世界のスタートアップ資金調達、5年ぶりの低水準=AIは活況
世界最大級のベンチャー企業データベースを提供する米Crunchbase(クランチベース)の最新レポートによれば、2023年、世界のベンチャー企業による資金調達額の合計は過去5年間で最低の2,850億ドルとなった。
前年の4,620億ドルからは38%減と大幅に減少、VC投資家が慎重な姿勢を崩していないことがうかがえる。
中でも第4四半期の低調さが目立った。レポートによれば、同四半期の調達額合計は前期比24%減、前年比25%減となる580億ドルで、取引数も前期比15%減、前年比33%減となった。
調達額の減少は全ラウンドに及んでいる。
・ エンジェル/シード期(シード/プレシード/エンジェルラウンド)の調達額合計は301億ドルで、前年の439億ドルから約31%減少。シリーズAでの調達が厳しさを増すなか、シードラウンドは最も底堅いステージとなった。新しい企業への投資も行われている。
・ アーリーステージ(シリーズA/Bラウンド)の調達額合計は1,030億ドルで、前年比で40%を超える減少となった。減少幅は各ステージの中でも最大。
・ レイターステージ(シリーズC/D/E、またはそれ以降)も前年比37%の減少。調達額合計は1,316億ドルとなった。調達額の水準はさまざまで、AI、半導体、電池、クリーンエネルギー分野の企業には多額の投資が向かった。
・ グロースステージ(以前にVCから資金調達した企業等のラウンド)の調達も低迷。投資額は2022年の294億ドルから207億ドルに減少した。
スタートアップ投資の最大市場で、世界のVC資金の約半分が集まる米国でも世界的な傾向を反映し、投資が顕著に減少した。2023年、米国を拠点とするスタートアップへの投資は37%減の1,380億ドルとなった。
AIへの投資が活況、Web3は急落
全体の低迷をよそに、AIなどの一部のセクターは逆の傾向を見せている。
レポートによると、2023年、AIスタートアップへの世界の資金提供額は前年比9%増の500億ドル近くにまで急増した。最大の投資先となったのは、OpenAI、Anthropic、Inflection AIなどの大手基盤モデル企業で、合計180億ドルを調達している。
そのほか、半導体や電池技術などの分野でも調達額は増加している。
一方、Web3については2021年から2022年にかけて活況を呈したのち、2023年の調達総額は前年の280億ドルから73%減となる76億ドルに減少した。
前年比で50%を超える減少となった主要セクターとしては、他に金融サービス(△50%強)、eコマース・ショッピング(△60%)、メディア・エンターテインメント(△64%)などがある。
2024年の見通し―事業閉鎖の増加
VC市場には2021年の資金調達ブームの影響が今も残っており、2023年のスタートアップは厳しい資金調達環境に直面した。投資家は保守的になり、どのステージでも要求水準が上がっていたとCrunchbaseは指摘する。
その結果、企業は予算を引き締め、収益性の向上を重視、2023年のテック業界ではレイオフが大幅に増加した。
近年、資金調達企業の数は増え、投資市場は逼迫している。昨年レイオフが増加したことから、今年は事業の閉鎖が増加するとCrunchbaseは予測している。
また、投資を受けようとする創業者にとっては2024年も厳しい年になるとした。
Global startup funding hits a 5-year low, AI boom defies the trend
SDxCentralの編集者。
サイバーセキュリティ、量子コンピューティング、ネットワーキング、およびクラウドネイティブ技術を担当している。
バイリンガルのコミュニケーション専門家兼ジャーナリストで、光情報科学技術の工学学士号と応用コミュニケーションの理学修士号を取得している。
10年近くにわたり、紙媒体やオンライン媒体での取材、調査、編成、編集に携わる。
連絡先:nliu@sdxcentral.com
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