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文:Dan Meyer

AppleとGoogle、プライバシーをESGの一部と位置づける

AppleとGoogle、プライバシーをESGの一部と位置づける

【左から】Google社最高プライバシー責任者(CPO):キース・エンライト(Keith Enright)氏、Apple社CPO:ジェーン・ホバース(Jane Horvath)氏、LinkedIn社バイスプレジデント兼CPO:カリンダ・ライナ(Kalinda Raina)氏、メイヤー・ブラウン法律事務所パートナー弁護士、サイバーセキュリティおよびデータプライバシー分野、グローバルデータイノベーション業務リーダー兼アドテクプライバシー・データ管理業務リーダー:ドミニク・シェルトン・ライプツィヒ(Dominque Shelton Leipzig)氏

 

【サンフランシスコ】消費者や企業が取引相手の企業を選択・評価する際に使用する重要なモデルとしてはESG(環境・社会・ガバナンス)があるが、AppleGoogleLinkedIn3社はこれにプライバシーとセキュリティが加わるだろうという意見で一致している。6月上旬に開催された米RSAカンファレンスのうち、各社幹部を揃えた基調講演の中でこのコンセンサスが取り上げられた。

LinkedInのバイスプレジデント兼最高プライバシー責任者(CPO)、カリンダ・ライナ(Kalinda Raina)氏によると、ESGにプライバシーを含めようという動きは過去10年に渡って見てきた変化だという。

「私たちは自社のプライバシーに対する意識を高め、理解を深めようと懸命に努力してきました。今では一般の人々も関心を示し始めています」。ライナ氏は言う。「本当にわくわくするような変化が起きています。人々の企業に対する認識や評価の基準が、データをどう扱っているかですとか、私たち企業が次のようなテーマに対してどのような考え方をしているかということになってきているのです――プライバシーの扱い方ですとか、ごく率直に言うならば、信頼性やセキュリティ、安全性、プライバシー、環境への取り組み方、多様性への取り組み方などに関わるすべてです」

ライナ氏の説明によると、次の20年の「商用インターネット」では、インターネットセキュリティシステムの提供企業が消費者や企業からの信頼を高める必要があるという。

「昨日、ある人と話をしたのですが、その人はプライバシーを表す “P “を付けてESPGにするべきだと言っていました」。ライナ氏は言う。 

Googleのキース・エンライト(Keith EnrightCPOはこのテーマについて、ライナ氏よりもグローバルかつ時事的な捉え方をしている。「世界中の民主的な価値観や社会制度」を維持し守る上で、テクノロジーが重要な役割を果たす必要があると語った。「(前略)こうした対話の中では、技術事業者の責務というテーマがかつてないほど中心的なものになっています」

また、投資家もこうした動きに大きな関心を寄せているとともに、ESGやプライバシーに関して企業がお粗末な意思決定をすれば収益に影響を与える可能性もあると述べた。この点についてはパネルディスカッションのモデレータを務めた法律事務所メイヤー・ブラウンのドミニク・シェルトン・ライプツィヒ氏も賛同した。同事務所にはブラックロックやバンガードなどの投資会社から「具体的な企業のプライバシーの状況に関する」質問票が届くという。

「これは私には避けて通れないことのように感じられますし、一時的なものだとも思いません」とエンライト氏は語った。「これは私たち全員が責任を持って取り組むべき問題ですし、プライバシーとセキュリティの分野の実務家にとっては実に面白い時代になると思います。私たちは話題の中で欠かせない要素になるでしょう」

Appleのジェーン・ホバース(Jane HorvathCPOは簡潔にこう述べている。「Appleでは(プライバシーを)ESG価値として扱っています。企業価値の1つなのです。当社の役員は全員がESG価値の一環としてプライバシーに関する説明責任を負っています」

他ベンダーの取り組みでもプライバシーとESGには同様の関連性を持たせている。

シスコのコーポレートアフェアーズ担当バイスプレジデント、メアリー・デ・ウィソッキー(Mary de Wysocki)氏は今年、世界のWebトラフィックの85%以上がシスコのサーバを経由していることから、同社には「シスコ製機器が責任ある方法で製造、販売、使用されることを保証する」責務があると話している。

氏によると同社のステークホルダーにとって重要なESGテーマが18個あるが、その中でもデータセキュリティとプライバシーを優先することがこれに含まれるという。

「プライバシーは単なるコンプライアンス上の義務ではありません。基本的人権であり、顧客の信頼を築き維持するために不可欠なビジネス上の必須事項です」と氏。顧客がさまざまな場所で仕事をし、ますます多くの脅威に直面すれば、顧客のデータを保護するシスコの義務は拡大するということだと説明している。

 

AppleGoogle、友好的なライバル関係を維持

AppleGoogleLinkedInは同様の成果を挙げているが、そこに至るまでの道のりは全く異なるものだ。それが浮き彫りになったのは、ホバース氏が「他の」プラットフォームを当て擦ってわずかに言い争いになった際のことだった。 

「当社はアプリの審査を実施しているため、他のプラットフォームに比べてマルウェアが98%少なくなっています」。ホバース氏はAppleApp Reviewプログラムを説明した際に述べている。開発者がiOSApp Storeへの登録を希望している全てのアプリを評価するプログラムだ。

この発言にエンライト氏は即座に反応した。「ジェーンと私はほとんどのことで意見が一致していますが、iOSでもAndroidと同じようにノートパソコンでインターネットからアプリをインストールできると言っておくことは大事だと思います」。「当社としては、各プラットフォーム企業がプライバシーの面で競い合うことによるメリットも考慮して頂かなければならないと考えています。この件に関して言えば競合するアプリストア同士を競わせておくことです。メリットがあることは自明だと思いますし、マルウェアが98%少ないという数字がよく利用されていますが、私はこの統計にも異議を唱えたい。私たちは裏付けとなるような査読済みの認められた研究を見たことがありません。……(中略)……私たちは概ね意見の相違よりも一致する部分の方が多いのですが、プラットフォームやアプリストア事業で健全な競争を可能にするのはまだ道半ばと思われるという考えについては、互いに敬意を持ちながらも意見を異にすることができると考えています」

 

https://www.sdxcentral.com/articles/news/apple-google-position-privacy-as-part-of-esg/2022/06/

Dan Meyer
Dan Meyer Executive Editor

Dan Meyer is Executive Editor at SDxCentral, with a focus on containers, lifecycle service orchestration, cloud automation, and DevOps. Dan has been covering the telecommunications space for more than 20 years. Prior to SDxCentral, Dan was Editor-In-Chief at RCR Wireless News. You can contact Dan directly at: dmeyer@sdxcentral.com, on Twitter at: @meyer_dan, or on LinkedIn at: dmeyertime.

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