エリクソンの5G RANチーフアーキテクト、コリン・バウデリー氏によれば、企業が屋内5Gの敷設に投資すると自社の持続可能性の水準にも影響し、経済的成功や広く社会の利益にもつながる可能性があるという。

自社ブログで氏が述べたところによると、この3つ（環境、経済、社会）はいわゆる「トリプルボトムライン」の構成要素だという。トリプルボトムラインとは、企業の意思決定がもたらす影響を経済的利益以外の面からも評価する枠組みで、「事業の成果や社会的インパクトを促進する」ことを目的としたものだ。

「この概念を知って以来、私は技術への投資に対する考え方を変えました…（中略）…導入企業に経済的利益をもたらすだけでなく、社会や環境のためにもなりうるということです」と氏。「トリプルボトムラインは5Gが事業に与える効果を評価するための重要ツール」であり、「経済的利益以外の観点からもソリューションセットを分析しやすくなる」ことから「株主や地域社会、地球全体の利益になる注目すべき事例」が生まれると述べている。

5G技術はトリプルボトムラインの全ての面を促進するのに特に適しているという。例としてBYOD（Bring your own device：私物端末の業務利用）の台頭を挙げ、BYODを実行するには複数のネットワーク事業者をカバーする必要があるとした。こうした特性に適したシステムとしてはマルチオペレータやニュートラルホストなどがある。企業が敷地内にマルチオペレータかニュートラルホストの5G接続を提供しようとする場合、屋外から屋内へ電波を取り込む技術、アクティブDAS、無調整のスモールセル、分散無線システム（DRS）のいずれかを選択するのが一般的だ。

分散無線システムの優位性

バウデリー氏によると、屋内5G導入の選択肢としては分散無線システム（アクティブDASとフェムトセルアーキテクチャのハイブリッド）が環境面でも予算の面でも最も効率的だという。シンプルにアクティブDASを導入する場合と比べ、通常はハードウェアが少なくて済む。「これによって生産需要を下げることにもなるため、炭素排出量の面でもメリットがあると評価することができます」

建物のオーナーと通信サービスプロバイダー (CSP) は何十年も前からアクティブDASなどの共用アンテナシステムを建物内に導入している。バウデリー氏によると、こうしたシステムは特定技術に依存せず、CSPがネットワーク資産を建物内に直接展開できるため、「複雑かつ柔軟性が犠牲にはなるが、現実的な費用で大きなスペースをカバーできるソリューション」となってきたという。

エリクソンの屋内製品チームがアクティブDASを利用しているあるオフィスビルを評価したところ、12,000 Wを超える電力を消費していることが分かった。同じチームが分散無線システムを評価したところ、同様の条件下で3,000 W以上という結果だったという。年間消費電力量としては75,000 kWhの削減となり、炭素排出量を53.8 t削減できる可能性もあるという。

トリプルボトムラインの観点から見ると、屋内ネットワークに対して分散無線システムのようなアプローチを取れば、自社の環境目標に対して直接の効果があり、かつTCO（総所有コスト）の削減になることで経済的側面の解決にもなる。「今日の不透明なエネルギー事情を考えれば、これは無視できません」と氏。「TCOを1 kWhあたり平均13.28セント（約17.1円）節約できれば、年間では10,079ドル（約130万円）、5年間では50,395ドル（約648万円）の節約になります。これによって不透明なエネルギー事情のなかで投資を行うリスクを下げることが可能です」

Ericsson Evaluates Sustainable Indoor 5G Deployments