Apple Vision Proの価格は5Gによって下がるのか
Appleが最近発表した「空間コンピュータ」Apple Vision Proには3,500ドルという価格が付いており、一部の人々は動悸を速めることとなった。とはいえ、Appleが5GおよびMEC(Mobile Edge Computing)を活用すると決めた場合は価格が下がる可能性もあるという。米AT&TのJeremy Legg(ジェレミー・レッグ)CTOが語った。
6月下旬に北米で開催されたテックカンファレンス「Collision」で氏が語ったところによると、「Apple Vision Pro」は「技術面に関しては途方もないもの」だという。「複数のチップやカメラ、その他あらゆるものを1台のデバイスに搭載しています。その利点はローカルでコンピューティングができること、欠点は多くの機器をデバイス自体に詰め込んでいるため非常に高価であることです」
これについてはMECで補える可能性がある。MECを利用すれば、ローカルの処理や必要な計算をデバイスからクラウドやローカルのデータセンターにオフロードすることが可能だ。
「こうした形態が時間の経過とともに現れてくるのではないかと思います」と氏。こうした機器で必要となる計算・処理をオンデバイス・オフデバイス両方で行う形態について語った。
Appleは現在のところ同製品の接続に関する情報をほとんど公開しておらず、インターネットコンテンツを利用する際の接続方法はWi-Fiになるというのが大方の予測だ。非常に高速かつ低レイテンシの通信が必要になりそうな用途に対し、Wi-Fiが安定した接続を提供できる点が大きく活かされることになるかもしれない。
Apple製品ではiPhoneの全機種(iPhone12以降)とiPadで5Gの利用が可能となっているが、従来から展開しているノートブックPCでは現在のところセルラー接続をサポートしていない。Vision Proは「visionOS」というOSで動作する。Appleによれば、「(他の)OSの基盤を引き継いだ」「空間コンピューティングに求められる高速な処理速度に対応できるよう、ゼロから設計」したOSだという。
光か5Gか
Legg氏によると、当初Wi-Fiを頼るに当たり、強固なバックホール回線が必要になるという。AT&Tが現在力を入れている光回線と関連付けて語った。
「これを提供するのが双方向でマルチギガビットの速度を確保できる光ファイバーであり、PON(パッシブ光ネットワーク)です。非常に重要な要素の1つです――重要なのはダウンロード速度だけではありません。デバイスからのアップロード速度も重要です。多様なコラボレーションが生まれようとしているなか、こうしたデバイスを活かすためには双方向で一貫した速度を確保する必要があるのです」
ブロードバンド速度テストを提供するOpensignalが最近発表したレポートでは、AT&TのFTTHサービスは上り・下り速度で2位にランクインしている。
「(セルラー接続の選択が可能になれば)街を歩き回ったり、…(中略)…友人を訪ねたり…(中略)…できるようになります。周波数帯を扱うとなれば、別の話になってきます」とLegg氏は言う。
「光ファイバーの速度が無限だなどと言うべきではありませんが、実現可能な範囲では限りなくそれに近いものです」と氏。「周波数資源には限りがあり、任意の基地局鉄塔でいつでも最大限に活用できる帯域は限られています」
これについては、デバイスから処理能力・計算能力とコストを5Gセルラーネットワーク接続にオフロードする可能性の話ともつながる。
「モビリティ面については、デバイス自体にどの程度の計算能力を搭載して文字通り顔の上で計算ができるようにするのかという問題から少し離れ、逆にどの程度をネットワークの向こう側に持たせて計算ができるようにするのかという話になってくるように思います」と氏。「それ次第でこうしたデバイスがどの程度の周波数帯域を使用することになるのかが大きく左右されるでしょう」
電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。
SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
Twitter:@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime
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