Cisco社、「周波数オークションは5G展開の阻害要因」と語る
Cisco社が米政府による周波数オークションの現行ルールを支持していないことは間違いない。同社によると、現在のルールは情報格差を埋めるための移動通信事業者の取り組みを抑制するものだという。
Cisco社のマススケールインフラストラクチャー部門本部長、Jonathan Davidson氏は、先月末に開催したイベント「Cisco Live」の記者会見で、ブロードバンドへのアクセスを拡大する計画に対し最近の周波数オークションが悪影響を及ぼしていると述べた。
「情報格差を埋めたいのであれば、政府は周波数帯を貯金箱のように扱うのをやめるべきだと思います。各国政府がやろうとしているであろうこととはおよそ反対のことです」とDavidson氏は言う。「各社は周波数帯を獲得するのに合計800億ドルを費やしました。このお金はタワーを設置し、ファイバーを敷設し、本当に必要としている人々やコミュニティに接続を提供することにはもう使えません」
Davidson氏の財務面に関するこのコメントは、最近行われた米連邦通信委員会(FCC)のCバンド周波数帯オークションを受けてのものだ。落札額は総計800億ドル(約8兆7400億円)を超えた。アナリストらは、この費用がかかったことで5Gネットワークの構築は減速する可能性が高いと指摘している。
米調査会社MoffettNathansonのアナリストらによると、今回のオークションは全米規模の通信事業者3社、特にAT&T社とVerizon社のバランスシートに「長期的なダメージ」を与えることになったという。同社のレポートには、「オークションでの過剰な支出によって(ここでは周波数帯の本質的な価値がいくらなのかについては判断せず、金額の大きさについてバランスシートの持続性という観点からのみ過剰としています)、5Gサービスを市場投入するための投資資金が十分でなくなる通信事業者も出てくるでしょう」とある。
その後の基調講演で、CEOのChuck Robbins氏は、ブロードバンド接続を拡大したいという政府幹部と話をしたが、周波数帯オークションに関する彼らの行動はその願いとは反対のものだったと述べた。
「特にワシントンD.C.では、世界中の政府の願い、率直に言えば自国のサービスプロバイダーに5Gへの移行を急がせたいという願いについて話をしたことがあります。そしてそのために、彼らは同時に周波数帯の付与に対して法外な額を請求したり、それどころかプロバイダーが消費者に転嫁できる価格の設定に深く関与したりしています」とRobbins氏は言う。「望む結果に反した行動もあったと言えます。ですがそうは言っても、サービスプロバイダーが周波数帯にそれだけの金額を支払うということは、彼らが堅牢な5Gネットワークの構築に専心しているということだと思いますし、それによっていずれは私たちにとっても良い結果がもたらされるでしょう」
Cisco社がこうした見解を示しているのは、RAN計画があることを意味するのか
こうした周波数帯コストの高さに対抗する方法のひとつとして、業界各社は5Gを支えるネットワークの展開コストを下げようとしている。これには、オープンRANへの取り組みのように、オープンなプラットフォームを強く推進することが含まれる。
Davidson氏は、通信業界は過去10年間で3兆ドル(約327兆7300億円)以上を費やしてRANインフラを構築してきたが、そのネットワークへのアクセス料を政府が監督していることで発展を阻害されてきたと指摘する。
「私たちの業界は正しいイノベーションの道筋を定めているとは思えず、必要とされるほどオープンではなく……(中略)……こうしたネットワークを構築するのに費用がかかりすぎているという問題を明らかに抱えています」とDavidson氏は言う。また、氏は、Cisco社はO-RANへの取り組みに初期から投資してきた1社であり、同分野のスタートアップ企業への資金提供を続けていると補足した。
Robbins氏が示唆したように、Cisco社はこうした投資機会について、さらなる機会を獲得したいと考えている。Davidson氏によると、こうした5Gネットワーク上でのエッジ展開を支えるオーケストレーションソフトウェアに対しては強いニーズがあるという。一方で、従来型のRAN分野における同社の存在感は徐々に低下し続けている。
米調査会社Dell’Oroグループの最近のレポートでは、Cisco社は2020年末の時点で通信市場向け機器ベンダーの第5位となっている。950億ドル(約10兆3800億円)近いこの市場の6%を占めたが、前年から1ポイントの減少だ。
Cisco社には、同レポートで注目している収益機会のいくつかが欠けている。たとえば同社にはRAN機器部門がなく、代わりにオープンRANへの取り組みに力を入れている。自社のソフトウェア製品をコモディティ化したRAN機器に組み込むことが可能になるためだ。これは同レポートに掲載されている他のベンダー各社がRANハードウェアに重点を置いているのとは反対だ。
Robbins氏は以前、5G用のRANハードウェアを自社で構築する予定はないと述べている。氏は2019年7月、「当社には5Gネットワークの構築に必要な他のものがほぼすべて揃っています」と話している。
しかし同社には買収に対するほとんど飽くなき意欲があり、Robbins氏は以前に考えを変えたこともある。アナリストらは、Cisco社が買収を望んだ場合にその需要を満たすことができるスタートアップ企業として、Mavenir社、Airspan社、JMA Wireless社、Parallel Wireless社(いずれも米)など数社を挙げている。
Dan Meyer is Executive Editor at SDxCentral, with a focus on Telecom, 5G, radio access networks (RAN), and edge networking. Dan has been covering the telecommunications space for more than 20 years. Prior to SDxCentral, Dan was Editor-In-Chief at RCR Wireless News. You can contact Dan directly at: dmeyer@sdxcentral.com, on Twitter at: @meyer_dan, or on LinkedIn at: dmeyertime.
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