米調査会社ガートナーによると、ジェンダーギャップと呼ばれる従業員のジェンダーバランスの不平等について、IT企業は社会的な観点や倫理面からだけでなくビジネス上の必須事項として取り組むべきだという。

ガートナーのレポートによると、全体として多様性に富んだIT企業はより革新的な製品や戦略を次々に生み出し、ビジネスリーダーが重視する指標での生産性が高く、利益が増えていく傾向にあるという。自社の創造性を高め、売上を増やそうと努力しているのであれば（ほとんどの企業でTo Doリストに入れられている項目だ）、「私なら目標達成につながる可能性のあるあらゆるツールを利用するでしょう。ダイバーシティはそうしたツールの1つです」。ガートナーのアナリスト、Christie Struckman氏がSDxCentralの取材に対して語った。

多様性を受け入れ、サポートすることは、現代の企業が人材を惹きつけ、リテンションするのに有効な手段となっている。「従業員たちは、自分たちが今日の社会的な議論に対して思慮深い組織で働いているという確信がほしいのです」。Struckman氏は言う。

テック企業で女性社員が直面する課題

IT分野の女性はさまざまな障害を乗り越える日々を送っているが、最初の障害は大学の時点で始まる。「この職種に興味を持った当初から、私たちは非常に少数派でした」。Struckman氏はIT分野を志す大学生のジェンダーアンバランスに触れた。

女性を代表する人数が少ない状況はその後も変わらず、職場での「居心地の悪い力学」につながる。「昇進など、何かが起きる時も起きない時も、『それは女性だからなのか、それとも技術的知識によるものなのか』ということが常に気になるのです」。Struckman氏は説明する。この2つを別々のものとして、自信を持って昇給や昇進を追求するのは難しい。

IT業界の女性が常に直面しているもう1つの問題は賃金格差だ。「女性である私たちは、給与交渉をしない傾向にあります」とStruckman氏。男女が同じ初任給を提示された場合にも、男性は給与交渉を行い女性は行わないとなると、女性はスタートから不利になるため生涯に渡る影響が残ることになる。

「私たちはスタートから互角ではなく、常に挽回モードのように感じられることになります」と氏。また、IT業界で働く女性は日常的に女性従業員を主流から外す態度に出会い、「徐々に、繰り返し」自分たちは評価されていないと悟らされるという。

こうした態度の1つに性格特性の不平等な評価があると言われている。男女に同じ性格特性がある場合に、個人の下す判定が男女で異なることを言う。

例えば、会議中に声を荒げ、断言的に決断を下す男性は物事を成し遂げることができる強いリーダーだと思われるかもしれない。一方、女性であれば軽蔑的な目で見られる可能性が高い、とStruckman氏は説明する。「強いリーダーシップと行き過ぎの境界線はどこにあるのでしょうか」

多様なジェンダーの人材確保とリテンション

ガートナー社は、多様な人材をより多く引きつけ、維持するための推奨事項として業界が変更を検討するべき部分をいくつか挙げている。まずは採用プロセスにおける職務内容や学歴要件だ。

Struckman氏によると、職務内容をマーケティングツールとして活用し、企業のミッションや倫理観をアピールすることで可能な限り最高の候補者を呼び込むべきだという。そうした候補者は必ずしも学位要件で絞る必要はない。「当社では、（IT分野で）成功するために必要な学歴要件を本当に見直す必要があると考えています」と氏。ITプロフェッショナルが講師を務めるコミュニティカレッジのプログラムを卒業した人材の多さに触れた。

「コンピュータサイエンスの理学士号やらを持っている必要があるなどと言えば、人材プールを人為的に狭めることになります。（4年制大学の学位が）必要だと言う神話を打ち壊すか、最低限どういう時に要求すべきなのかを慎重に判断する必要があるかもしれません」

ガートナー社は多様な候補者を対象としたインターンシップ・プログラムの導入も勧めている。企業とインターンの双方が「お互いにお試しができる」ため、理想的な状況だとStruckman氏は説明する。企業側はインターン生が長期的に会社に適していそうかを評価することができる一方で、「候補者側にも良い組織かどうか、リスペクトを持って扱われ、サポートを得られるかを見られます」