データセンター投資とエネルギー消費が増大=生成AI需要で

データセンター設備投資額が上半期、生成AIの影響で大幅増となった。同分野が必要としているエネルギー量にも大きく影響している。
米調査会社デローログループによると、今年上半期の世界のデータセンター設備投資額は前年比で38%の急増となった。生成AIのユースケースを支えるアクセラレーテッドサーバーへの支出によるものだ。アクセラレーテッドサーバーとは「Nvidia Hopper GPUと(Google TPU、AWS Trainiumのような)カスタムアクセラレーター」を使用したサーバーなどを指す。こうしたチップが「ハイパースケールクラウドサービスプロバイダーの間で人気を博している」のだという。
ハイパースケーラーがデータセンター領域への大規模な新規投資を進めているという調査報告は以前にも複数発表されていた。同社の見解もそれを裏付けるものとなっている。
米シナジーリサーチグループによるレポートでは、現在ハイパースケーラーが世界中で運用している大規模データセンターの数が合計で1,000を超え、容量にして世界のデータセンターの41%を占めていることがわかった。確保している容量のうち、半分強がみずから構築したデータセンターによるもので、残りは賃借した施設によるものとなっている。
チーフアナリストのJohn Dinsdale(ジョン・ディンズデール)氏による説明では、企業によるコロケーション施設への機器設置も増えており、オンプレミスデータセンターの容量が全体として縮小しているという。AIサービスの活用が進むなか、このパターンは今後も増えていくと予想される。
「こうした傾向は、生成AIと関連サービスの台頭を受けて、今後数年間でさらに進んでいくでしょう。AIを運用するにあたり、ハイパースケーラーよりも自社で運用する方が有利だという企業はほとんどないためです」
調査会社ISGが今年発表したレポートによると、今年末までに、一般的な大手企業が使用するAI対応アプリケーションの数が2倍近くに増加する見込みだという。2023年末に平均250個だったものが、2024年末には488個になるという予測だ。
デローログループの予測では、通年のデータセンター設備投資額を前年比35%増の4,000億ドルとしている。Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)などの大手ハイパースケーラーがリードするとした。
Microsoftの直近の決算説明会では、Amy Hood(エイミー・フッド)CFO(最高財務責任者)が次のように語った。「当社では――このことについては、数四半期にわたってお伝えしてきましたが――AI需要に対して容量が十分には足りていません。(中略)AI向けに提供できる容量が追い付いていないため、サードパーティと契約して支援を頂いています。Azureプラットフォームを拡張して需要に応えるのを喜んで支援していただけるパートナーです。また、もっとバランスの取れた状態に戻すため、先ほどお話ししたように、かなりの投資をして構築を進めています」
一方で、どのように資金を活用するかについては、ハイパースケーラー各社ともあくまで意識的だ。
Amazonの第2四半期決算説明会では、Andy Jassy(アンディ・ジャシー)CEOが説明に立った。AIによってデータセンターのトラフィックが増大するなか、十分な容量を確保することが重要だと認めた一方で、「容量を増やしすぎてしまうと、経済性が悲惨なことになります。望ましい営業利益は出ないでしょう」と語った。
「今の状況としては、AIやインフラにすでに多額の投資をしていますが、今以上に容量を増やしたいという状況です」と氏。「大きな需要が寄せられています。当社としても、非常に大きなビジネスになると考えています」
データセンターのエネルギー消費が拡大
AI需要を背景としたこうした急拡大については、懸念がないというわけではない。
MTNコンサルティングのレポートでは、セグメントの成長がエネルギー需要も押し上げていると指摘している。WebスケールITによるエネルギー消費量は2019年から倍増しており、ここ2年は年率15%で増大しているとした。
「さらに重要なのが、コロナ禍以降、このセクターはむしろいっそうエネルギー集約的になっているということです」。チーフアナリストのMatt Walker(マット・ウォーカー)氏が書いている。「2021年には、売上100万ドルあたりのエネルギー消費量は59MWh(メガワット時)でした。これが2022年には65 MWh、2023年には70 MWhに増えています。これは注目すべきことです。Webスケール事業者は規模を活かして効率化を図れるはずなのに、データセンターの電力消費はむしろ逆の方向に向かっているのですから」
別の見方をしている人もいる。
米デロイトコンサルティングのマネージングディレクター、John Mennel(ジョン・メネル)氏が最近SDxCentralに寄稿した記事によると、ハイパースケーラーのクラウドインフラによる排出量は、企業所有のデータセンターと比較して60%少なくなっているという。「これはなぜでしょうか。ハイパースケーラー各社は、独自にサステナビリティへの大規模な投資をしてきました。消費するエネルギーのうち、データ処理に直接使われている割合が大きいのです」
MTNコンサルティングのWalker氏は、懸念はあるものの、そのためにデータセンターへの投資が抑制される可能性は低いとも述べている。
「現在、こうした新しいAIモデルの訓練や進化が急がれています」と氏。「早く成功したプレイヤーが、今後何年にもわたって優位を保てそうだという感じがあるのです。このため、土地をめぐって奪い合いが始まっています。スキルの高い開発者や業務に必要なツール、エネルギー容量や土地を奪い合っているのです」

電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime

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