クラウド市場の競争は2021年第3四半期も静かだった。Amazon Web Services（AWS）社がまたしても支配的優位を保ち、その勢いは衰えることを知らない。

米市場調査会社Synergy Research Groupの報告によると、第3四半期はクラウドに対する投資額全体のうちAWS社が33％を獲得し、次いでMicrosoft Azure社が20％、Google Cloud社が10％で続いた。エンタープライズ企業によるクラウドインフラへの投資額が前年同期比で37％増加したことを受け、クラウドインフラサービス市場の総売上高は454億ドル（約5兆1,200億円）に達したという。

クラウド市場の規模がどの程度かについては推測の域を出ない。Microsoft社をはじめ、すべてのクラウド事業者がパブリッククラウドの売上を具体的な数字で開示しているわけではないからだ。当然、推定値にはさまざまなものがある。

シンガポールの調査会社Canalysでは、世界全体のクラウドインフラサービスへの支払総額は35％増の494億ドル（約5兆5,700億円）に達したと推定。リモートワークや遠隔教育に加え、業界特化型クラウドアプリケーションの利用増が大きな成長につながっているという。第3四半期のAWS社がクラウド関連売上を前年同期比で39％伸ばしたことから、クラウドインフラサービスへの支払総額のうち同社が32％を獲得したと推測している。Canalys社によると、Microsoft Azure社は5四半期連続で50％以上の成長を遂げ、第3四半期末時点の市場シェアは21％、Google Cloud社は54％成長し、市場シェアは8％となっている。

クラウド事業者に半導体不足の影響が及ぶ可能性

Canalys社のリサーチアナリスト、Blake Murry氏の指摘によると、現在はチップの生産能力が追いつかないほどコンピュートの需要が拡大しており、一部のクラウド事業者でインフラ拡大計画に制限が出てくる可能性があるという。

「パンデミックが始まって以来、顧客のユースケースはますます多様化し、需要に拍車をかけています。そうした中で強みを構築するべく、各事業者はサプライチェーンを可能な限りうまく管理することに加え、製品ポートフォリオを開発して市場参入チャネルを開拓し、多様なユースケースに対応していくことに注力しています」。Murray氏はレポートで述べている。

世界的なチップ不足は「今にもクラウド事業者に影響を与えうる」とCanalys社は警告する。これが現実になればデータセンターコンポーネントのプロバイダーでリードタイムが長期化し、価格が上昇して最大手のクラウド事業者に転嫁されることになるという。

Canalys社によれば、同四半期、AWS、Microsoft Azure、Google Cloudのクラウド大手3社は合計でクラウド投資総額の61％を獲得したという。Synergy Research Group社では3社のシェアを合計63％としている。また、パブリッククラウド分野ではこの3社がさらに顕著な優位性を見せ、市場の70％を支配したとした。

また、パブリッククラウドのIaaS・PaaSサービスが市場の大半を占め、全体で前年同期比39％の成長率を示したという。

また、上位3社がこの市場の売上や注目の多くを占めてはいるものの、他のクラウド事業者も第3四半期は170億ドル（約1兆9,200億円）の売上を上げており、前年同期比27％の増加だとした。

「170億ドルの市場がこれほどのペースで成長しているというのは、多くのサービス事業者やそのサプライヤーにとってどう考えても魅力的な機会です」。Synergy Research Group社のチーフアナリスト、John Dinsdale氏はレポートの中で述べている。

「とはいえ、ここには大手3社という問題があることは明らかで、彼らと真っ向勝負はしないことが肝要です」と氏は続けている。「プロバイダーというものは、適切なアプリケーションや顧客グループをターゲットとすることにかけては賢明なものです。クラウドという分野は彼らにとって、エキサイティングで幅広い成長機会となり得るでしょう」

https://www.sdxcentral.com/articles/news/amazons-unremitting-power-ices-q3-cloud-wars/2021/10/