米Broadcom、第2世代のネットワーク用チップを発表=策定前のWi-Fi 7標準を後押し

ワイヤレスネットワークの分野で次に大きな注目を集めそうなのがWi-Fi 7だ。
米半導体メーカーのBroadcomが20日、第2世代となるWi-Fi 7対応無線接続チップを発表した。従来のWi-Fiでは不可能だった水準の帯域幅・速度を実現、周波数帯の活用を進められるとしている。
Wi-Fi 7規格はIEEE 802.11beという正式名称でも知られる。同規格を含め、有線・無線ネットワークプロトコルの主要規格をいずれも定めている標準化団体IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)では、EHT(Extremely High Throughput)という名称も使用している。Wi-Fi 7はWi-Fi 6の後継規格に当たる。Wi-Fi 6は2019年、IEEE 802.11axという正式名称でリリースされている。
Broadcomはすでに第2世代のWi-Fi 7チップの展開を進めているが、注意しておくべき重要事項が1つある――Wi-Fi 7はまだIEEE標準として承認を受けたわけではない。最終承認は2024年秋以降になるというのがIEEEの現在の見通しだ。いずれにせよ、Broadcomはこれについて問題ではないとしている。
「Broadcomのチップは(標準化前ですが)Wi-Fi 7標準との前方互換性があり、認証が可能になりましたら取得いたします」。ワイヤレス通信・接続部門の製品マーケティングディレクター、Gabriel Desjardins(ガブリエル・デジャルダン)氏が米SDxCentralの取材で語った。「過去の新製品リリースと同様です」
Wi-Fi 7とは何
新しいWi-Fi標準が常にそうであったように、Wi-Fi 7も高速大容量化が進んでいる。Desjardins氏によると、Wi-Fi 7を利用すればネットワーク全体の容量が向上するという。
「Wi-Fi 7対応のクワッドバンドAP(アクセスポイント)はWi-Fi 6E対応の同等のAPと比較して総スループットが50%以上高くなります。Wi-Fi 6E対応のAP自体もWi-Fi 6対応のAPを50%近く上回るものです」と氏。「また、確実なサービス品質を必要とするクリティカルなサービスに利用する場合、レイテンシも向上するでしょう」
Wi-Fi 6EはWi-Fi 6(802.11ax)規格を拡張し、6 GHz帯の利用を可能にしたものだ。Wi-Fi 7では320 MHzのチャンネル幅を利用でき、Wi-Fi 6Eと同じ6 GHz帯の利用をさらに進める形となる。Wi-Fi 7の重要な特徴としては、他にも4K QAM(Quadrature Amplitude Modulation)という機能が知られており、最大でWi-Fi 6の4倍の信号密度を実現可能となっている。
Desjardins氏によると、6 GHz帯に限らずあらゆる周波数帯にWi-Fi 7の恩恵はあるという。たとえば、MLO(Multi-Link Operation)では2.4 GHz帯と5 GHz帯のみで動作するデバイスについてもレイテンシを低減することができる。また、6 GHz帯は今後の高性能Wi-Fiに不可欠であり、無線で100 Gbpsの家庭用ブロードバンドを届けるにも必須の周波数帯だと氏は言う。
「Wi-Fiの未来はそういったものになります。また、(Wi-Fi 7は)大手通信事業者各社が展開を始めているマルチギガビット ブロードバンドを活用するのに必要な容量をももたらしてくれるでしょう」と氏。「当社がさまざまな価格帯の最終製品に幅広くご利用いただけるWi-Fi 7チップを複数種類ご用意したのはそのためです」
BroadcomのWi-Fi 7チップ
Broadcomの第1世代のチップはすでに生産が開始されており、AsusやTP-Link、Netgearなどのベンダーからすでに多数のアクセスポイントが発表されている。
第2世代の製品群によってWi-Fi 7の市場はさらに広がるとDesjardins氏は言う。今回発表されたWi-Fi 7チップのうち、「BCM47722」「BCM4390」はZigbeeやIoT向けのThread、最新のBluetoothといった通信規格をサポートしている。
「最初の導入は例によって小売店のアクセスポイントで進んでいます。いつも市場をリードしているセグメントです」と氏。「当社の第1世代チップを搭載したモバイルデバイスや
エンタープライズ アクセスポイントがまもなく市場に登場する見込みです」と語った。
Broadcom’s 2nd gen networking silicon pushes Wi-Fi 7 future standard


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