米Broadcom 、VMwareのエッジ事業をAI向けに再構築
VMwareがソフトウェア定義エッジ(SDE)事業の方向性を改める。親会社のBroadcomが発表した。エッジ環境でのAI利用が急増し、法人顧客からの需要やニーズが変化しているためで、こうした状況に有利に対応することが目的だ。
先月、「VMware Explore」の開催に先立ってプレス向けの事前ブリーフィングが開かれ、BroadcomのSDE部門担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー、Sanjay Uppal(サンジェイ・ウパール)氏が説明に立った。エッジAIのユースケースに対する注目度が劇的に変化するなか、従来型の、垂直市場を指向した考え方を打破する必要に迫られたという。なお、Broadcomの考えるエッジAIとは、エッジにAIを配置し、エッジでAIを実行、利用できることだとしている。
「これまでのSDEの考え方は、あくまで垂直市場を指向し、業種ごとにソリューションを用意するものであったように思います」と氏。「ですが、エッジAIが登場し、インフラ領域で水平市場向けの取り組みがなされるようになっています。当社もそうした事業を市場で展開しようとしています」
具体的な内容となるのが、エッジ接続機器の新製品や統合型SASEの提供、「VMware Edge Compute Stack(ECS)」のアップデートだ。
機器については、「VMware Velocloud SD-WAN Edge」の製品ラインに新しく3機種が加わる。接続オプションが複数追加され、エッジ拠点でスループットの需要の変化に対応しやすくなる。企業による導入が進む5G固定無線アクセス(5G FWA)のサポートが強化され、新しく衛星接続オプションも加わる。
Uppal氏の説明によると、データ伝送の向きに変化が起きており、対応するのにこうした接続オプションが役に立つのだという。
「FWA接続の現状としては、ブロードバンド接続を上回る成長をしています」と氏。最近の傾向として、FWAの接続数が有線ブロードバンドの新規接続数をしのぐ勢いで伸びているという認識を示した。「また、(FWAを)光回線と組み合わせたり、衛星通信と組み合わせたりすれば、それぞれを個別に使用するよりも、はるかに対称性の高いネットワークが得られます」
エッジAIの需要が拡大していることで、上り/下りの伝送速度の差を縮める必要性は高まっている。Uppal氏の話では、Broadcomがそうしたことを確認できるのは、VeloCloud製品が広く利用されているためだという。
「何が起きているのかというと、シンプルな話で、チャットボットを見てみますと、トラフィックの性質が変わっているのです」と氏。実例を1つだけ挙げて説明した。「もはや私たちが思っていたような、非対称なトラフィックではなくなっていました。エンドポイントからのトラフィックが大きく増えているのです」
氏によると、増えているのはLLMのトラフィックで、トレーニングや推論にはエンドポイントとの間で上り/下り両方のトラフィックが必要になるのだという。こうしたトラフィックの増加や実際のデータ伝送の様子を踏まえると、もっと多様な接続を識別、選択できるようにするとともに、SD-WANでリアルタイムに管理できるようにして、需要の変動に対応し、可用性を確保することが必要だと語った。
「現在の状況をみますと、アンダーレイでは無線に関するさまざまな取り組みがなされ、プログラマブルになっていっています。そしてオーバーレイについても、こうした新しいタイプのワークフロー、つまりエッジAIのワークフローですが、これに対応しようとあらゆる構築が進められてきました」と氏。「これには私たちも本当にわくわくしています。というのも、エッジAIと、そうした新しいワークロードに対応可能なネットワークを組み合わせるというのは、当社もSDEの観点から進めていることだからです」
「VMware SASE」と「VMware Edge Compute Stack(ECS)」
Broadcomはさらに、シングルベンダーSASE基盤で使用しているVeloCloud SD-WANとSymantec SSEの統合を強化、エッジAIのセキュリティを支援する。Uppal氏によると、エッジAIのユースケースでレジリエンスとセキュリティの監視、管理を支援するために必要な強化だという。
「SD-WANについては、新しいワークロードに対応できる機能を導入したほか、ソフトウェア定義環境にも対応できるように拡張し、さらにSymantecとVeloCloudの製品間で共通の(PoP)を使用する予定です」
また、VMware ECSでは先日のアップデートでトラフィックの変化を管理できるようになり、VeloCloud SD-WANで提供されるインサイトも増えている。これらを利用することで、一般にエッジで保持されたり利用されたりするSLM(小規模言語モデル)に対応することが可能だ。
「SLMについては、かなり急激に変化が起きています」と氏。「SLMはエッジに配置するごく小さなモデルで、業務の最中にその場で必要な判断を下せるようにトレーニングされています。ECSはプル型のアーキテクチャになっていて、全体を管理することが可能です」
「(ECSとVeloCloudを組み合わせることで)こうした新しい用途を支えるネットワークとスタックが、1つのパッケージですべて手に入ります」と語った。
電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime
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