液浸冷却はデータセンターのカーボンフットプリントを抑制できるか

データセンターでの液浸冷却(熱を吸収する鉱物油の中にサーバを沈める冷却方法)は、市場のごく一部でしか行われていない。しかし、米調査会社Dell'Oro Groupのアナリスト、Lucas Beran氏によれば、データセンターでの熱管理に対する懸念が高まる中で、液浸冷却の導入が急増する転換点が近づいているという。
従来の空冷システムは「データセンターの熱を管理し、効率的に除去するのに非常に適しています」とBeran氏は言う。しかし、熱負荷の密度が高くなると空冷方式の効果は低減する。
「より多くの熱を除去し続けるためには、基本的により冷たい空気を送り込むか、空気の移動速度を速める必要があります。そうすると運用費用やエネルギー消費が増えることになります」。Beran氏は説明する。
「より高密度なコンピューティングを展開するという観点から言えば」、電気使用量の削減、運用効率の向上、データセンター全体の二酸化炭素排出量の削減を目指すためには、「(液浸冷却は)必要不可欠なものになり始めています」と氏は言う。
液浸冷却システムではサーバから発生する熱を鉱物油が取り込む。その熱は冷媒分配ユニット(CDU)に送られ、熱交換器によって別の液体 (通常は水) に伝達される。この水は冷却され、大気中に放熱する。あるいは温水ループを通過し、冷却塔から放熱する。
「(液浸冷却で)エネルギーが必要になるのは、CDUがラックに液体を送り込み、熱を取り込み、ラックから送り出す部分だけです」。Beran氏は説明する。
冷却ファンなどの電気機器のような、熱を除去するための可動部分が少ないため、液浸冷却システムの導入にかかる資金は従来システムと比べて少なくて済む。「熱を除去するために消費するエネルギーも少なくて済みます」とBeran氏。
Beran氏はブログ記事の中で、液浸冷却では従来の空冷システムと比較して運用コストをトータルで33%削減できると述べている。10年間のTCO(総保有コスト)については、「液浸冷却方式のデータセンターは従来の空冷方式のデータセンターの半分のコストで運用することが可能です」と付け加えている。
次のステップはハイブリッドな冷却環境
Beran氏によると、液浸冷却は3~5年以内に「(熱管理への)有力な対処方法」になるという。とはいえ、短中期的には、従来の空冷式と液浸冷却を両方使用するハイブリッド環境での導入が始まる可能性が高いとした。
「そうしたハイブリッド環境ではまだ従来のインフラを利用する必要があるため、必ずしも(すぐには)コスト削減にはつながらないでしょう」とBeran氏は指摘する。
液浸冷却はスーパーコンピューティング分野で最も普及しているが、エンタープライズ分野でも利用され始めている。「必ずしもスーパーコンピュータを運用している人々だけが(液浸冷却を)必要とするわけではありません」とBeran氏は言う。
変化のうねり
液浸冷却はデータセンターのネットゼロ化を果たしてどこまで進められるだろうか。Beran氏によると、データセンターの二酸化炭素排出量を削減するソリューションのうち、約25%を液浸冷却が占めているという。
また、運用面でのエネルギー消費を抑えるだけでなく、持続可能なイノベーションを実現する手段にもなる。液浸冷却データセンターでは効率が向上するため、「コンピューティングリソースをより広範に提供できるようになります。これまで解決できなかった問題を解決する援けとなれるかも知れません」とBeran氏は説明する。
しかし、データセンター業界全体にみられる変化に対する恐れが障害となる可能性はある。液浸冷却を普及させるためにはそれを乗り越えなければならないかも知れない。「データセンター業界の人々は、この恐怖を放置したままにしていると思います。それによってイノベーションを止めないまでも遅らせているのではないでしょうか。変化をもっと早く進めることは可能だと思います」。Beran氏は述べている。

Emma Chervek is a reporter at SDxCentral covering environmental sustainability and cloud-native ecosystems. Emma lives in Denver with her dog Koby, and they go on the best walks in the world together. Emma can be reached at echervek@sdxcentral.com or @emmachervek on Twitter.

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