無線LAN市場の第2四半期はシスコ、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ（HPE）、ジュニパーネットワークスがそれぞれのセグメントをけん引、記録的な水準に引き上げた。米調査会社デローログループ（Dell'Oro Group）が報告している。とはいえ、地政学的な問題によって世界の大半の地域が中国とは隔たりのある状況が続いており、同市場は現地のベンダーが支配している。

報告によると、第2四半期は供給不足が続く中でも出荷台数が増加しており、このうち3分の2以上をHPEの「Aruba」事業とジュニパーの「Mist」事業が占めたという。加えて価格設定が昨年比で平均10%上昇したことで、同四半期の無線LAN機器市場は全体として規模が拡大、20億ドル（2,870億円）を突破した。

「第2四半期はHPEとジュニパーがにわかに問題を解決しました――中国以外の地域での出荷台数増加分は大半がArubaとMistによるものでした」。デローログループの無線LANリサーチディレクター、シャン・モーガン（Sian Morgan）氏が述べている。

モーガン氏によると、サプライチェーンの制約は向こう数四半期にわたって続く見通しで、シスコなどの一部のベンダーは機器の構築を続けるためにますます工夫をこらした対応を取るようになっているという。

「そうしたメーカーにしてみればもぐら叩きをしているようなものです。アクセスポイントに使用するある特定の部品を手に入れたと思ったら、また別の不足が発生するのです」。モーガン氏は述べている。「シスコは法人向けの『一括提供』を約束しており、あらゆる関連メーカーが創造的な解決策を見つけるのに忙しくしています。製品の再設計や仲介業者の利用、代理店を通さないルートで仕入れるなどしているようです」

シスコ経営陣の説明によると、前四半期は入手困難な部品をブローカーから調達することで受注残の一部を解消できたが、それにはコストがかかっているという。

「ブローカーのネットワークから購入すると、その分支払いが割高になります。粗利にもその影響が表れていることがお分かりでしょう」。CFOのスコット・ヘレン（Scott Herren）氏が述べている。この影響は新年度の第1四半期にかけても続くだろうと補足している。

こうした価格プレミアムは顧客企業に転嫁され、今後も同じ状況が続くと予想される。

「前年比で価格が上昇する四半期がこれほど連続して続くことは非常にまれです」。モーガン氏が説明している。「要因としてはメーカー各社がコスト増をカバーしようとしていることに加え、新たにWi-Fi 6E対応機器などのハイエンド製品が発売されていることがあります。今後に関してはこのような価格上昇にいつまで市場が耐えられるのか、私たちは自問自答しなくてはならないでしょう」

デローログループは今年、サプライチェーンの問題でベンダー各社の受注残が最大で通常の15倍に増加したと指摘している。

クラウド管理型無線WLANと中国

また、クラウド管理型アクセスポイント市場は引き続きシスコが支配したが、クラウド管理型無線LANではジュニパーが「大きな市場シェアを獲得した」ことも報告されている。

中国市場は貿易上の制約が続いているにもかかわらず第2四半期は堅調な成長を見せた。デローログループは特にファーウェイとH3に言及し、「「好調な四半期」だったとした。

ファーウェイ創業者の任正非（じん せいひ）氏は最近、国際紛争や貿易摩擦によって世界経済は10年低迷するという予測を述べており、危機を乗り越えるために従業員に対しては売上や規模を追求するよりも利益とキャッシュフローを重視するように促している。

https://www.sdxcentral.com/articles/analysis/cisco-hpe-juniper-power-wireless-lan-world/2022/09/