欧州キャリア大手、オープンRANで持続可能性とセキュリティを追求

欧州の大手通信事業者各社はオープンRANを欧州全域に展開する取り組みを進めており、このほどオープンかつ機能分離型のアーキテクチャに関する技術要件の第2段階を発表した。
ドイツテレコム、仏Orange、伊TIM、西Telefonica、英Vodafoneはエネルギー効率要件に特に関心があると述べている。オープンRANを通じてサステナビリティの取り組みにも貢献しうるためだ。
「オープンRANネットワークはクラウド化、機能分離、ネイティブAIといった考え方の恩恵を受けるため、従来のRANよりも徐々にエネルギー効率を高めていくと予想されています」。5社は共同声明で述べている。
各社はもともとハードウェア・ソフトウェア分離型でオープンインターフェースを備えたオープンRAN機器の展開に個別または共同で取り組むという合意を2021年早期に締結している。
オープンRAN開発でセキュリティへの関心が高まる
技術要件の第2段階では標準化団体「O-RAN Alliance」で進められているリスクベースの脅威モデリングや改善分析を含め、オープンRANのセキュリティ面を詳述している。
また、「オープンRANのセキュリティアーキテクチャの柱となる4つのセキュリティ仕様の開発はオープンRANセキュリティフォーカスグループで行われていますが、(今回のリリースアップデートでは)同グループの活動についても詳述しています。脅威モデリング、セキュリティ要件、プロトコル、テストなどについてです」と述べている。
さらに、その他の要件としてサービス管理・オーケストレーション、ライフサイクル管理、RANインテリジェントコントローラ(RIC)の非リアルタイム版・準リアルタイム版、各種API、インターフェースのテストに関する要件が発表された。
前回リリースされた初版の技術要件はマルチベンダーRAN、オープンなフロントホールインターフェイス、異なる無線機やベースバンド機器、レガシーネットワーク間の相互運用性に重点を置いたものとなっていた。
推進派は豊富なメリットがあると主張
オープンRANの推進派は利点がたくさんあると主張している。CAPEXやOPEXの削減、セキュリティの向上、多様なハードウェアベンダーやソフトウェアベンダーを利用できることなどだ。
その多くはまだ大規模展開での実証がなされていないか、試験運用やラボでの再現にとどまっている。さらに言えば、オープンRANはまだグリーンフィールド事業者によるものがほとんどだ。世界でも最大手のキャリアがオープン RANの取り組みで成功できればこの状況は一気に変わる可能性がある。
多くの業界アナリストはオープンRANの理論的価値については理解しているものの、大規模ネットワークでの実現可能性については短期的な観点ではとりわけ懐疑的だ。また、オープンRANに関する主張の中には端的に論理を無視したものもある。
「ベンダーの数を増やして、しかもセキュリティは向上すると主張するのは無理があります」。デンマークの調査会社Strand ConsultのCEO、John Strand氏が電話取材に対して語った。
とはいえ、世界の多くの大手キャリアがオープンRANに大きな期待と夢を抱いている。
2021年の早期、欧州の5大キャリアは揃ってオープンRANを「未来のモバイルネットワークのための技術」だと称した。
キャリア各社がオープンRANのテストを急ぐ
Telefonica社CTOのEnrique Blanco氏は2021年後半、「すべてが順調に進めば」2025年までに全ての無線機の展開のうちオープンRANが最大70%を占めるようになると話していた。また、2020年夏の最終週にはTelefonica社が展開している市場の少なくとも半分で2025年までにオープンRANに移行すると約束している。
Vodafone社は最近、欧州初の商用オープンRANを展開すると発表し、欧州のオープンRANのリーダーとしての地位を固めた。同社は以前に英国内で4G LTEオープンRAN基地局を3か所展開し、イングランド南西部とウェールズのほぼ全域で2500カ所のオープンRAN基地局を稼働させると発表、その後は都市部にも展開していくと話していた。
米調査会社Dell’Oro Groupによると、2021年はオープンRAN用の無線機やベースバンド機器の総売上高は2倍以上に伸びたが、大半は楽天モバイルと日本の競合他社が購入したものだという。米Dish NetworkもオープンRAN機器の主な買い手になったことだろう。まだ商用5Gサービスを展開しておらず、米国人口の20%をカバーする目標の期限が迫っているキャリアだ。
通信事業者がオープンなインターフェースとRAN市場の競争激化を望んでいることは間違いないが、「技術の進歩はそのようなペースでは進んでいないかも知れません。とりわけ新興であるとか大手でない5G RANサプライヤーにはそういうところも見られます」。Dell’Oro GroupのVP、Stefan Pongratz氏が自社ブログの記事で述べている。
氏はオープンRAN製品を販売中あるいは発売予定のサプライヤーは20社以上あると数えている。少なくとも6社がMassive MIMO機能を提供しているという。また、現在あるサプライヤーの半数近くはスモールセル市場でのみ事業を展開しているとした。
Dell’Oroでは2026年までにオープンRANがRAN市場全体の15%を占めると予測している。2021年の世界のRAN市場の総売上高は400億ドルから450億ドルの間となっている。

Matt Kapko is an editor at SDxCentral, covering 5G, network operators, equipment and software vendors, SDN, IoT, chips, and the cloud. Matt has been writing about technology since before the dawn of the iPhone, and covering media well before it was social. Prior to SDxCentral, he was a senior reporter at CIO.com. Matt can be reached at mkapko@sdxcentral.com or @mattkapko.

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