡大を急いでいる。
米調査会社Synergy Research Group(SRG)が発表した最新レポートによると、ハイパースケーラーが現在世界中で運用している大規模データセンターの数は合計で1,000か所を超え、容量にして世界のデータセンターの41%を占めているという。確保している容量のうち、半分強がみずから構築したデータセンターによるもので、残りは賃借した施設によるものとなっている。
ハイパースケーラーの容量は拡大し、世界のオンプレミスデータセンターの容量合計(全体の37%)を上回るようになった。6年前にはオンプレミスデータセンターが全体の60%近くを占めており、現在の状況は、当時と「まったく対照的」なものになっているという。
今後の数年間で、この割合はさらに増えそうだ。SRGの予測では、2029年までに、ハイパースケーラーが世界のデータセンター容量に占める割合は60%に達し、オンプレミスの施設が占める割合はわずか20%に減少するとしている。
「企業が自社のデータセンターのハードウェアやソフトウェアにかける金額は、2012年にはクラウドインフラサービスに費やす金額の12倍もありました。現在では、クラウドインフラサービスの方に3倍多く支払いをしています」。チーフアナリストのJohn Dinsdale(ジョン・ディンズデール)氏が述べている。「そのほかにも、SNSやEコマース、オンラインゲームなどの個人ユーザー向けデジタルサービスや、SaaSが大きく伸びています。こうした傾向によって、ハイパースケールデータセンターが急成長する結果となりました」
電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime
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