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文:Drew Robb

ハイパースケールデータセンター市場をめぐるGoogle、Azure、AWSの戦い

ハイパースケールデータセンター市場をめぐるGoogle、Azure、AWSの戦い

ハイパースケーラーであるGoogle、Azure、AWSは、より多くの地域をカバーし、より高い可用性でより多くの地域に、より幅広い低遅延サービスを提供するために、拡大競争を繰り広げている。その結果、新しいデータセンターを建設し、さらに多くのデータセンターをリースし、新しい地域に進出している。

米調査会社Synergy Research Groupによると、上位3社のクラウドプロバイダーが世界市場の65% を占めている。2023年第1四半期末の時点では、AWSが32%、Microsoft Azureが23%、Google Cloud Platform(GCP)が10%ということになる。続く20社のプロバイダーは、合計で26%のパイを切り取ったに過ぎない。その中で最も成長率が高いのは、オラクル、米Snowflake、米MongoDB、中Huawei、および中国の通信会社3社だった。

過去5年間で、クラウド・インフラ・サービスの四半期収益は、Amazonを筆頭に約150億ドルから630億ドルに急増した。ハイパースケーラーは10年近くにわたって32%~34%の市場シェアを着実に維持してきた。この間、四半期ごとに30%~40%、時には80%もの増収を記録してきた。しかし、AWSの栄光の時代は終わったかもしれない。

Amazonの成長率はここ数四半期で鈍化しており、20%~25%程度に落ち着いているようだ。GCPとAzureも同様の傾向にあるようだ。

米民間団体Uptime InstituteのアナリストであるOwen Rogers(オーウェン・ロジャーズ)氏は、「エネルギーコストの高騰は、インフレとともに、企業の出費をより慎重にしています」と述べた。「しかし、クラウド衰退の報道はかなり誇張されています。企業はクラウドのコストを削減していますが、クラウドの使用量は削減していません」

 

10億ドルの戦闘賞金

Synergy Research社は、2022年のクラウドのインフラ収益を2,370億ドル、さらにクラウドサービスを加えると3070億ドルと集計した。しかし、ハイパースケーラーがすべてを思い通りに動かしているわけではない。パブリッククラウドでは、Microsoft、AWS、Salesforce、Googleが最大手であるが、他にも有力な企業は多い。Adobe、Alibaba、Cisco、Dell、Digital Realty、Huawei、IBM、Inspur、オラクル、SAP、VMwareなどがパブリッククラウドのニッチ市場を切り開いている。

Synergy社は、パブリッククラウド市場の収益は2026年までに倍増すると予測している。ハイパースケーラーやそのクラウド競合企業の多くが、世界中で非常に多くのデータセンターを建設し、コロケーションサービスをリースしているのも不思議ではない。収益を倍増させるには、ハイパースケールのデータセンターの数を少なくとも50%増やす必要がある。その場合でも、新興市場におけるパブリッククラウドのプレゼンス拡大についてはコロケーション・プロバイダーに大きく依存することになるだろう。

例えば、コロケーション・プロバイダーのエクイニクス(Equinix)は、70以上の主要都市圏と32カ国にまたがり、世界中に約250のデータセンターのネットワークを所有・運営している。今後、さらに多くの施設が稼働する予定だ。これらの施設は、フォーチュン500社の50%以上を含む1万社を超える企業にデジタルインフラを提供している。Digital Reality、CyrusOne、Stack Infrastructure、QTS Realty Trustといった同業大手も、同様の拡張プログラムに取り組んでいる。

そして、自社のデータセンターを構築することに躊躇しない、オラクルやFacebook(Meta)のようなテクノロジーベンダーもある。ハイパースケーラーの台頭を受けて、オラクルはクラウドのカバレッジ拡大を加速し、現在ではMicrosoftやAWSと同程度のクラウドリージョン数を誇っている。ハイパースケーラーは、オラクルよりもはるかに多くの不動産をカバーしており、はるかに多くの顧客とクラウドフットプリント合計を誇っている。ただし、オラクルはローエンドを追求しているわけではない。ハイエンドビジネスの支配を狙っているのだ。同社は、要求の厳しい金融、人工知能(AI)等の用途に選ばれるプロバイダーとなり、大規模で高性能のエンタープライズ分野で成功することを目指している。

「オラクルは、米国中西部などの戦略的拠点に急速なペースでクラウドリージョンを設立し続けることで、顧客が自社の条件に合わせてクラウドを活用するための可能な限り多くのオプションを提供するという意志を示しています」。調査会社IDC(International Data Corporation)のアナリスト、Chris Kanaracus(クリス・カナラカス)氏は述べた。

 

領土をめぐる戦い – 近接性が重要

地理的には、クラウド市場は世界のすべての地域で力強い成長を続けている。北米、アジア/太平洋地域、ヨーロッパはいずれも年間20%以上の成長を続けている。もちろん米国は、2022年のクラウドサービス売上全体の45%、ハイパースケールデータセンターの総容量の53%を占め、最大の市場となっている。

ハイパースケーラーとその競合他社は、GDPが非常に高く、通信インフラが整っている国々を積極的にターゲットにしている。そこに利益が見込めるからだ。しかし、多くの空白もある。ハイパースケーラーはいずれも、世界17カ国で事業を展開しているに過ぎないが、これらのクラウドリージョンは世界のGDPの56%を占める。少なくとも1社のハイパースケーラーが存在する地域を集計すると40カ国となり、世界のGDPの87%を占めることになる。

Synergy社によると、ハイパースケーラーは現在100以上の異なる地域で事業を展開しており、その数は2023年末までに130に拡大されると予測している。

「プロバイダーがさまざまなリージョンを提供するのは、第一にレイテンシーのためです」とRogers氏は言う。「一般に、ネットワークインフラストラクチャがどれほど優れていても、エンドユーザーがクラウドアプリケーションから離れるほど、遅延が大きくなり、エンドユーザーエクスペリエンスは低下します(特に、インタラクティブゲームなど、遅延に敏感なアプリケーションの場合)」

より多くのリージョンを持つ他の目的は、コンプライアンス、規制圧力への対応、ガバナンスである。ドイツやカリフォルニア州、あるいはニュージーランドが国境からのデータの流出を制限するデータプライバシー法を制定するならば、最もシンプルな解決策は、レイテンシーとプライバシーのニーズに対応できるように、その地域専用のリージョンを設けることだ。

 

持続可能性が戦いに加わる

持続可能性というもう1つの要因が、今後数年の間に各社の計画をひっくり返すことになるかもしれない。エクイニクスのプレスリリースのほとんどが、気候中立と二酸化炭素(CO2)排出量ネットゼロの達成について触れている。規制当局、企業経営者、データセンターの顧客、地域の環境保護団体から、データセンターの消費電力を大幅に削減し、環境に対する責任レベルを高めるよう求める圧力が高まっている。最も進歩した企業は、地歩を固めることができるだろう。そのため、ハイパースケーラー各社は、新しいデータセンターの設計と運用において、最善かつ最も環境に優しい取り組みを進めている。

IDC社のアナリストのWilliam Lee(ウィリアム・リー)氏は、「持続可能性は、企業だけでなく、サプライチェーン全体にも影響を及ぼす重要な問題になりつつあります」と述べた。「データセンター業界は、規制当局や投資家といったステークホルダーから、より持続可能な運用にしていくよう、圧力を受けるようになっています」

Google, Azure and AWS battle for the hyperscale data center market

Drew Robb
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