VMwareのプライベートクラウドとAI=BroadcomのCEOが未来を語る
米BroadcomによるVMwareの統合が完了した。8月に開催された「VMware Explore」でHock Tan(ホック・タン)CEOが基調講演に登壇し、隠喩的な表現で発表している。買収を完了してからの9か月間の歩みを称え、VMwareの未来はプライベートクラウドとAIにあると語った。
Tan氏はまず、VMwareは以前とまったく異なる事業、Broadcomが700億ドル近くを費やして目指した事業になったと明言した。
「今年のExploreはこれまでと違うものになっています。残念に思われるかもしれませんが、(中略)それは私たちが真面目なビジネスパーソンだからです。皆さまもそうでしょう。Broadcomはビジネスを目的としていますし、このイベントでも皆さまが事業をさらに効率的に運営できるようにお手伝いをいたします」と氏。「何かぴかぴかの、素晴らしいものをお見せしたり、そうしたものについての話をしたりするわけではありません」と宣言した。
氏の講演はこのように始まり、大半の内容は、この10年の間に顧客企業がどのように複雑さや課題に対応してきたかについて、パブリッククラウドの利用が増えた関係とともに語るものだった。
「10年前、世のCEOや取締役会がパブリッククラウドの将来性に惚れ込み、会社をその方向に向かわせました」と氏。「そのせいで、みんなトラウマを抱えてしまったのではないでしょうか」
パブリッククラウドの導入にはコストや複雑さに関する課題が付いて回り、企業はこれに対応しなくてはならず、そうした状況がトラウマにつながっているという。
「パブリッククラウドは想像もできないほど高価なものです」と氏。「複雑さについても、管理すべきプラットフォームやレイヤーがもう1つ追加になるわけです。また、コンプライアンスを遵守するとなると――規制やポリシー要件がある場合ですが――さらに複雑になり、さらに費用がかかることになります」
複雑さという問題には、パブリッククラウドのレガシーなインフラ構成が関係している。企業が特定のニーズに合ったベストオブブリードのプラットフォームを選べる一方で、多くの場合、企業側はリソースの連携ができない状況になっているのだ。
「ちょっと自社の環境にある目隠しの裏側を見てみましょう。パブリッククラウドに移行したそもそもの理由がそこにあります。改善の余地がたくさんあるはずです」と氏。「データセンターのレガシーを引き継いで、コンピューティングもストレージもネットワークも、すべてベストオブブリードになっていないでしょうか。大変なサイロ化です。サイロ同士はうまく連携するものではないのでどうにもしようがないですし、内部顧客にサービスを提供するのにも骨が折れるでしょう。どこかに不具合が出れば、よくあることですが、責任の所在探しが始まります。レジリエンスも下がります。根本原因を見つけるのに何日もかかります。新しいアプリケーションを導入する際には、ITチームにチケットを発行しなくてはならず、仮想マシンを手に入れるのに2か月もかかるかもしれません」
費用面に課題があるという点については、VMwareの買収が完了してからというもの、Broadcomに対する最大の懸念事項になっていることでもある。VMwareサービスの価格設定とライセンスモデルが変更された結果、長期顧客の支払いが大幅に上昇し、その多くが代替製品を探しているのだ。こうした状況が何度もアナリストに取り沙汰されている。
これに対して、Broadcomは何度も反論しており、VMwareと法人顧客の双方にとって有益な変更であることが実証されていると述べている。その一方で、一部の大口顧客に対して価格変更に柔軟な姿勢を見せてもいる。
また、長期顧客に対して新しいサブスクリプションライセンスモデルに移行してもらう取り組みを進めており、直近の決算説明会でTan氏がその進捗具合を投資家に伝えている。「既存の最大顧客10,000社のうち、3,000社近く」が契約に至ったとした。「こうしたお客様には、おおむね複数年契約を結んでいただいています」。契約額を年率換算すると、今年第2四半期の総額は19億ドルとなり、第1四半期の12億ドルから増加している。
「進捗は順調です」と氏。「まだ決して完了したわけではありませんが、期待通りに移行が進んでいます」
Broadcom VCFがアップデート―AIも強化
Broadcomがサブスクリプション契約を推進していくうえで――パブリッククラウドの利用に伴う複雑さとコストを軽減するうえでも――重視しているのが、新しくアップデートしたVMware Cloud Foundation(VCF)プラットフォームだ。BroadcomのVMware事業で中核を担う製品となっている。
イベントではアップデート内容が多数発表され、企業インフラ管理向けのさらに堅牢な集中管理プラットフォームとなった。例として、管理がしやすくなるユーザーインターフェイスを備えたセルフサービスクラウドポータルが追加され、インサイトも強化されている。インポート機能とストレージ管理がアップデートされ、NVIDIAとの統合製品「VMware Private AI Foundation with NVIDIA」ではセキュリティ管理支援が提供される。
VMware Private AI Foundation with NVIDIAは昨年のVMware Exploreで発表されたもので、企業向けにストレージやネットワークのパフォーマンスを高速化し、導入プロセス、TTV(タイムトゥバリュー)を短縮する製品だ。優れたプライバシーと柔軟な選択肢を提供し、パフォーマンスやデータセンターの拡張性を改善するとともに、コスト削減も可能となっている
今年5月に一般提供を開始、今回のイベントでモデルストアマネージャーの追加が発表された。パブリックインターネットからモデルをダウンロードしたり、構成したりできるようになっている。
プレスブリーフィングの場で、VCF製品担当バイスプレジデントのPaul Turner(ポール・ターナー)氏が説明したところによると、同機能はモデルのキュレーションを行い、モデルへのアクセスを制御するもので、「サポートしたくない、汎用の」LLMを「誰も使用しないようにすること」ができるという。
「インターネット上のLLMは、出所や、どういうルートを通ってきたのかがわからなくなります。この方法であれば、ユーザー全員のLLMを管理して、各ユーザーが自分の使っている生成AIを起動して、プラットフォーム上で実行できるようにすることが可能です」
他に発表された内容としては、インテルの「Gaudi 2 AIアクセラレータ」が新たにサポートされている。チップの選択肢がさらに広がった。
VCFのアップデートには、クラウドネイティブアプリケーションプラットフォーム「Tanzu」を支える基盤が拡張されたという意味合いもある。Tanzu自体もバージョン10にアップデートされ、新機能が追加された。例を挙げると、VMwareの各種AI製品のサポートが強化され、デプロイ管理がしやすくなるアプリケーション中心の管理レイヤーが追加され、外部ネットワークと切り離された、エアギャップ型のプライベートクラウド環境に対するサポートが強化されている。
米調査会社Futurum Groupのレポートでは、リードプリンシパルアナリストのPaul Nashawaty(ポール・ナシャワティ)氏が次のように述べている。今回のアップデートによって、Tanzu 10は「Red Hat OpenShift」「Amazon Elastic Kubernetes Service」「Google Kubernetes Engine」のような競合の類似製品よりも競争上の優位に立った。その理由は「VMwareエコシステムと深く統合された製品」になっているためで、企業によるクラウドネイティブアーキテクチャへの移行、特にVMware製品をすでに利用している場合の移行がスムーズにできるようになっている。
Broadcom CEO Hock Tan touts VMware’s private cloud, AI future
電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime
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